イチオシ!スポーツ Book Review一覧

こどもたちのライフハザード


 “いま、こどもたちにいったい何が起きているのか?”

 運動能力の低下、生活リズムの乱れ、体温異常…現代を生きる子供たちには、様々な問題が懸念されている。果たして、それはなぜだろうか、昔の子供と現代の子どもの違いとは一体何なのだろうか。

 昔は時間があれば陽が沈むまで外で走り回って、時には怒られたりした。「子供にとって遊びは最大の仕事」と言われる程、遊びは最大の課題であって、遊ぶことで学んでいる。今では外で走り回って遊んでばかりいると怒られる。外に限らず、遊んでいるだけで不真面目だと思われる。公園で走り回る子どもの姿もあまり見かけなくなった。昔は日付が変わる前に布団に入り、睡眠をとることが当たり前だった。「寝る子は育つ」そう言われていた。
 ところが今では終電に近い時間に、小さな子供が虚ろな目で親と電車に乗っている光景が見られるようになった。睡眠不足によって、感情をコントロールしにくくなり、様々な活動に対する意欲が低下、喜びの表現が鈍くなり、記憶にも障害があらわれてくる。脳神経系の発達不足で子どもの心は健全に形成されないのだ。睡眠不足に関しては、子どもだけではなく老人までが睡眠不足であるといわれている。「キレやすい人格」は睡眠不足から起こっていると言える。大人たちの生活変化が子どもたちの発達そのものに影響している。普通が普通でなくなり、異常が普通になりつつあるのだ。

 この本は、著者の子供が重度のアトピーになってしまったことで見えてきた「子どもの異常」について、身体・生活・食・心・環境・神経等から記されている。保育施設や専門家の話もあり、実際の子どもに起こっている異常が、ページをめくるたびにひしひしと伝わってくる。時代はどんどん変わり、生活環境も変わる。大人たちの生活が変われば、それに併せて子どもたちの生活も変わる。生活が変われば子どもが変わる。運動神経や性格、脳や神経単位で変わってしまうのだ。

 生活破壊、ライフハザード。今、子どもたちに一体何が起きているのか?今、大人に、社会にできることはなんだろうか?普段、子どもと関わることがある人はもちろん、社会の多くの方にぜひ読んでほしい一冊である。