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倫敦から来た近代スポーツの伝道師―お雇い外国人F.W.ストレンジの活躍


 日本のみならず世界中の人々がその魅力に引き込まれ、幾年ものあいだ脈々と存在し続ける文化、それがスポーツである。だがしかし、そんなスポーツの中で日本が発祥だと言い切れる競技は少ない。
そう、ほとんどのスポーツが海外からやってきた競技である
 それでは、スポーツの文化や競技は、いつ海外から日本にやってきたのか。それは混乱期真っ只中ともいえる明治維新以後の時代にやってきた、と言われている。しかも、その文化を伝えた人は、スポーツの見識者でもなければ、ある競技のスペシャリストでもない。とある一人の英語教師、当時の言葉でいうところのお雇い外国人だったのである。
 ”F.W,ストレンジ” 
とうてい日本の高等教育までの教科書には出てこない名前であろう。だがしかし、子供のころに一度は体験したに違いない運動会や、ほとんどの方々が行っていたであろう部活動という概念は、この男によってもたらされたのである。さらに彼は、陸上競技や球技、ボートといった競技においても母国にいた頃からの鍛錬と知識をもとに学生を中心に広く世に伝える役割も担った。
 本書では、彼の詳細が書かれている文献探しから始まり、少しずつ歴史が紐解かれていく様子やストレンジの生い立ちを書いていく中で、どうして彼が日本にやってくることになったのか、どうして彼がスポーツを普及することになったのかなどを、著者よりも早くからストレンジを研究していた方や、ストレンジの直系の弟子にあたる方の証言をもとに書かれている。
 スポーツの歴史、学校教育におけるスポーツの意義、スポーツマンとしての精神を知るにはとても良い本ではないだろうか。
 2012年のロンドンオリンピックで私たち日本人は大いに盛り上がった。こうしてスポーツの感動と喜びを分かち合えるのも、ロンドンが「倫敦」と書かれた時代、はるばる日本にやってきたストレンジのおかげであることを我々は覚えておかなければならない。