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日の丸女子バレー ニッポンはなぜ強いのか


 東北大震災のあの日、東洋の魔女と呼ばれた河西と著者は都内のホテルで昼食中だった。地震の直前にデザートとコーヒーを運び終えた河西が揺れの収まってからとった行動とは。『こういう時はジタバタしてもしょうがない』と、ケーキを食べ始めたという。
 それから50年近くの時を超え、オリンピックで28年ぶりにメダルをもたらしたチームの司令塔竹下。何と彼女はセッターにとって命の指を骨折しながらも『指がどうなっていようと私には関係ありません。コートに立ちます』と断言していた。どちらも、普通では考えられないことをサラリと言っている。著者は、日本代表として戦った歴代のバレー選手は同じ匂いがすると表現している。

 すべてのことに歴史がある。日の丸ニッポンも例外ではない。魔女の威名を持った日本が、世界で勝てない時代を経験する。28年メダルから遠のいたのにも関わらず、メダルへの執念が消えなかったのはなぜか。そこには監督と選手たちのバレーに人生をかけた者たちの生き様がある。
 祖先の誰か一人が欠けると今の自分は誕生していないように、東洋の魔女から始まり、歴代日の丸ニッポンチームの苦しい時代を経て、勝ち得た銅メダルだということを感じて欲しい。日本バレーの歴史書としてのみならず、指導論、リーダーの資質、チームといった視点も随所に盛り込まれている。

 この50年時代も変わった。ルールも変わった。戦術・戦略も変わった。指導も変わった。選手も変わった。その中で変わらないものがあるとすれば、きっとそれが強さの秘訣に違いない。