イチオシ!スポーツ Book Review一覧

4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ涙の球団史


 「ベイスターズ」。プロ野球12球団の中で最弱な球団は?と質問を受けたらほぼ全員がこの同じ回答をするだろう。それはこの球団のファンを以てしても回答は一緒ではなかろうか。

 1950年にプロ野球、セントラルリーグが発足して2012年までの60余年の間に大洋ホエールズ・横浜大洋ホエールズ・横浜ベイスターズ・横浜DeNAベイスターズは4522敗を喫した。プロ野球12球団の中で群を抜いた不名誉な数字である。
 某人気テレビドラマの主人公は「現象には必ず理由がある」という。まさにその言葉の通りだ。本書を通じて横浜の本質的な体質、変遷が今日の球団経営、成績に影響を及ぼしていることがわかる。
 しかしすべてネガティブな話ではない。球団の歴史ともにできた良い伝統が選手の体に受け継がれていることも読み取れる。ファンのロイヤルティの高さも感じられる。
 また本書は球団経営に参考になるだけではない。強い組織になるためにはどうあるべきか。これから先、日本スポーツ発展に欠かせないと思われるヒントも多く、あらゆるスポーツクラブチームにとって良くも悪くも勉強になるだろう。会社経営にも通ずるところがあるといっても過言ではない。

 球団から理不尽な冷遇をうけたOB選手を始め、総勢34人の関係者のインタビューにも、横浜ファンである著者の愛憎が入り混じる文章にも、日本一になった98年以来の栄光への期待が込められている。
 「来季のペナントレースこそ。」読み終えると最弱球団を応援している自分がいる。