海外スポーツコラム一覧

2015-2-9

『守備的オープニングについての考察(中)』

◆包括的トランジションの重要性について

 トランジションという言葉には、『切り替え』という意味が含まれている。現代ボールスポーツにおいてトランジションの重要性は計り知れない。カウンターからの得失点、素早いリスタートからの試合展開、セットプレーにおける守備の対応、相手の攻撃にあわせた守備の対応など、包括的な角度からの攻守の切り替え『トランジション』はボールゲームを制覇するには欠かせない要素となる。

 スペインのフットサルを例にとって見よう。プロ組織化された1部では、ここ数年の間トランジションからの得失点が、総合得点の約35%と大きな比重を占めている。実際に私が勤めたスペイン1部のサンティアゴ・フットサルでも、統計分析によれば同じような結論に至っている。トランジションによる得点、素早いリスタート、攻守の切り替え、カウンター局面からの失点を無視しては、得失点マネージメントは不可能となる。また同プロリーグの分析から、全てのトランジションがそれぞれ異なるパターンから派生していることも明らかになった。

『トランジションがゲームの鍵。しかしその起点となるオープニングの形は、2度と同じようには繰り返されない』

<オープニングとは攻撃側には限らない。ボールロス直後に守備側が決断するアクションやその意図を、『守備的オープニング』と定義できる>

◆守備的オープニングレベルへのアプローチ

 繰り返し強調するが、得失点に最も大きな影響を与えるのが包括的トランジション局面である。そしてトランジションの成功の鍵を握るのが、オープニングレベル(“ファーストアクション”または“その意図”)における個人戦術レベルでの対応となる。個人戦術を向上することは、オープニングという不確定要素の強い状況の中で、より優れた対応を可能とする。そのため攻守におけるオープニング局面を研究、個人戦術からのアプローチは欠かせない。そして各課題をトレーニングに細分化して還元することは、指導者にとっても大切な任務である。

overseassports79_11

 ここでコラム前半の一部分を復習してみたい。コラム78号では4つの守備的オープニングレベルについて紹介した。守備的オープングは全ての守備局面に存在しており、その性質によって、①反撃、②阻止、③対応、④緊急、の4つのオープニングレベル分類が可能となる。

◆4つの守備的オープニングレベル

overseassports79_12

 守備のオープニングが4種類に分類できることから、それに適応した戦術トレーニングの性質も分別することが必要となる。ボールスポーツの指導者は、さまざまな守備的オープニングの状況を想定しながら、トレーニングの中でシミュレーションを再現することも任務だ。試合で起こりえる複雑な守備状況に対して、再現するシュミレーションを媒体として、選手達は守備オープニングの状況への対応を習得する。また守備的オープニングに豊富な変化を与えることで、同じインテグラルトレーニングメニューでも、守備に負荷をかけることが可能となる。

overseassports79_02<各年代でも守備的オープニングに働きかけるトレーニングを導入したい>

overseassports79_13

 守備的オープニングの4レベルの性質を考えながら、その戦術的リソースなどの分類整理をしてみよう。留意していただきたいが、これは未完成の表であり、まずは参考レベルで参照していただきたい。

◆オープニングの種類と戦術的リソースなどの分類例

overseassports79_14

 以上のように守備局面やレベルに応じた、オープニング性質や戦術的リソースを整理することができる。このようにコンセプトを整理することで、チームや対戦相手の特徴に応じて、ゲームの鍵となる『オープニング局面』に対してより論理的なアプローチを管理することができる。指導者はこのような情報管理をベースとして、計画的なトレーニングを構成する。

 <低学年にはアナリティックトレーニングと知覚認識によるオープニング強化などのほどよいバランスが求められる>

 また戦術的アプローチと同時に、オープニング能力の向上に欠かせないエレメントを以下にリストアップする。トレーニングにおいて守備的オープニングにフォーカスを当てる場合、以下のような戦略的要素を含むエレメントを助長することも求められる。トレーニングメニューの作成に限らず、指導者から積極的に以下のポイントにもアプローチして、選手の成長を促すようにしたい。

◆守備的オープニングに欠かせないエレメント

overseassports79_15