次世代に伝えるスポーツ物語一覧

2013-8-21

バスケットボール・大神雄子

2013年8月21日

 「これからも海外に飛び出す選手が増えていくように願いも込めて、頭からダイブしてきます」
 2013年6月、バスケットボール女子日本代表のエース、大神雄子(30)は昨季までプレーしたWリーグのJX-ENEOSを退団し、海外のリーグに挑戦する意向を短文投稿サイトのツイッターに明らかにした。
 1982年10月生まれ、山形市出身。7歳のときから1年間暮らした米国で、男子プロリーグNBAのスーパースターだったマジック・ジョンソンを知り、憧れて競技を始めた。本場のプレーに魅了された少女は、めきめきと力をつけていく。桜花学園高(愛知)では1年からレギュラーとして活躍。2年のときにはインターハイ、国体、ウィンターカップの3冠を達成した。2001年にジャパンエナジーに入社。21歳で2004年アテネ五輪に出場し、2008年には世界最高峰の米プロリーグWNBAのマーキュリーでプレー。萩原美樹子に続く2人目の日本人WNBAプレイヤーとなった。
 身長170センチ。この競技では小柄だが、スピードあふれる突破と正確なシュートが持ち味のガードとして日本が10位だった2010年の世界選手権では外国の選手を抑えてトップの1試合平均19・1得点をマーク。昨年は予選であと1勝すれば、2大会ぶりとなる五輪、ロンドン大会出場がかなうところまで行きながら、敗退した。そして、この五輪最終予選での敗退が、大神の気持ちを大きく揺さぶった。「サッカーのなでしこジャパンみたいに、どんどん海外に飛び出して行かないと」―。
 大好きなバスケットボールが日本でもっともっと認知されるためには、日本代表が強くならなければならない。来年には世界選手権が控え、3年後にはリオデジャネイロ五輪が待つ。立ち止まっているわけにはいかなかった。五輪最終予選を控えた昨年3月には、疲労骨折した右足甲をボルトで固定する手術を受けた。長年、酷使してきた体は満身創痍の状態だろう。それでも3年後の五輪を目指し、決断するのはいまだった。日本の実力を上げるためには、海外にいくしかない。自らが率先して代表チームに新たな流れを持ち込む以外にない、と―。
海外リーグへの挑戦を明らかにした6月。仙台と東京でモザンビークとの親善試合が行われた。3連勝を飾った日本女子代表。その主将を務めた大神は、会場でリオデジャネイロ五輪出場を誓った。バスケットを始めて以来、持ち続ける情熱はいまだ衰えてはいない。=敬称略(昌)