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2016-5-12

メンタルマネージメントについて

メンタルマネージメントについて

 
 ボールスポーツとは『決断のスポーツ』とも表現される。この決断だが、個人戦術の根底にある個人の知覚認知、戦術決断、技術実行をベースに、集団のパフォーマンスは大きく影響を受ける。またこのような決断のプロセスには、①メンタルの変動状態、②メンタルによる解決意思、が大きく関係している。この2つの代表例が、精神状態、決意の強さ、自信と確信、落ち着き、リスクを負う精神、自立心、ストレスへの耐久力などである。当然ながらメンタルコンディションは、ゲームにおけるタクティカル・アクションにも大きく影響を与えている。フィジカルだけではなく、メンタルを無視したタクティカル・アクションサイクルは成立しない。そのため指導者による選手に対するメンタルへのアプローチは、チームマネージメントにおいて非常に大切な問題となる。
 
 

総合的なアプローチポイント

 
 ボールスポーツとは『決断のスポーツ』とも表現される。この決断だが、個人戦術の根底にある個人の知覚認知、戦術決断、技術実行をベースに、集団のパフォーマンスは大きく影響を受ける。またこのような決断のプロセスには、①メンタルの変動状態、②メンタルによる解決意思、が大きく関係している。この2つの代表例が、精神状態、決意の強さ、自信と確信、落ち着き、リスクを負う精神、自立心、ストレスへの耐久力などである。当然ながらメンタルコンディションは、ゲームにおけるタクティカル・アクションにも大きく影響を与えている。フィジカルだけではなく、メンタルを無視したタクティカル・アクションサイクルは成立しない。そのため指導者による選手に対するメンタルへのアプローチは、チームマネージメントにおいて非常に大切な問題となる。
 

①選手のメンタルストレスを軽減するアプローチを行なう
②選手が不安に感じるアプローチは極力避けるようにする
③精神的にポジティブな影響を与えるアプローチを考える

 
・ペナルティー、ファール、コーナーキックなどの責任分担を事前指定しておく。試合前にこのような責任分担を行なうことで、精神的な覚悟を与え、試合中に突然このようなメッセージを伝えることによるストレスを和らげることができる。また指定された選手以外にとっても、責任の軽減となり無駄なストレスを未然に防ぐことができる。
 


 
・特定のリスクを負わせる選手を指定しておく。例えばロングシュート、1x1の仕掛け、その他のリスクを負わせる選手の指定をしておく。同時にチームによるリスクの管理方法についても事前に決定しておく。チーム全体でこのような戦術的リスクをイメージしたり、対処方法を想定しておくことで、ゲーム中のストレスを防ぐことができる。
 
・選手の長所を引き出すようにアプローチする。選手の長所を上手に引き出せば、同選手の短所によるリスクポイントを軽減することができる。例えば1x1の得意な選手については、フィニシュに有効となるゾーンで1x1を実行するように勇気づける。そのようなアプローチにより、ボールロスやカウンターなどのリスク防止にも繋がる。
 
 
 以上にチームマネージメントにおいて効果的となるアプローチ例を示した。それでは以下に、マネージメントにおいて推薦できないアプローチについても考えたい。
 
・選手のレベルにも左右されるが、試合開始からいきなり最高のパフォーマンスを求めることは難しい。指導者の口癖で『試合開始から120%で戦え』などと指示をするが、これは決して簡単な要求ではない。レベルの高くない選手、また熟成していない選手にとって、試合開始からマックスレベルを要求されることは、精神的な不安を引き起こす可能性もある。
 
・確かに選手に特定のゾーン、ポジション、役割をある程度具体的に与えることは当然のことである。しかし選手がトレーニングを通して慣れ親しんだものを要求しているか、しっかりと吟味する必要がある。アプローチにおいて選手に慣れないポジションや役割を与えると、知識や経験によっては大きな不安や混乱を生むことが考えられる。
 
・アプローチする情報量を、タイミングやグループのレベルより制限する。選手が理解できるように、情報発信のスピードやポイントの決定も要注意だ。選手のレベルによっては、迷いが生じ、アクションへの決断を遅延することになる。エラーが連続すれば、選手はメンタル的にも大きなストレスを抱えることになる。
 
・ライバルに対する警戒メッセージを発信する場合は、その情報量についても考えたい。ライバルの警戒ばかりしていると、選手の自信を落とすケースもある。指導者は選手を信頼しながらも、ポイントによっては注意を引き締めるようアプローチバランス調整をする。ライバルに対する過度のリスペクト、警戒などは不必要かも知れない。
 
 

日常トレーニングからのシンクロについて

 
 ここまでに選手へのアプローチポイントを述べたが、その全ては日常のトレーニングから成熟する必要がある。指導者と選手のコミュニケーション習慣として、普段のトレーニングから繰り返しシンクロの練習を行なうことだ。高いインテンシティーのトレーニングを通して、絶え間なくコミュニケーションをとる習慣から、指導者と選手のシンクロは向上される。これはエリートレベルだけに限った話しではない。育成年代、低学年、女子カテゴリーなどでも、日常のトレーニングから選手と指導者がシンクロすることはメンタルマネージメントの大きな基盤を作る。
 
 また『スポーツ言語化の浸透性』というシンクロについても言及しておきたい。トレーニング習慣の中から、指導者はチーム言語を用いて、様々なコンセプトを伝達する習慣を作り出すことができる。例えば『DFボックス』『フィンタ』『コルタ』『エックス』など、日常トレーニングにおけるスポーツ言語化とその浸透を通して、選手達はメッセージを瞬時に理解する。このような戦術的なシンクロには、日頃のトレーニングからの情報の共有が必要不可欠となる。
 


 
 

シンクロへのフィードバックについて

 
 指導者と選手のシンクロへのフィードバックだが、一般的には選手のアクションの結果(成功または失敗)に大きく左右される。例えば選手がとったアクションが成功したとすれば、指導者が口調を荒立てることは少ない。 そのアクションが失敗すれば、指導者のアプローチはネガティブになる傾向にある。
 
①アクションが成功した場合の傾向:拍手をしたり、勇気づけたり、全体への褒め言葉を発したりする。概してポジティブな傾向にある。
 
②アクションが失敗した場合の傾向:褒め言葉が減少する、ネガティブなジェスチャーが増加する、技術的または戦術的な指示が増加する。

 
 このフィードバックパターンは、一般的かつ合理的でもある。しかし指導者はこの心理学を研究することで、スポーツ選手のパフォーマンスを改善できるはずだ。そこには高いレベルでのメンタルコントロール、人間性や社会性などが求められる。まずは日常のトレーニングから選手を熟知しながら、シンクロ関係を構築しておくことだ。そして試合におけるゲームの流れを把握し、ライバル、体力、心理的問題などを考慮しながら選手へアプローチする。そこでは心理学やメンタルコントロールによって、口頭によるコミュニケーション、非口頭のコミュニケーションを通してメンタルマネージメントの改善が期待できる。
 
※この事業は競技強化支援助成金を受けて行っております