日本トップリーグ連携機構 トップアスリート活動基盤整備事業 活動報告レポート<第6回>


スポーツチームのこれから

 今回、企業チームからクラブチームへの転換を選んだスポーツチーム(名古屋フラーテルホッケーチーム)と、企業チームとして活動するスポーツチーム(ソニーセミコンダクタ九州女子ハンドボールチーム)という運営形態が異なる2つのスポーツチームの活動内容を見ることで、今日のスポーツチームに求められる役割について考えてきました。その結果、連載の冒頭でも述べたように、今日では、スポーツチームはさまざまな場面において社会との繋がりを持ちながら活動をおこなうことが必要であることがわかりました。すなわち、ファンや地域の人々、自治体、企業関係者など多くのステークホルダー(利害関係者)との関係が重要であり、それらのステークホルダーと密接に関わりながら活動をおこなうことが必要となっているのです。そして、多くのステークホルダーにチームの活動を支援してもらうために、スポーツチームは自分たちの強みを活かし彼らに何ができるのでしょうか?

スポーツチームの強みとは?

  オリンピックやプロ野球などをはじめ、スポーツは人々に感動や、生きる勇気を与えてきたと言われています。また、スポーツを通じて、他者との交流を行ったり、人生について学んだ人も多いのではないでしょうか。「フェアプレー」「フレンドシップ」「ファイティング・スピリット」。昔からスポーツがもたらす3つのFの精神といわれています。この3つの精神に代表されるように、スポーツはこれまでもモラル向上や人間形成において、重要な役割を担ってきました。これこそが、スポーツの一番の強みではないでしょうか。そして、スポーツチームはこの強みを活かし活動を支援してくれるステークホルダーに恩返しをおこなうのです。


地域への貢献

  今日、メタボリックシンドロームや成人病などに代表されるように、運動不足が主な原因となっている健康への影響は大きな社会問題となっています。また、大人だけではなく、子どもたちが運動する機会も年々減少傾向にあるとされています。その他にも、大都市への一極集中によって起こる地方の過疎化など、私たちの周りには多くの社会問題が存在しています。これらの問題を解決するにあたり、それぞれの自治体が努力をおこなっています。その中で、スポーツチームは自治体などと連携することで、ステークホルダーに対し大きな貢献ができるのではないでしょうか。住民の運動不足に対しては、運動場所や機会の提供、そして地域の活性化については、スポーツを活かした街づくりなどが考えられます。名古屋フラーテルがおこなっているホッケー教室やリーグの開催はよい例といえるでしょう。トップリーグに参加するチームにも、地方の都市を本拠地に活動するチームが多数あります。それぞれの地域でスポーツチームが中心的な役割を果たすことで、チームの存在感が高まることが期待されます。


地域から世界へ 世界から地域へ

 今回取り上げた、名古屋フラーテルやソニーセミコンダクタ九州も多数の所属選手を国の代表チームに派遣しています。わが国では、古くから多くの競技で国内トップリーグに所属する選手によって代表チームが構成されています。国内のトップリーグが衰退することは、すなわちトップスポーツ選手の活動の場がなくなることを意味します。そして、最終的には国の競技レベルの低下にも繋がるのです。また、地元のチームで活動する選手が代表チームに入り、オリンピックや世界選手権などの大きな大会で活躍することは、チームのみならず、地域にとっても大きな効果をもたらすと考えられます。トップチームが開催するスポーツ教室やスクールにおいて、国際舞台で実際に活躍する選手やコーチから直接指導を受けることは、次世代の選手の育成や、競技レベルの向上、普及にも大きな役割を果たします。このように、トップスポーツチームが地域と密接に関わる活動は、世界にも通じているのです。


マネジメント基盤の安定

  名古屋フラーテルの活動を紹介した際にも述べましたが、現時点で十分な活動資金を獲得できているスポーツチームやクラブはごく僅かであり、多くの組織で今後より幅広い活動をおこなうためのマネジメント基盤の整備が必要となっています。マネジメント基盤の安定に向けては、チームだけではなく、リーグの構造改革が必要となることもありますが、まずはチームレベルで「何ができるのか?」を考え、仕組みづくりに取り組むことは重要でしょう。企業に運営資金のすべてを依存したり、補助金に頼るのではなく、将来的には金銭面でも自立することが望まれます。しかし、現在の経済状況では、いくら積極的な活動をおこなってもチームの収入が劇的に増加することは考え難く、マネジメント基盤の安定には地道な努力が求められます。その際必要となるのは、やはり地域の理解や協力でしょう。


まとめ

 このように、今日では、スポーツチームはファンや地域住民をはじめ、自治体、地元企業、学校など多くのステークホルダーの理解や協力なしには活動が成り立たないと言っても過言ではありません。その時、スポーツチームは支援してもらうだけではなく、自分たちの強みを活かして、地域や社会など、ステークホルダーに何ができるのか?を常に考えることが重要となるでしょう。