日本トップリーグ連携機構 トップアスリート活動基盤整備事業 活動報告レポート<第11回>
●「商標権について」
1.はじめに
多くのチームが、自己のチーム名やチームキャラクター等について登録商標を有されている事かと思いますが、このような商標登録はなぜ必要なのでしょうか。また、商標登録を取得するための手続はどのようになっているのでしょうか。
2.商標登録の効力
(1)商標とは | |
そもそも、「商標」とは何を意味するのでしょうか。商標法2条1項には、「商標」の定義について次のとおり記載されています。 「この法律で『商標』とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であって、次に掲げるものをいう。」「1.業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの」「2.業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの」とされています。 すなわち、商標は商品やサービスのマークであって、自己の商品やサービスを他者の商品やサービスから区別するものを指します。例えば、プロ野球やJリーグのチームはそのチーム名等をそれぞれ商標として登録しています。 また、商標登録出願には指定商品及び役務として、出願人が商標の使用をする商品や役務を記載することが要求されています(商標法6条1項「商標登録出願は、商標の使用をする一又は二以上の商品又は役務を指定して、商標ごとにしなければならない。」)。「役務」という言葉は少し馴染みがないからもしれませんが、例えば広告業、金融・保険業、建設業といった反復継続して行われるサービスのことを意味します。 このような商標を「指定商品又は指定役務について」「使用をする権利を専有する」ことのできる権利が商標権です(商標法25条)。商標権は、使用しているだけで発生するわけではなく特許庁において登録されることが権利発生の条件となり、その登録内容は、商標登録原簿によって確認することができます。(ただし、登録しただけで実際にその商標を使用しなければ不使用取消(商標法50条)といって商標登録が取り消される制度も存在するので注意して下さい。) なお、独立行政法人工業所有権情報・研修館が提供する特許電子図書館(HTTP://www.ipdl.inpit.go.jp/homepg.ipdl)でも商標の内容等を確認することはできますが、内容を必ずしも正確に反映していると限りませんので、権利内容をきちんと確認するためには商標登録原簿及び商標公報を確認することが必要です。 |
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(2)商標権の効力 | |
それでは、このような登録商標権はどのような効力を有するのでしょうか。 商標権は、「登録商標に類似する商標を、指定商品、役務に類似する商品、役務に使用等することを禁止する権利」(田村善之「商標法概説〔第2版〕2頁」、商標法25条「商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。…」参照)とされ、このように登録商標の使用をする権利を専有する結果、商標権者は、商標権侵害行為を行う者に対してその行為をやめるよう請求すること(商標法36条)や商標権侵害行為によって被った損害につき賠償請求すること(民法709条)ができます。 このことは、裏を返せば、仮に自己のチーム名やキャラクター等についての登録商標をチーム以外の第三者が取得してしまった場合には、当該第三者が当該商標権に基づきチームに対してチーム名やキャラクター等の使用差止や損害賠償を請求してくる可能性があることを意味します。また、第三者が商標権をチームに譲渡する対価として高額の金銭支払を請求してくる可能性もあります。 したがって、このようなトラブルが生じることを未然に防止し、チームとしてのブランド戦略を組み立てていくためにもチームブランドを商標権によって保護していくことが重要です。 なお、商標権等の知的財産権の効力は各国ごとに認められるものであり、日本で登録された登録商標は日本国内においてしかその効力を有しないことにも注意する必要があります。 |
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(3)商標の利用 | |
登録商標権を取得すれば、第三者に対して商標の使用権を許諾することができ(いわゆる「ライセンス」)、使用許諾に対して金銭等の対価を得ることが可能となります(商標法30条、31条)。例えば。チーム名やキャラクターを入れたTシャツ等のグッズを第三者に委託して生産・販売してもらい、売り上げの何パーセントかを商標の使用料としてチームが受け取るビジネスを行う事が考えられます。 第三者への商標使用許諾というビジネスモデルを活用することによって、チームが商品在庫を抱えることなく、効率的に経済的収益を得ることが可能となります。 |
3.商標権取得の手続
それでは、このような効力を有する商標権を取得する場合、その手続はどのようになるのでしょうか。
上記のとおり、商標権は、特許庁における登録によってはじめて権利が発生するものです。特許庁においては、商標登録出願に対して出願審査が行われ、その際に登録が認められない事情がないかが審査されます。商標登録が認められない場合としては、例えば、出願した商標について、類似の商品・役務について類似の商標が先に出願されている場合(4条1項11号)や他人の氏名や名称を含む商標(同8号)などが例にあげられます。
出願審査の結果、商標登録出願を拒絶する理由がなければ、商標登録査定がなされます(商標法16条)。
なお、商標登録出願等を扱う専門家としては弁理士が存在し、弁理士会のホームページ(HTTP://www.jpaa.or.jp/)では弁理士の紹介が行われています。実際に商標登録出願をされる際にはお近くの弁理士に相談することが最も良いでしょう。
また、商標登録出願については、弁理士等の代理人への報酬に加え、所定の手数料を特許庁に納付する必要があり、さらに商標登録後は年金も支払う必要があります。