日本トップリーグ連携機構 トップアスリート活動基盤整備事業 活動報告レポート<第13回>
●「スポーツクラブとスポーツチーム-下部組織の重要性-」
皆さんはスポーツ「クラブ」とスポーツ「チーム」の意味の違いを理解して意識して区別して使っているでしょうか。今回は、「クラブ」と「チーム」という言葉を理解することでスポーツマネジメントがよりわかるようになることを実感していただきたいと思います。
大辞泉によれば、クラブ【club】とは、「1 政治・社交・文芸・スポーツ・娯楽などで、共通の目的を持つ人々によって組織された会。また、その集会所。」とされ、チーム【team】とは、「ある目的のために協力して行動するグループ。組。スポーツや共同作業についていわれる。」と定義されています。
これらを比較するとクラブは、共通の目的を持つ人々の会であり、行動については単一であることが触れられていないのに対して、チームはある目的のために協力して行動するグループとして行動レベルで同じ方向性が必要とされます。
スポーツで言えば、トップチームという場合、試合に出場するために結成されたメンバーによる集団を意味します。「チーム」から漏れた控え組の選手もいるわけですが、それらの選手を含めた組織は同じスポーツを愛好するという目的が共通して集まっているので「クラブ」ということになります。学校の部活動を例にするとサッカー部、バレーボール部、バスケットボール部、ハンドボール部などは「チーム」であり、体育会と呼ばれる組織が学校のスポーツクラブということになります。
地域のスポーツクラブで言えば、レベルの高いチームや中高齢者のチーム、そして子どものジュニアチームなど、下部組織がチームを結成し、クラブのなかにおいて多様な活動が確保されます。これまでトップチームがボランティアで子どもを指導するトップレベルチームが多いですが、これが本来のクラブであるとすれば、クラブ会費を参加する子どもや中高年者から徴収し、クラブメンバーとして子どもや中高年者もトップチームと同じユニホームを着てスポーツをすることができるようになります。
こうした多面的な事業が展開できるようになれば、クラブがトップチームの興行収入だけに頼らないでも経営ができるようになります。ジュニアやシニアの下部組織が大きくなれば、それらがクラブの持つ資源ともなってきます。そもそも資源が足りないトップチームは資源を外部から調達し、地域のスポーツクラブとの連携なども検討すべきでしょう。連携を検討する場合は、従来型の日本のスポーツ組織を活用し、県協会や地域の協会組織ともうまく関係を持つことが大切です。
以上のように考えてみると、これまで日本では、多くの人の意識がチームに向かい、チーム強化を中心に経営をしてきたのではないでしょうか。そのためスポーツ愛好者が集い、スポーツをしたり、支えたり、見たりする仕組みが育たず、スポーツクラブの経営が成立せずに、すべてスポーツ団体や行政を頼る傾向が生まれたのではないでしょうか。広島市立大学で教鞭をとられていた荒井貞光さんの『クラブ文化が人を育てる―学校・地域を再生するスポーツクラブ論』では、スポーツ文化を育てることにこれまで躍起になってきたが、これからはクラブ文化を育てることが将来の日本に必要であることが述べられています。
日本のゴルフ倶楽部を例に出すと、お金持ちの道楽と敬遠されそうですが、クラブメンバーが会員権を購入し、自分達の活動で収入を得てクラブを経営していること自体、他のスポーツ種目の人々が真似るべきことではないでしょうか。NPOのスポーツクラブであれば、プレイヤーとなるためには正会員となりクラブの経営も気にすることが大事でしょう。正会員たちだけでは勝てないとなったときに始めて、傭兵部隊として助っ人となる選手と契約し、彼らを競技力で評価して契約更改するようになるのです。
欧州型のスポーツクラブは、年老いても正会員であるクラブメンバーとしてクラブの経営に参画し、クラブ規模が大きくなれば、経営のプロを雇って、所有と経営を分離させていくのです。所有と経営の分離ができれば、創業時の会長がいつまでも経営をしなくてもクラブは経営システムが稼動することで永続性が保たれるわけです。このことは普通の企業が起業し、中小企業から規模の大きな企業に変貌していく際にも見られる共通した現象ではないでしょうか。