日本トップリーグ連携機構 トップアスリート活動基盤整備事業 活動報告レポート<第15回>
●「ボランティアマネジメント」
大会当日の運営のみならず、日頃の組織運営や広報活動、普及活動など、スポーツ組織にとってボランティアは欠くことのできない貴重な存在です。恐らく多くのクラブチームではほとんどの理事がボランティアであり、理事会として監督機能や意思決定機能を有するほかに総務や経理、広報などの実務も担っているのではないでしょうか。ボランティアは個人が自発的に自由意志に基づいて行う活動です。金銭的報酬のためではありません。だからこそ前回の活動報告レポートでも述べたとおり、ボランティアが「なぜ」「何を」「どのように」求めているのかよく把握しておく必要があります。
全国ボランティア活動実態調査(社会福祉法人 全国社会福祉協議会、2001年)によると、ボランティア活動に参加した主な理由は以下のようなものであり、アメリカやイギリスの調査結果とほぼ同じ傾向を示しています。
・社会やお世話になったことに対する恩返しをしたかった | 40.8% | |
・困っている人を助けたいと思った | 34.5% | |
・自分の人格形成や成長につながることをしたかった | 32.9% | |
・地域や社会を知りたかった | 30.1% |
一方、経営学者のコトラーは、ボランティアの主な不満原因として次のような点をあげています。
・活動内容が期待と異なっていた。 | |
・周囲から感謝されている手応えがない。 | |
・適切な訓練と指示がない。 | |
・常勤スタッフに比べて二番手にいるような印象。 | |
・時間をとられすぎる。 | |
・個人的達成感に欠ける。 |
日本国内においても、過去にボランティア活動をしたことがあるが現在はしていない人について、ボランティア活動をやめた理由を調査したものがあり、「時間的な負担が大きかった」が33%と最も高くなっていました。(財団法人 余暇開発センター「余暇インフラの高度化に関する調査研究(I)」、1998年)
これらの調査はスポーツ組織だけを対象にしたものではありませんが、このように自組織に対する内部マーケティングを行うことは、適切なマネジメントのためにも役立ちます。
ところで、ボランティアマネジメントにおける大きな課題の一つとして、ボランティアと有給職員の関係対処があげられます。特に、有給職員がボランティアを一段下の働き手と見ている場合、また逆に、ボランティアが自分達を組織側の常勤職員よりも上位の存在であると考えている場合、両者の関係は難しいものになると指摘されています。この問題に対しては、マネジメント層の断固たる態度が必要になります。米国では、ボランティアマネジメントのための原則を作成している組織がいくつもあります。組織によっては、ボランティアの能力に敬意を払う一方、もし仕事に満足できなければ辞めてもらうか別の仕事をしてもらうことを、敬意をもって伝えるべきである、と明言しています。そして、有給職員の権限を明確にし、且つ、有給職員とボランティアの垣根を低くし、チームワークを促進する方策を示している点が共通しているようです。ボランティアをできる限り専門職の有給職員と同様に扱い、必要に応じて指示と叱責を与えることがモラルの向上と組織の効率アップへとつながり、未来のボランティアと運営メンバーを呼び込むと言えるでしょう。