連載スタートにあたって
第1回
国立スポーツ科学センタースポーツ情報研究部
白井克佳
スポーツ選手が具備すべき要素として「心技体」と表すことがありますが、ボールゲームにおいては走、跳、投を初めとするすべての運動要素が必要とされます。またこの中でも瞬発力と持久力といった、相反する体力要素が要求されることもあります。JTL加盟の競技はすべてチーム競技ですから、これにチームワークや戦術的な要素が加わります。したがってその勝敗を分ける要素は多岐にわたりつかみ所がない、といった感じを持つかも知れません。
あるコーチの言葉に「勝ちに不思議の勝ち有り、負けに不思議の負け無し」というものがあります。試合に勝つときには思いもよらないような試合展開で勝ってしまうことがあっても、負けるときには必ず負けにつながる要因があるということです。勝敗に携わるものは、特に試合に負けたとき、その原因を探すものです。この原因を客観的に、時には主観的に分析しチームの強化に生かす、私はこれがボールゲームにおけるサイエンスだと考えています。
近年ではスポーツのテレビ放送のなかで、簡単な試合の統計データが提供されることが多くなりました。例えばサッカーではボールの保持率といったものが試合の途中で示されることがあります。試合を見ていると、こちらのチームがボールを保持している時間が長いな、といった感覚を持っていることがあると思います。そのようなとき実際に保持率が数字で表され、自分の感覚通りだと妙に納得したりします。このような感覚は試合を分析する上で非常に大事になります。選手やコーチの視点は多岐にわたり、試合の中で非常に多くの情報を収集・分析しています。本連載ではJTLに加盟する様々な競技の様々な分野の専門家の方に執筆をお願いしています。そこには単に試合を漠然と見ていただけでは気づかないような視点があります。そのような視点を持ってゲームを見るとこれまでに気づかなかったような新しい発見があるかも知れません。このような発見により,これまで以上に楽しく試合を見ることが出来るようになることを期待したいと思います。
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