日本のボールスポーツの強化・活性化のため   バスケットボール競技の現状と今後について

第2回


はじめに


 ボールゲームは、特に入り組むチームスポーツは、“国際競争力がない”と言われ続けている。オリンピックや世界選手権での成果を鑑みれば、一目瞭然である。私の専門とするバスケットボールにいたっては、特に男子はここ30年以上にわたってオリンピックに出場すらできない。昨夏の日本開催の世界選手権でも、予選を突破することもできなかった。いまさらかもしれないが、強豪国の調査を、そしてよきところは全て吸収するような姿勢が不可欠ではないだろうか。ここに私見となるが、他国の調査をも鑑みた意見を述べさせていただきたいと思う。


(1)情報戦略が不可欠



現在世界は、情報合戦をしている。如何に多角的にしかも客観的な信用のおけるデータを収集できるかがキーポイントとなっている。インターネットなどのOpen Source Intelligenceはもとより、自らゲームが行われている国へ出かけてのデータ収集など、そしてそのデータをどのようにして意味あるデータに変換できるかなども重要となっている。蓄積は(継続は)は力なりではないが、如何に多くを継続的に収集できるかも必要不可欠な条件であると考える。これには如何に資金を投入できるかが、ゲーム自身への保険になるのではないかと考える。なぜならば、このデータなしにはゲームプランが立てられない現状があるからだ。

その他に、情報収集は、このようなゲーム自身のデータ管理も重要であるが、以外にもプレーヤー自身が安心でしかもベストパフォーマンスを発揮できるような環境を整えるバックアップ態勢が不可欠である。そのためには、現地にて調査をしなければ準備ができない、島国である日本にとって、経済面が他国に比して負荷がかかるが、それなりに価値あるものにすることが、その負荷をも超える良い成果となって帰ってくると信じている。


(2)U-16からの継続的な情報収集(世界が一番注目する年齢)


 
ボールゲームに関しては、近年U-16の大会が開かれるようになり、有名なプロのクラブチーム(主にヨーロッパに強豪国)、NBAのスカウトたちの目が光っている。U-18の大会では、すでにプロになっているプレーヤーもいるというのが現状である。いままでは、ユニバーシアードなどの大会で初めてベールを脱ぐような格好であったが、スカウトたちの注目する年齢層が一気に変化している。ヨーロッパのチームなどは、自らのクラブに所属する若年齢層のプレーヤーを12歳くらいから育て、18歳くらいでNBAにスカウトされ、その結果大金を得るという格好も出てきている。松坂投手がMLBに行き、西武球団が大金を得たような図式である。この行為を意識して行っているのも事実である。またこのためでだけではないが、若年齢からの一貫した教育、指導がなされていることも事実である。スキャモンの発育発達曲線ではないが、年齢にあわせた、発育にあわせた、個別性や全面性を重視した教育、指導がなされている。NBAの一昨年にはイタリア、その前年にはオーストラリアからドラフトされている。しっかりと若年齢からの継続的なデータ収集の裏づけがあってのドラフトである。また、アテネの覇者アルゼンチンにいたっては、1984年に大変革を起こし、一貫した指導システムを構築して実施したといわれている。そこから20年、’84ころは日本とさほど変わらないくらいの実力であった国が、現在では世界屈指の国に、そしてNBAに数人ではあるが所属し、中にはチームの中心的な存在になっているプレーヤーさえいる。どこをどのように変化させるとこのようになれるのか、じっくりと調査をしてゆかなければならないと考えている。
 指導者面に関しては、一貫指導のシステム(カリキュラム)、指導面つまりコーチの養成、プレーヤー面に関しては、普及、育成、強化など、どこから強化をするか、どのようにして線引きをするかなど(普及から強化への時期など)が必要不可欠な問題である。

 次回は、実際に行っているゲームの収集とゲームの分析、蓄積についてを述べようと考えている。

早稲田大学スポーツ科学学術院准教授

[生年月日]
1956年4月20日 51歳

[学歴]
早実→早大→筑波大大学院

[指導歴]
日本バスケットボールリーグ
・熊谷組ヘッドコーチ(日本リーグ優勝2回、天皇杯優勝1回)
・大和證券ヘッドコーチ
JBL

・日立ヘッドコーチ

早稲田大学男子バスケットボールチームヘッドコーチ
早稲田大学女子バスケットボールチーム総監督

[その他活動]
NBA、オリンピックの解説等