日本のボールスポーツの強化・活性化のため  バスケットボール競技の現状と今後について(その2)

第3回

(3)情報収集

1)如何にして情報を収集するか

 情報を如何にして収集するか、そこが国際競争力において他国間で優位に立てるかがかかっている。現在我々バスケット協会が行っている収集方法である。これがベストとは思えない、もっと良い方法があると思っている。


●オープンソース(Open Sauce Intelligence)
 一般にでているデータの収集である。具体的には、インターネット、新聞、雑誌、そしてテレビなどのメディアである。その他もあるが、誰でも興味さえあれば収集できるものである。しかし、あらゆるところにアンテナを張っていなければホットなデータを収集することは難しい。その意味においては、JISSの情報網は、相当助かっていることは確かである。ここの情報ソースが、一番大きいといっても過言ではないほど有効かつ重宝している。テレビやネット、そして新聞や雑誌は、確かにプロデューサーや記者などによって作られるもので少しは偏りがあるかもしれないが、客観視して表現していると思われる。ただ日本以外の国においては、宗教などの影響が大きく偏りがある場合も十分に考えられるため、そのあたりの一般的な知識も不可欠な要素と考える。


●現場にて収集
 ゲームを行っている会場に出向いて行う収集である。収集の方法も客観的に多面的に収集する、そのため従来からのカメラでの収集、ペーパー類にて書類に手書きする原始的手法、その他に最近ではPCに直接入力する方法、しかも分析ソフトを使用しての収集も行われている。

しかし現実は、FIBA、FIFAのバスケットとサッカーにおいては、競技団体が映像の権利をも保持するケースが出てきており、独自にデータを収集できない現実もあるのだ。しかし現地にて情報を収集することがベストである、必要なものを収集できるからである。


●映像専門業者、テレビ局などからの収集
 現地のローカル局が映像を製作するケースが多く、現地のテレビ局と交渉をして購入する方法である。アメリカなどは、FIBAアメリカが映像を管理しており、自チームのゲームに関してはゲーム終了後に入手することができる。相手国のデータ(映像)に関しては、チーム間で同等の条件ということで(ゲーム時間で不公平が生じる可能性がある)、ゲーム当日の真夜中12時に手渡されることになっている。このパターンが国際ゲームでは当たり前のようになっている。


●その他、FIBAからの収集
 FIBAは全ての国際ゲーム(主に5大陸のゲーム)に関して映像権を持っている。そのため、現地に行かなくともデータを収集することはできる。ただ経済的な部分、データ収集に大きな金額がかかることもつけ加えておく。

2)データの信用度

 データの信用度ということも重要になる。映像に関しては、信用という部分ではあまり問題にはならないかもしれない、しかしその他のデータ、特に個人の感想(プレーに関する評価など、新聞、雑誌など)については大きな差異が生ずると考えている。ある程度の指標を元に数値化をしたデータは、まったく信用できないとはいえないが、数値化になっていないものに関しては、その評価をした人のキャリアなどが大きく影響力を及ぼすことは言うまでもない。


●FIBAや現地協会発行のスタッツ等
 大会ごとにゲームに関するレポート、スタッツが出る。しかしこのフォーマットが統一されていない(FIBAに関して)、そのためはじめてみるときに、そのスタッツ類の読解能力も問われる。つまり語学センスも問われるのである。英語だけにとどまらず、スペイン語、フランス語などがある程度(競技に関する単語程度をさす)の読解能力が不可欠である。また、国により表現が異なり、今までに見たこともない部分の数字が表現されていることもある。そのあたりも自らの必要な部分と照らし合わせなければならない。このあたりが文化的、宗教的な問題も加味されるため、そのあたりの教養と情報も必要となる。このような条件を全て理解していなければ、このデータを取り扱うのは非常に危険となると考える。


●ゲーム分析ソフトを使って(分析者により多少の差異が生じる)
 最近PCによるゲーム分析が流行りつつある。映像がデジタルになり、今までのテープからDVDもしくはHDDと変わり、そのため分析する時間が大きく短縮されたのである。また、入力をイージーにし、そしてそのデータのまとめにかんしても、簡素化するソフトも生まれ、データの処理がとても早く、しかも間違いのないものが出てくるようになりつつある。しかし、このデータは、入力する者により多少の変化が生じる。また、ソフトによるものなのか、そのあたりも多少の数値に異なりが生じるケースがあるようである。

 次回は以下の項目について、現在バスケットボール競技で行っているゲームスフとを使ったゲーム分析を紹介する予定。


(4)ゲーム分析

1)自チームを熟知する
2)相手(対戦する相手)を熟知する
3)対戦相手との比較、強み、弱み
4)反映、立案


早稲田大学スポーツ科学学術院准教授

[生年月日]
1956年4月20日 51歳

[学歴]
早実→早大→筑波大大学院

[指導歴]
日本バスケットボールリーグ
・熊谷組ヘッドコーチ(日本リーグ優勝2回、天皇杯優勝1回)
・大和證券ヘッドコーチ
JBL

・日立ヘッドコーチ

早稲田大学男子バスケットボールチームヘッドコーチ
早稲田大学女子バスケットボールチーム総監督

[その他活動]
NBA、オリンピックの解説等