銀メダルと銅メダル、どっちが幸せ?
「銅メダリストの方が銀メダリストより幸福感を得ている」――。 先のバンクーバー五輪でもこれを裏付けるようなシーンが多々あった。何と言っても印象的だったのは、フィギュア女子シングルの浅田真央選手だろう。試合直後のインタビューで「本当に長かったというか、あっという間に終わってしまった」と言って悔し涙を見せた彼女は、表彰式に臨んでも満面の笑みで喜びを表す金メダルの金妍兒選手(韓国)や銅メダルのジョアニー・ロシェット選手(カナダ)とは対照的に、目にうっすらと涙を浮かべ唇を固く結んだ表情を崩すことはなかった。 もう一人印象に残ったのが男子モーグルの銀メダリスト、デール・ベッグスミス選手(豪)だ。21歳の若さで出場したトリノ五輪で金メダルを獲得した彼は、五輪2連覇を狙っていた。上村愛子選手と同じ『ID one』という日本製のスキーを愛用する選手ということもあって応援していたのだが、地元ファンの大声援を受けたアレクサンドル・ビロドー選手(カナダ)に0.17点差で惜敗。レース直後は自分の負けが信じられなかったようで、「なんでオレが銀メダルなんだ?」と言わんばかりの不満げな表情でビロドー選手と握手を交わす姿が目に焼き付いた。 一緒に戦った仲間への礼儀を欠くような振る舞いは論外だが、私は負けたことを心の底から悔しがる選手が大好きだ。悔しさと真正面から向き合って敗北を受け入れた選手は、必ずや大きく成長できると信じている。その意味で色は何であれ、中途半端な満足感を得るメダルより、悔しさいっぱいのメダルの方にこそ可能性を感じるのだ。
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