次世代“日本代表”と南アW杯を観た!




 6月11日に幕を開けた2010FIFAワールドカップ(W杯)南アフリカ大会。開幕前の低調な戦いぶりとは打って変わり、格上のチームと堂々と渡り合ってベスト16に名を連ねた日本代表は、決勝トーナメント1回戦で惜しくもパラグアイに敗れたものの、最後まであきらめずに果敢に戦う姿勢を見せて日本中を感動の渦に巻き込んだ。4年前のドイツ大会の惨敗でやや翳りが見えていたサッカー人気を再燃させると同時に、2014年ブラジル大会への夢をつなぐ一歩となった。

 6月17〜22日までの6日間、私はFIFAオフィシャルパートナーのソニーが企画した若手選手の派遣プロジェクト『TEAM make.believe』に帯同する形で、南ア大会を取材するまたとない機会を得た。
 このプロジェクトのコンセプトは、ソニーがスポンサーとしての権利を有効活用して、将来有望な若手選手の“夢”をサポートすべく、世界最高峰の舞台を“体験”させることにある。この旅で経験したことを選手が今後の成長に生かすことで、4年後のブラジル大会で日本代表として活躍してもらおうというのが狙いだ。
 今回『TEAM make.believe』のメンバーに選ばれたのは、今年1月の全国高校選手権で準優勝した青森山田高校のエース柴崎岳選手と、今シーズンから湘南ベルマーレでプロ生活をスタートさせたばかりの三平和司選手の2人。柴崎選手は昨秋のU-17W杯で活躍した次世代の日本代表エース候補で、卒業後は鹿島アントラーズへの入団が内定している。一方の三平選手は神奈川大学での活躍が評価され、2009年ユニバーシアードの代表として5試合に出場し、チームを3位に導いている。それぞれの世代で日本代表としてプレーした経験を持つ期待の逸材だ。

 6日間の旅とはいえ、アフリカ大陸の南端に位置する南アは行くだけで丸1日かかる遠い国。しかも、経由地の香港で飛行機が故障して出発が4時間も遅れたため、目的地のダーバンに着いたのは成田を発ってから28時間後。空港に着いたときはもうグッタリだったが、ダーバンの澄み切った青い空と民族衣装を身にまとったズールー族の若者たちの賑やかな踊りに迎えられて何とか元気を回復。せっかくなのでズールー族の文化を体験しようと、クルマで1時間半ほどの『シャカランド(ズールー族の生活を疑似体験できるテーマパーク)』へ足を伸ばした。園内で一夫多妻制の彼らの生活スタイルについて説明を受けていると、あとからやってきたオランダ人サポーターの一行と遭遇。「明日、スタジアムで会おう!」と静かな火花を散らした。

 現地2日目はこのプロジェクトのハイライトである日本×オランダ戦の観戦。試合前にスタジアム脇に設けられたスポンサー企業の展示エリアに顔を出し、3Dテレビを体験しようと観戦客が長蛇の列をつくっているソニーのブース前で2人は即席インタビューを受ける。オランダ戦に向けた日本代表への期待などを語った後、ブブゼラの吹奏も披露してサポーターとの友好を図った。
 しかし、オランダ戦が始まるとそれまでの観光モードは一変。2人は一般のサポーターのようにブブゼラで応援することもなく、食い入るようにピッチ上の選手たちを見つめ、時折メモを取る。柴崎選手は同じポジションのスナイデル選手の動きに注目するなど、レベルの高い選手から何かを得ようと真剣な眼差し。三平選手はオランダのゴール前でのスピードとスキのない戦いぶりに感心しきりの様子だった。夢の舞台を目の当たりにして具体的なイメージが膨らんだのか、2人とも「4年後は自分もこの舞台に立ちたい」ときっぱり言い切った。

 3日目は早朝にダーバンを発ち、ヨハネスブルグに移動。高級住宅街のサントン地区にあるショッピングモール『ネルソン・マンデラ・スクエア』の中庭に設営されたソニーのドーム型パビリオンでまずは3D映像を体験。前日にスタジアムで観戦したばかりの日本×オランダ戦のハイライトや、現地で大流行しているシャキーラが歌う大会公式ソング『WAKA WAKA』のミュージックビデオなどを臨場感いっぱいの3D映像で楽しんだ後、満員大盛況の観客の前で英リーズ・ユナイテッドで活躍した南アサッカー界の英雄、ルーカス・ラデベさんとのトークショーに出演。これが終わるとヨハネスブルグの日本人学校を訪問し、子供たちと一緒にサッカーでたっぷりと汗を流したのだった。
 夜は7月11日の決勝戦の会場にもなるサッカーシティでブラジル×コートジボワール戦を観戦。8万4000人の大観衆がそれぞれに奏でるブブゼラの大音響には閉口したが、スーパースターたちの競演に対する期待感からか、キックオフと同時に会場の興奮は最高潮に達する。実はハンドだったルイスファビアーノのゴールやコートジボワールの悪質なタックルにキレたカカが退場するなどハプニング満載ではあったが、超一流のプレーを間近で堪能することができた。

 さて、そんな強行軍の南ア取材の中で私が最も印象に残ったのが、元南ア代表キャプテンたちとの交流だった。1991年にアパルトヘイト(人種隔離政策)が撤廃されるまで、世界のスポーツ界から追放されるという暗黒時代を経てきた彼らの言葉には、国を背負って戦うことの喜びと誇りを強く感じたのである。

※この項、次回(第31話)に続く


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