究極のユニバーサルスポーツ“ブラサカ”
視覚障害者のために開発された「ブラインドサッカー」という競技をご存じだろうか。アイマスクをつけ、動かすとカシャカシャという鈴の音が鳴る特殊なボールでプレーするフットサル(5人制ミニサッカー)。情報の7〜8割を目から得ているといわれる私たち晴眼者は、「視覚情報を奪われた状態でサッカーをするなど至難の業なのでは?」と思いがちだが、それを補う音声情報とイマジネーションを駆使すれば、実はピッチ上を自由に走り回ってサッカーを楽しむことができる。生き生きとボールを操る選手たちの動きを見ていると、人間の可能性には限界がないのだと感じさせてくれるスポーツだ。 障害者のサッカー大会というと知的障害者サッカーの世界選手権が、“もう1つのW杯”として8月21日から南アフリカで開催されることがいくつかのメディアで取り上げられていたが、視覚障害者の世界選手権はそれより1週間ほど早い14日からイングランドのヘレフォードで開催される。 ブラインドサッカーにはB1(全盲)クラスとB2/3(弱視)クラスのカテゴリーがあるが、世界選手権で行われるのはB1クラスである。1チームは4人のフィールドプレーヤーと、ゴールキーパー(GK)、監督、コーラーの7人で構成され、フィールドプレーヤーは全員がアイマスクを装着しなければならない。ひと口に全盲といっても、光を感じたり感じなかったりで微妙な個人差があるため、公平さを期すためにアイマスクを使ってプレーするのだそうだ。 ブラインドサッカーの世界選手権は1998年に始まり、当初は2年おきに開催されていたが、2004年のパラリンピックアテネ大会で正式種目に採用されたのを機にパラリンピックと世界選手権が2年おきに開催される形をとってきた。5回目となる今大会は開催地のイングランド、前回覇者のアルゼンチン、フランス、スペイン、ブラジル、コロンビア、カメルーン、中国、韓国、日本の全10チームが大会に参加。2組に分けて行う1次リーグを戦った後、決勝トーナメントと順位決定戦が行われる予定だ。 私がブラインドサッカーを見てまず驚いたのが、日々の暮らしや街の中では白杖を使う不自由な生活を強いられているのであろう選手たちが、ピッチ上ではすべての束縛から解放されたかのように自由闊達に生き生きとプレーしていることだ。足もとからボールを放さないように左右の足で挟み込むように進むドリブルも、独特のリズムがあって面白い。宙に浮かせたパスはボールがカシャカシャという音を発せず位置が把握できないため、シュートを放つときは別として、選手たちが繰り出すパスは自ずとゴロになる。コーナーキックも味方へのパスも、ピッチ上を転がすのが基本的なプレースタイルだ。 日本国内の競技人口はわずか400人というマイナー競技だが、アイマスクをすれば晴眼者も障害者も同じ土俵で楽しむことができる究極のユニバーサルスポーツ。日本視覚障害者サッカー協会(JBFA)は今大会をきっかけに少しでも多くの人にブラインドサッカーの魅力を知ってもらおうと、動画共有サービスのユーストリームを使って試合の中継映像を現地から配信する予定だ。19日の韓国戦は、試合時間に合わせて夜8時から池袋でトークショーとパブリックビューイングを合体させたイベントも企画している。 ブラサカ及びイベントの詳細情報は下記サイトへ
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