スポーツイベントにおけるチケット販売のノウハウ(その4)
第4回からは、チケット販売の具体的なノウハウをお話いたします。今回のテーマは、「オンライン販売会社との付き合い方」をお話します。
1. 「主催者販売」と「委託販売」
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チケット販売のルートは、大きく分けて以下の二通りに分けることが出来ます。もちろんどちらも主催者が最終責任を持って販売することには変わりがありません。
(1)主催者(チーム、団体)が、直接お客様にチケットを販売する方法。【主催者販売】
(2)主催者が、「チケット販売会社」に委託してチケットを販売する方法。【委託販売】
さらに「主催者販売」は、以下の3つに分けられます。
(1)協会や競技者、スポンサーなどに向けた「関係者販売」
(2)主催者が管理する会員への販売
(3)一般販売
同様に「委託販売」も、以下の3つに分けられます。
(1)一般販売
(2)先行販売
(3)「主催者販売」も委託
「関係者販売」については、主催者自らが行うしかありません。主催者が管理できるチケット枚数は、私の経験からは以下のとおりです。1名の専任チケット担当者がいて、アルバイト2名、2ヶ月間とします。
(1)アリーナのような大キャパで、自由席も含む試合数も多い大会の場合で、1万席まで。
(2)同様な条件であっても、指定席のみの場合、5〜6千席まで。
が、管理可能な席数でしょう。これ以上は、専任担当者を増やしアルバイトも増やさないと管理出来ません。人件費コストが倍になる勘定です。よって、主催者が管理するチケットを最小限に押さえ、出来るだけ「委託販売」に渡す方が結果的には得策です。
2. 「チケット販売会社」との交渉
「チケット販売会社」は、大手4社があります。
(1)電子チケットぴあ(ファミリーマート、サークルK&サンクス)
情報誌「ぴあ」とHP上での連動した告知が特徴。
【長所】情報の正確さと多量さ。
【短所】店舗(CVS含む)の無い地域がある。
(2)ローソンチケット(ローソン)
店頭での情報誌と、HP上での連動した告知が特徴。
【長所】全国に展開している店舗。スポーツに積極的。
【短所】店舗がローソンに限られる。告知力が弱い。
(3)エンタテイメントプラス《イープラス》(セブンイレブン)
HP上と携帯へのメール情報による告知。登録会員がインターネットで購入。
【長所】顧客履歴が取れる。セブンイレブンとの提携。
【短所】郵送販売が販売期間を短縮。
(4)CNプレイガイド(am/pm、セブンイレブン、セーブオン、JRびゅう)
HP上での告知。
【長所】JRの「びゅうプラザ」と連動。
【短所】店舗(CVS含む)の無い地域がある。告知力が弱い。
その他にも、「チケット販売」のシステムを運用している会社が数社ありますが、一般的には上記4社を委託会社としたほうが安心です。
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販売してもらうためにはそれぞれ契約が必要ですが、各社とも「取引先登録申請書」を提出すると販売可能となります。そのときに、交渉しなければならないのが手数料です。
(1)登録手数料(0〜31,500円まで)
興行単位で、1回に付き発生する。もともと、委託してもチケットが全く売れず、原券印刷をした分を払わずに連絡が取れなくなる興行元が発生したため、事前に着手金として受け取った例からはじまったもの。恒常的に興行を行い、年間1億円以上の売上がある興行元には免除することも多い。
(2)販売手数料(6〜12%)
販売したチケットの合計金額に対してかかる手数料。最初は12%から始まるが、販売量が増えれば交渉によって8%ほどにはなる。しかし、この手数料がチケット販売会社にとっては生命線。むやみに値下げ要求しても、告知力や営業担当者のやる気を削ぐことに繋がるため、8%はチケットを販売するための必要経費と思ったほうが良い。
(3)システム手数料(2%)
各社オンラインシステムを使用しているため、システムコストの分担金と思えばいい。
上記(2)の販売手数料と一緒になっている場合もある。
(4)チケット用紙代(10円50銭〜31円50銭)
販売したチケットや、原券印刷したチケット1枚についてかかる。これは各社がそれぞれ用意したチケット用紙を使用した場合に限られ、特殊なチケット台紙を製作した場合は別に見積もられる。また、社によっては、原券印刷にもっと高額を請求してくる場合がある。それは、もともとチケット印刷が目的である場合が多い。
・「登録手数料」と「チケット用紙代」は、販売実績と力関係で交渉が出来ます。しかし、「販売手数料」と「システム手数料」も交渉したとして、トータル10%で関係を維持するのが最善でしょう。告知や、その他の票券管理で無理が利いたりします。営業担当者が社内で窮地に落ちないように配慮することが、結果的にこちらにも利益になります。
・交渉には、販売実績がものを言います。販売が伸びてきていることや、年間の興行数も増えていること、年間チケット売上が1億円以上になることなどが、交渉の材料となります。
・一社に対しての「独占販売権」を、手数料の減額と引き換えに与えてはいけません。各社一長一短があり、全てに優れた会社はありません。もし、チケット販売会社の店舗が1店も無い地方で試合があった場合、「独占販売権」を渡してしまうと満足のゆく販売は望めなくなります。
3. 営業担当者と密なコミュニケーション
・各社営業担当者と販売計画について詳細に検討しましょう。まかせっきりにしてはいけません。営業担当者は、担当を何社も抱えています。任せて黙っていると、必ず後回しにされてしまいます。各社営業担当者から、どのような販売計画を持ってやろうとしているのか、詳細に提案させましょう。そして、その進捗をチェックして、少なくても1週間に1度は連絡を取るようにします。
・販売週報によって販売状況が分かりますが、臨時の告知が出た時などには、2〜3日後に必ず販売状況を確認して営業担当者に分析を依頼しましょう。
・営業担当者は、他のチームや団体の情報もたくさん持っています。いろいろな話をしてゆく中で、そのようなことも教えてくれるはずです。そのような関係性を作ることも大事です。
・このようなコミュニケーションを続けて、営業担当者に自分のチームや団体を好きになってもらい、告知などの面で融通を利けるようにしてゆくことも出来ると思います。営業担当者は、自分がかかわったチームが段々売れ出したり、注目されたりするとプロ根性を発揮して更に頑張ろうとします。このような関係性が出来れば、良い循環が回り始めます。
4. あとがき
今回は、「オンライン販売」のノウハウをまとめてみました。細かなことはもっとありますが、大事なことを述べさせていただきました。
次回は、「販売の方法」についてまとめてみましょう。それでは、お楽しみに。
【第4回 完】
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