スポーツイベントにおけるチケット販売のノウハウ(その5)
今回も前回と同様にチケット販売の具体的なノウハウをお話いたします。テーマは、「チケット発売」についてお話します。
1. 「自由席発売」と「指定席発売」の違い
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(1)「自由席」を発売すると言うことは、どのようなことか。
・一般的に人気のイベントではない。
・価格も安価であることが多い。
(2)「指定席」を発売すると言うことは、どのようなことか。
・一般大衆が価値を認識しているイベントである。
・席種も複数あり、チケットの価格も3,000〜10,000円ほどになる。
(3)「自由席」の販売で気をつけたいこと。
・「自由席販売」の場合、「発売日」はさほど重要な要素では無い。なぜなら、先を争ってチケットを購入しようとする顧客は無いと言って良い。上記のように、一般的に人気のイベントではないから。
・告知の方法も、発売日に焦点をあてて告知をするのではなく、イベントが近づくにつれて告知量を増やして訴求を図ったほうが効率は良い。なぜなら、イベントが近づいたことを知って、また、ほかの観戦予定者からの口コミによって、購入意欲が増す傾向にあるから。
(4)「指定席」の販売で気をつけたいこと。
・「指定席」販売は、「発売日」こそ重要な要素である。なぜなら、一般大衆が価値を認識しているイベントであれば、発売日に良い席を取りたいために先を争って購入しようとするから。
・よって、良い席から売れてゆく傾向がある。バブルが崩壊した直後から、イベントのチケットは安い席から売れていったが、昨今は一番高い席と一番安い席から売れ出し、中間の価格の席が残る傾向にある。
これらの事実から、席種別の席数や、告知の時期に関しては以下のことが言える。
・席種別の席数は
1) 一番安い席はあまり多くの席数を造らない。
2) 一番高い席を出来るだけ多く造る。
3) 中間価格の席種が、(一番安い席数と一番高い席数に比べて)大量の席数となると完売するのに時間がかかるため、どうしても席数が多くなる場合は、更に二つに席種を分けたほうが良い。
・告知の時期は、発売の前に集中するようにする。発売初日に完売するような超人気のイベントを除き、人気のあるイベントでも発売日から2〜3日すると売れなくなる。その後、イベントが近づくにつれて再びチケットが売れ出すのがパターンである。もし、チケット販売からイベント開始まで3ヶ月以上日にちがあるのなら、一旦1ヶ月ほどで第1次販売を終了し、1〜2週間空けて第二次販売等を行う。
その際に重要なことは、
1) それぞれの販売日前に必ず告知を出すこと。
2) 第2次販売以降の販売も、良い席を必ず最初から確保して用意しておくこと。これが誘い水となる。
2. 告知の種類
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(1)一般に「告知」と言っても以下の4つに分けられる。
1) 主催者が有償でメディアに載せる広告。
2) 主催者が発行する公報資料を利用して、各報道機関が作成した記事。
3) チケット販売会社がチケット販売促進のために行なう行為。
4) 主催者が印刷する「チラシ」「ポスター」。
(2)それぞれの特徴
1) 主催者が有償でメディアに載せる広告。
・チケット販売日直前の告知には、必ず主催者が広告を出したほうが良い。なぜなら、その他の告知は告知される日を主催者が決めることが出来ないから。このタイミングがずれたら、顧客とのトラブルが発生する。
・また、「他の告知がまったく出ない場合」「急遽、主催者からお知らせが有る場合」等、広告で無いと告知が出来ない場合。
2) 主催者が発行する公報資料を利用して、各報道機関が作成した記事。
・この場合、掲載される日は各媒体によってバラバラとなる。
新聞や放送局は、広報資料が配布された当日か翌日。出版社などについては、週刊
誌は翌週か二週目、月刊誌であれば翌月以降となる。
・掲載内容も、各報道機関の記事となり注文などは効かない。
3) チケット販売会社がチケット販売促進のために行なう行為。
・イベントの告知は、各チケット販売会社ともインターネット上のHPを充実させて告知展開を行なっている。
・「情報誌ぴあ」は昔ほど購入部数が伸びておらず、告知の役割はだんだんインターネットに変わっている。
・ローソンの店頭に置かれている情報誌は、部数も少なく入荷するとすぐに無くなることが多い。告知はやはりインターネットが主流。
4) 主催者が印刷する「チラシ」「ポスター」。
・各チケット販売会社の店舗が、コンビニエンスストア(CVS)が多くなっていることで、「チラシ」「ポスター」が貼れないことが多くなった。CVSは、外から内側が見渡せる割合が決まっているため、ガラス窓にポスターやチラシを貼ることは出来ない。また、CVS以外の店舗を持つチケットぴあは、ポスター・チラシを各店舗に配布するが、その量はすさまじくどれも一週間で貼りかえられる。とても有効な告知とは言えなくなってきている。
(3)告知の注意点
1) 一番有効な告知は、主催者が有償でメディアに載せる広告。今も昔も変わらない。チケット販売の告知は必ず主催者が広告として行う。
2) 報道機関の記事としての告知は、何時掲載されるものか詳しく調べることが大切。出来るだけ報道機関の記事はイベント開始直後に出るようにしたほうが口コミのような効果を出す。
3) チケット販売会社のHP上で、良い写真を使って出来るだけ長期間載せてもらうことを、営業担当を通じて依頼する。
4) 「チラシ」「ポスター」は、大量に作らない。最小限度でよい。
3. 先行販売
(1)先行販売の種類
「先行販売」とは、一般販売の前に行われる特定の限られた人々に対する販売のこと。主に以下の3種類がある。
1) 関係者販売としての先行販売
2) 主催者の会員に対しての先行販売
3) ある一定の団体に対しての先行販売
(2)「先行販売」は権利商売に通じる
一般大衆が価値を認識しているイベントであれば、それを先行販売することを「権利」と捉え、主催者がそれを活用することができる。
・上記1)の関係者販売は、協会・競技者・スポンサーの主催者と関係の深い人々に対するもの。
・上記2)の主催者の会員は、文字通り主催者が管理する会員に対するもの。
・上記3)が、権利商売に通じる。なぜなら、人気のイベントが前提では有るが、
1) チケット販売会社の持つ会員に対して先行販売の権利を販売する。
2) チケット販売会社1社に対して独占先行販売の権利を販売する。
3) 例えばデパート友の会やカード会社などに先行販売の権利を販売する等。
4. あとがき
今回は、「チケット販売」に焦点を当て、ノウハウをまとめてみました。このチケット販売のところが一番の「腕の見せどころ」です。
次回は、いよいよ最終回です。今までご紹介した大切なところをまとめてみましょう。それでは、お楽しみに。
【第5回 完】
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