ボールゲームの組織論 ジャパンの強化とリーグの活性化(その3)
本稿では、ナショナルチーム編成や強化活動を円滑に進めるために、国内競技団体(NF)が組織として構築すべき環境について論じたい。
1.日本代表チームは強くなければならない
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日本ラグビー協会副会長(専務理事)の真下氏は、「日本代表チームが強くならなければ、国際的認知度もあがらず国際交流も促進されない(対等な付き合いができない)。国内におけるラグビーの人気もあがらない(普及しない)。観客も増えない(収益はあがらない)。そして2005年から進めているラグビーワールドカップ日本招致を成功させることも厳しい」とした上で、「日本ラグビー発展の鍵は、すべて、ジャパン(日本代表チーム)が強くなることにある」と語っている。つまり、日本代表チームの成績が、日本ラグビーの発展に大きな影響を与えることを極めて強い口調で指摘している。
本稿のテーマは、国内の競技団体が組織として行うべきマネジメントについて、いくつかの視点から検討を加えるものであるが、前述した、真下氏の考えは、競技団体内において共通認識化しておくべき重要な視点のひとつであると考える。
2.年間スケジュールの見直し
しかし、代表チームの強化活動をすべてにおいて優先することは簡単なことではない。中でも特に「代表チームの編成」については、国内外のリーグと契約を結んだトップ選手を集め、一定期間拘束するため、リーグ各チームとのコミュニケーションも含めた編成システムを十分に整備しておく必要がある。この点に関して前稿では、「規約」など法的フレームのあり方やその重要性について述べたが、これだけでは不十分である。「最強の日本代表チーム」を編成するためは、組織として構築しておかなければならないさまざまな要件があるが、ここでは「競技団体全体の年間スケジュール」をとりあげ、さらに、その作成にあたっての今日的課題などについて検討を加えたい。
ここでいうスケジュールとは、日本代表の活動を含めた国内の「年間活動試合日程」を意味している。これを作成する場合には、日本代表チームの活動を最優先させることは当然のことであるが、その際、日本代表チームの活動と代表チームに多数の選手を輩出する可能性のあるリーグの公式試合を競合させないことが基本となる。
しかし、日本代表チームの国際大会は、強化試合、オリンピックやアジア大会、またその予選大会、など、ほとんどの競技団体において年々増加している。さらに、国際競技力向上事業を推進する上において見逃せないA代表やジュニア代表といった次代を担う若手の強化活動も増加しており、これらの強化活動に該当するトップ選手を抱えるリーグ各チームは、中心選手の代表チームへの派遣が頻繁に起こるため、自チームの強化活動に大きな影響が生じている。したがって、日本代表チームも含めて、協会(連盟)傘下にあるすべてのチーム関係者が満足するようなスケジュールを提示することは、気の遠くなるほど困難な作業であると言えるだろう。
3.抜本的な年間スケジュールの見直しの時代
年間スケジュールの作成を行う際に必要となるポイントは、国内各チームが日本代表チームへ所属選手を派遣しやすいように、試合や合宿などの日程が競合しないように配慮するだけではない。スケジューリングにあたっては、この他、メディア露出あるいは観客動員などの観点から、他のメジャー競技の試合開催時期(日時)と重ならないように配慮することもポイントとなる。
また、国内外の試合数の増加は、トップ選手やの公式試合出場回数の増加に繋がっており、休息の質、量をともに低下させる原因となっている。このため、選手個々のコンディショニングに対しての配慮も必要となる。加えて、過密スケジュールは、トップレフリー(審判)のコンディションの低下や、ゲーム割り当てにも影響を及ぼし、レフリングの質の低下も招く恐れもある。
以上述べてきたような状況から、年間スケジュールを作成する際に、パッチワーク的な手法では、もはや、どうにもならないところまで来ていることは明らかであり、これまで慣例的に固定化していた国内のリーグや試合日程も含め、俯瞰した視点から抜本的に見直すことが必要となっている。このことは、多くの競技団体において共通した課題であるとも思われる。
競技団体全体の年間スケジュールは、日本代表の強化活動やトップ選手のコンディショニングに大きな影響を及ぼすだけではなく、普及や財源確保にも極めて大きな影響を与えることを、競技団体は組織として認識し、組織としての対処を検討すべきである。そして、このマネジメントは、極めて高い専門性が要求される仕事であることも、併せて認識する必要がある。
表1 日本ラグビー協会の年間スケジュール(2007年度) | |||||||||
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