「2008北京オリンピックハンドボール競技アジア予選再試合」のチケッティング

[報告]

 <全2回>

その1

発売まで2週間の出来事


 2008年、新年明けてすぐハンドボールアジア予選再試合が、日本で開催されることに決定した。1月10日、すべてはこの日から怒涛のようにスタートしたのである。

 日本ハンドボール協会では、「今回のアジア予選再試合のチケット販売について、協力をお願いしたい。」ということであった。私は、日本トップリーグ連携機構でチケッティングのアドバイザーとしてコラムを書いていることもあり、その所属協会である日本ハンドボール協会に対して元々協力したかったから、直ぐに「是非、やらせてもらいたい。」と即答した。

事前の確認


 1月12日(土)2時間ほど協会の意向をお聞きし、チケット販売の実務をお互いに確認した。

この時点で確認したことは、

(1)正式な大会名が未決定。
(2)参加国が、日本、韓国、以外決定していない。
(3)試合日程が決まっていない。
(4)アリーナ席を仮設で造るが詳細は決まっていない。


このことから、
(5)チケットの発売日は1月17日までに①〜④が決まれば、1月20日日曜日を予定。
(6)指定席は時間が無くて難しいから、エリア指定席(ブロック内自由)にする。


以上のことであった。


今回のチケット販売で気を付けなければならないこと

(1)社会的(大衆的)に注目されている大会であること。
(2)販売から大会まで時間が無いこと。
(3)未決定事項が多い中で販売準備を行なわなければならないこと。


販売場所の選択


 販売委託会社について一般的には、「チケットぴあ」「ローソンチケット」「イープラス」「CN21」の4社がある。

 今回の大会において私は、「チケットぴあ」と「ローソンチケット」で販売してもらうことに決定した。その理由は以下の通りである。

(1)代々木第一体育館の1万人のキャパは、2社で販売しても完売できる数量である。4社で販売するのは、効率的が悪い。
(2)「イープラス」は、今回販売期間が短い為、強みである登録会員に告知することやチケット郵送ができない。
(3)ハンドボールの大会チケットは今まで「チケットぴあ」だけで販売していた。しかし、今回の大会は全国の人々がチケットを買おうとするから、店舗が無い地域がある「チケットぴあ」だけだと駄目。
(4)「CN21」は、全国的な店舗数が少なく、告知力も弱い。
(5)「ローソンチケット」は、全国にコンビニエンスローソンがある。


以上の理由である。


発売日の設定


 チケット販売は、大会の5W1Hがそろわなかったら発売は出来ない。1/12に確認した内容は結局1/17になっても未決定のままであったため、発売日を再検討することにした。「チケットぴあ」「ローソンチケット」とも2日で入力して20日から販売する体制を取ってくれていたが、一旦その体制を外した。

両社とも、今回の大会が社会的に注目されている大会であることを十分に理解して、通常では一週間から10日間必要な入力期間と社内調整機関を、2日間という有り得ない体制を敷いてくれた。

 延期せざるを得なかった発売日は、入力体制の再構築や連絡の徹底を考えると25日金曜日か26日土曜日と言うのが私の見解だった。

その理由は、

(1)27日日曜日は、29・30日の大会まで2日しかなく完売できない場合も有りえる、販売期間が短すぎる。
(2)26日土曜日発売は、きれいに一斉発売できるが集中する危険性がある。しかし、2日間である程度販売は完了すると見込んだ。
(3)25日金曜日は、給料日でもあり平日だから販売が分散されるし、販売期間が一番長く取れる。
(4)24日までは、入力体制が整わないのとコンビニエンスストアへの連絡が行き届かないためにNGである。


以上である。


 そして、1/19に協会関係者と大会運営関係者が一同に集まり、現状の確認と今後の進行について確認しあった。

この会議での決定事項と確認事項は、

(1)参加国、日本、韓国。
(2)25日金曜日、チケット発売。「チケットぴあ」「ローソンチケット」で発売。
(3)大会試合日、女子29日、男子30日。
(4)大会開始時間、19:20。会場時間、17時。
(5)完売しても当日券販売を行う事。


まだ未決定事項は多かったが、方向性が確認できたため仮定で入力作業に入ることができた。


発売席数の決定


 21日月曜日から「チケットぴあ」「ローソンチケット」に19日に確認した新しい情報を基に入力作業に入ってもらった。未決定の事項については仮定で入力してもらい、決定時に変更することにした。

 しかし、このやり方は一般的には大変危険なことだ。なぜなら、端末に一旦入力すると社内的に情報が入力した内容で関係部署に流れるからだ。後で変更したからといって、それが正しく全員に伝わるとは思えない。通常の販売では、興行元と委託販売先、お店とお客様との二重のトラブルの元になるから絶対避けたいことだ。

 でも、今回はどうしようもない。「チケットぴあ」「ローソンチケット」とも、注目されている大会だからこそ暫定情報であることが行き渡り、皆が気をつけて対応してくれたことがミス無く販売できた要因だ。

 最後に残ったのが、販売枚数の確定だった。会場の代々木第一体育館は、既存の席が約9千席あり、加えてアリーナ部分に仮設で1千席造る事になり合計1万席となった。この仮設部分のサイドライン側に造られる一番高い「アリーナS席」の段数が問題になった。当初は8段と計画していたが、アリーナの床と1階スタンドの高さまでは3メートルを切る程しかなく、8段(約480席)にするとスタンド席の1〜3列ぐらいまで見切りとなる可能性が出てきた。影響なくするには半分の4段(約240席)にするということで、座席数がこれで半分に減った。その分、ゴール裏の「アリーナA席」を増やすことになった。

 この変更が、24日午後の全体会議で決まり、明日の発売日にはその日の午後5時までに両社に配券枚数を伝えなければならなかったので、急ぎ計算し直してギリギリ午後5時両社にFAXを流すことができた。

 仮設会場設営に関してこのような変更は、しょっちゅう行なわれる。チケット販売担当者は会場設営の管理者と直接パイプを持って、何か座席の増減の変更が入ったら直ぐに連絡をもらうようにしておく事が重要だ。今回は、指定席で無く自由席だったから良かったが、指定席の場合に発売日直前に変更となったら、販売できないこともある。


幸運の連続


 何も決まっていない中から、2週間でチケット販売できたことは普通有り得ない。冒頭でも書いてあるとおり、チケット販売は5W1Hすべて整わないと販売できない。それを2週間でできたことは、協会はじめ関係各社の並々ならぬ努力の結果である。

そして、この大会は大衆が味方して、機運が後押ししたと私は感じている。
 次回は、発売日から大会終了まで報告する。

写真提供:財団法人 日本ハンドボール協会【その1完】


オフィスOsanai代表

[会社所在地]

〒225-0021

神奈川県横浜市青葉区すすき野2-4-11-507

045-903-9112

[経歴]

1984年 3月 早稲田大学社会科学部卒業

4月 ぴあ株式会社入社 経理部勤務の後、チケット事業本部勤務

98年長野オリンピック推進室長、02年サッカーワールドカップ事業部長等を歴任

2006年 2月 オフィスOsanai設立。
特にイベントのチケッティングに関する問題検証、解決方法の提案、計画の策定などコンサルティング業務、及びチケット販売計画策定、オペレーション管理を行う。