「団体ボールゲームの魅力」

 現代はコミュニケーションの時代だとよくいわれます。しかし、ネット社会の発達が、かえって人間同士の本当のコミュニケーションを阻害している、という側面も見られます。机を並べる隣同士が、直接会話することなく、メールでやりとりをするなどということは、私には不思議に思えて仕方がありません。相手の息遣いや表情がわかるようなコミュニケーションこそが、人間本来の意思の疎通ではないでしょうか。

 スポーツの中でも団体ボールゲームは一人の力だけでは勝つことができません。また、エース級の選手をいくらそろえたとしても、試合に勝てないこともあります。チームメイトがお互いに尊敬しあい、心を一つにして試合に臨むことで、良い結果が生まれるものだと思います。そんな素晴らしいコミュニケーション力を「ボールゲーム」は持っています。

仲間とともに苦しい練習に耐え、試合に臨み、力を合わせて戦う。そして結果を共有する。このように素晴らしいスポーツの魅力を子どもたちに伝えることが、私たちスポーツ人の責任と役割だと思っています。

スポーツを通した人間同士の連携は子どもたちの真のコミュニケーションを促進します。

「いじめ」や「ニート」、「引きこもり」といった、現代の社会問題にも、スポーツは解決の手段を持っていると思います。そんな子どもたちを、一人でも多く、スポーツの仲間

に誘って、楽しい時間を共有してもらう。トップレベルの選手達のプレイを直接に見て、感動を体験してもらう。そういった機会を作ってゆくことが、スポーツの発信する社会貢献の1つではないでしょうか。

平成20年2月14日 東京新聞夕刊東京新聞夕刊コラム「放射線」より転載