「基礎体力」

 競技力向上の基本は「心技体」の養成である、といわれます。最高の選手たるもの、心も技もそして体力も、世界の最高水準にあるべきだという意味でしょうが、私はあえて『体技心』であるべきだと考えています。
 スポーツ、特に球技では、ジュニアのころから国際レベルの選手と比べても遜色のない技術を体得している選手がいます。
 しかし、体の小さい日本人が、国際舞台で長時間の試合や長丁場の選手権などを戦い抜くためには、基礎体力が必要です。強靭な体力がなくては、外国人選手と互角の戦いができませんし、精神的にも高いレベルの緊張を維持できません。
 ソウル五輪ハンドボールで金メダルを獲得した韓国女子チームは、徹底的な体力強化を行いました。しかも、各競技の代表選手の中でも常にトップの基礎体力を有していたそうです。世界の頂点に立ったのは、基礎体力の強化のたまものと言ってもいいでしょう。
 日本選手が世界上位の成績を残すには、強靭な体力と精神力が必要とされています。厳しく、つらい基礎体力トレーニングをする中で、何ものにも耐えうる精神力も併せて醸成され、これが大きな自信にもつながっていくことだと思います。

平成20年4月10日 東京新聞夕刊コラム「放射線」より転載