「近ごろの若者」

 「近ごろの若者は…」という言葉は、若い人たちの「いたらなさ」を、大人が嘆く慣用句として昔から使われてきました。かくいう私も、数十年前はハンドボールの選手として、当時の指導者から「近ごろの若者は…」といわれた一人でした。
 いつの世もファッションや先端の流行を追いかけるのは、若者のならいであることに変わりはありませんし、若さゆえの未熟は当たり前のことです。
 五輪など国際大会に出場する選手の大半が20歳代の若者です。スポーツの能力が世界的レベルにあり、日夜、厳しい練習に耐えるといった環境に身をおいていますが、その素顔はごく普通の若者で、社会の中では「近ごろの若者」なのです。
 アトランタ五輪の時に日本選手団は、金メダル3個、メダル総数14個と低迷し、その時には「近ごろの若い選手たちは…」という言葉がささやかれました。しかし、8年後のアテネ五輪で、金メダル16個、メダル総数37個という史上最高の成績を収めたのも、近ごろの若い選手たちだったのです。
 問題は指導者が若い選手たちを、どのように導いてゆくかです。選手に愛情を注ぎ、「見つけ」「育て」「生かす」ことで「近ごろの若者たち」は大きく力を発揮すると信じています。

※平成20年5月15日 東京新聞夕刊コラム「放射線」より転載