「国籍問題」

 近年、世界はボーダーレス化が進み、スポーツ界でも世界の舞台でプレーをする選手が増えています。野球の松井秀喜選手やイチロー選手、サッカーの中村俊輔選手などの活躍は、日本人として誇らしいと思います。
 世界各国で、さまざまな競技で活躍する日本選手が増えることは、国際競技力を向上させるだけでなく、スポーツ界の国際化にも大きく貢献すると信じています。
 一方でスポーツ界のボーダーレス化は、別の問題も引き起こしています。それは国籍の問題です。国際大会に出るために、より出やすい国の国籍を取得したり、いろいろな国を渡り歩く選手も現れています。また、財力に任せて、有望な選手を獲得し、国籍を与えたりする国も見られます。
 もちろん、選手自身がその国の人間になりたいという意志で、国籍を取得することにはうなずけますし、そうした選手に対しては、国民の多くが応援するでしょう。
 しかし、オリンピックや国際大会に出るだけの目的で、簡単に国籍を移し、大会が終わると、また別の国の人間になったり、という風潮には疑問を感じます。
 スポーツはルールを守って、正々堂々と戦うところに真の価値があると思います。自分の国に誇りをもち、代表として力いっぱい戦うという「ナショナリズム」があってこそ、「インターナショナリズム」が成立するのではないでしょうか。

※平成20年5月29日 東京新聞夕刊コラム「放射線」より転載