アスリートの食事学 Vol.5

2008/10/27




河谷 彰子



肉・魚どっちが良いの?

 肉と魚はどちらが良いのですか?とよく聞かれます。
 たんぱく質は、勝てるアスリートを目指すために、背を伸ばすため、トレーニング後に傷ついた筋肉を修復するため、強い骨を作るためにも大切な栄養素です。
 では、何を食べるのが一番良いのか?
 ここに隠されているキーワードは、“アミノ酸スコア”です。アミノ酸スコアとは、食品たんぱく質の栄養価を示す指標であり、9種類の必須アミノ酸が、どれだけバランスよく含まれているかを示しています。

 よく9枚の木枠でできた桶に例えて説明されます。
 桶に水を入れるとき、どこか1枚の木枠が短いと、そこから水がこぼれてしまいますよね。
 木枠の一つが短い(=必須アミノ酸の一つが少ない)と、水がたまらない(アミノ酸スコア低い)というわけです。
 そしてアミノ酸スコアの低い食品ばかり食べていると、筋肉が思うようにつかない・勝てる身体にならないということです。
 つまり、
 アミノ酸スコアが高い=良質のたんぱく質である=体内で効率よく利用されるたんぱく質ということになります。

アミノ酸スコア100の代表食品は、


豚ロース(脂身なし)
鶏胸肉
鶏レバー
アジ
サケ
牛乳
プロセスチーズ
などがあります。



ということは、肉も魚も、筋肉の付きやすさから言うと同じように良いということです。
では、アミノ酸スコアの高い同じ食材のみ食べていれば良いということでしょうか?
いいえ、そうではありません。
精白米のアミノ酸スコアは65ですが、納豆と組み合わせることで85になります。
色々な食品を組み合わせると、必須アミノ酸を補い合い、アミノ酸スコアを高くすることになります。
魚は全く食べずに、肉だけしか食べないということは、栄養的にも偏りが出ることになるでしょう。
別の観点から説明してみましょう。
肉や魚のエネルギー量やたんぱく質量から見てみましょう。



100g当たり 部位名 エネルギー たんぱく質 脂質
輸入牛肉
ヒレ 133kcal 20.5g 4.8g 2.8mg
もも 182kcal 21.2g 9.6g 1.0mg
ばら 371kcal 14.4g 32.9g 1.5mg
サーロイン 298kcal 17.4g 23.7g 1.4mg
大型種肉
ヒレ 115kcal 22.8g 1.9g 1.1mg
もも 183kcal 20.5g 10.2g 0.7mg
ばら 386kcal 14.2g 34.6g 0.6mg
ロース 263kcal 19.3g 19.2g 0.3mg
若鶏
ささみ 105kcal 23.0g 0.8g 0.2mg
胸肉(皮あり) 191kcal 19.5g 11.6g 0.3mg
胸肉(皮なし) 108kcal 22.3g 1.5g 0.2mg
手羽 211kcal 17.5g 14.6g 0.5mg
もも 200kcal 16.2g 14g 0.4mg
黒マグロ 赤身 125kcal 26.4g 1.4g 1.1mg
黒マグロ 脂身 344kcal 20.1g 27.5g 1.6mg
ツナ缶 水煮 71kcal 16.0g 0.7g 0.6mg
ツナ缶 油漬け 288kcal 18.8g 23.6g 1.8mg
たら(まだら) 77kcal 17.6g 0.2g 0.2mg
アジ(まあじ) 121kcal 20.7g 3.5g 0.7mg
サバ 202kcal 20.7g 12.1g 1.7mg
サンマ 310kcal 18.5g 24.6g 1.4mg



 身体を絞りたい時は、エネルギー量や脂質が低いものを選んだ方が良いですし、貧血を予防したいというときは、鉄分が多いものを選んだら良いですね。
 肉を選ぶのか?魚を選ぶのか?どの部位を選ぶのか?どの種類の肉や魚を選ぶのが自分にあっているでしょう?
 あまり難しく考えずに、身体を絞りたい時は、肉であれば鶏肉を・魚であれば白身魚を選ぶと良いでしょう。さらに、脂肪が多い肉や魚は焼いて脂肪を落とせば良いのです。
 貧血を予防したい時は、肉であれば牛肉を・魚であれば赤身魚を選ぶと良いですよ。

河谷 彰子(かわたに あきこ)

株式会社レオックジャパン スポーツ事業担当 管理栄養士

〔経歴〕

1995年日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻卒業

1997年筑波大学大学院体育研究科コーチ学専攻卒業

1997〜2006年3月株式会社タラソシステムジャパン入社
(海水中・陸上での運動指導や栄養カウンセリング、食サービスの提案を実施)

2006年4月〜株式会社レオック関東入社 同年9月にレオックジャパンに転籍
横浜FC栄養アドバイザー・横浜FCユース栄養アドバイザー
その他、YMCA社会体育専門学校にてアスレチックトレーナー育成講座『スポーツ栄養学』講師・慶応大学非常勤講師・さくら整形外科クリニックにて栄養相談などを行なう。

以下のコラムを担当しております。