アスリートの食事学 Vol.6
2008/11/04
河谷 彰子
● 身長を伸ばすには、どうしたら良いの?
タイトルは食事に関するセミナーで、よくされる質問です。
今年4月6日発行の科学誌「ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)」では、“身長はほぼ完全に遺伝的要因で決定される。”としています。
しかし、可能性を十分に活かしていなければ、身長は十分に伸びないかもしれませんよね。
“寝る子は育つ”
寝ている間(特に23〜2時)に成長ホルモンが最も多く分泌され、ノンレム睡眠と呼ばれる深い睡眠中に分泌されます。この時間帯に睡眠をとっている必要があると言えそうですね。
さらに運動後にも成長ホルモンは多く分泌されます。成長ホルモンが分泌されるタイミングに合わせてたんぱく質やカルシウムの多い食品を食べるのも一つです。つまり、運動後と寝る前に牛乳やヨーグルト・小魚を食べることです。
“牛乳を飲むと背が伸びる”
身長を伸ばす食事のキーワードは、特にたんぱく質とカルシウムが不足なく摂取することです。不足すれば、伸びる可能性を十分に発揮することが出来なくなる、とも考えられます。
たんぱく質やカルシウムを多く含む食品は色々ありますが、両方たっぷりと入っている食品の代表として、牛乳があります。
牛乳について、巷では色々と言われていますが、やはり牛乳は、必要量は摂る必要があると考えます。下の表は、1日の摂取エネルギー量別に見た1日に必要な乳製品(牛乳やヨーグルト)の目安です。
目安となる 1日の 摂取エネルギー量 |
3000kcal | 3500kcal | 4000kcal | 4500kcal | 5000kcal | |||||
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コップ2杯 | コップ2.5杯 | コップ3杯 | コップ3.5杯 | コップ4杯 |
最近牛乳の変わりに豆乳を飲んでいるという方を耳にします。果たして、どうなのでしょうか?
豆乳も牛乳もアミノ酸スコア100の食品ですが、栄養成分を見てみると、違いがあります。
100g当たり | エネルギー (kcal) |
たんぱく質 (g) |
脂質 (g) |
カルシウム (mg) |
鉄 (mg) |
ビタミンA (μg) |
ビタミンB2 (mg) |
普通牛乳 | 67 | 3.3 | 3.8 | 110 | 0 | 38 | 0.15 |
低脂肪牛乳 | 46 | 3.8 | 1.0 | 130 | 0.1 | 13 | 0.18 |
無脂肪牛乳 | 33 | 3.4 | 0.1 | 100 | 0.1 | – | 0.15 |
豆乳 | 46 | 3.6 | 2.0 | 15 | 1.2 | 0 | 0.02 |
調整豆乳 | 64 | 3.2 | 3.6 | 31 | 1.2 | 0 | 0.02 |
表の通り、豆乳は牛乳の代わりにはなりません。身長という観点では、たんぱく質とカルシウムが多い牛乳の方が良いということになるわけです。
食事摂取基準の中で成人に必要なカルシウム量は、1日600mgです。運動をしていない方であれば、コップ1杯の牛乳を摂ることが理想です。牛乳コップ1杯には、約200mgのカルシウムを含むため、1日に必要なカルシウムの1/3を摂ることができます。
さらにアスリートでは、上記の約2倍のカルシウムが必要となります。
カルシウムを過不足なく摂るためには、表にある量の乳製品を摂って、不足分は小魚・豆製品・海藻・野菜などを摂取する必要があります。
乳製品なしでカルシウムを十分に摂取しようと思うと、なかなか大変なんですよ。
乳製品が十分に摂れていないと、丈夫な骨を作ることができないため、骨折や疲労骨折の割合を高めるとも考えられます。
では、豆乳は必要ないということなのでしょうか?
いいえ、そうとも言い切れません。
表からわかるように、豆乳は、たんぱく質と鉄分が多い食品です。貧血予防には、欠かせない食品とも言えます。
ただ、豆乳をにがりで固めたものが豆腐なので、豆乳よりも豆腐が良いとも言えます。
さらに、大豆から作っている納豆も良いです。ご飯もすすみますしね!
100g当たり | エネルギー (kcal) |
たんぱく質 (g) |
脂質 (g) |
カルシウム (mg) |
鉄 (mg) |
備考 |
木綿豆腐 | 72 | 6.6 | 4.2 | 120 | 0.9 | 1丁200〜300g |
絹ごし豆腐 | 56 | 4.9 | 3.0 | 43 | 0.8 | 〃 |
糸引き納豆 | 200 | 16.5 | 3.0 | 43 | 0.8 | 1パック 30〜50g |
牛乳を飲むと、お腹がゴロゴロするという方は、もしかしたら乳糖を分解する酵素である“ラクターゼ”を持っていないため、牛乳を消化することができないのかもしれません。その場合は、ヨーグルトや乳糖を除去した牛乳を摂取すれば良いでしょう。
一つ、気をつけないといけないことは、勝てる選手=身長が高いということではありません。
自分の強みを最大限に活かすために、瞬発力や持久力は、身長以上に大切なことになりますよね。
遺伝のせいにしては、いけませんよ。
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