アスリートの食事学 Vol.10

2008/12/01




河谷 彰子



試合前の食事はどうしたら良いの?


 試合前の食事はどうしたら良いのか、気になるところですよね。ポイントは3つ
試合中にお腹が空きすぎない ・ お腹が痛くならない ・ 動きやすい
当たり前のようですが、これを満たす食事というのはどのようなことが大切になってくるのでしょう?
種目に関わらず、筋肉中のグリコーゲン貯蔵量を増やしておくことが大切です。
つまり、スタミナアップの食事と似ているということです。(Vol.8 参照)
さらに、何に気をつけたら良いのでしょうか?

試合は前日から始まっている!



 試合前日の夕食は、いつもよりも炭水化物を多く食べるようにしましょう。
 摂取するエネルギーに対して、炭水化物の割合を多くすることがグリコーゲンの貯蔵量を高めるポイントになるため、揚げ物などの油・脂が多いものは避けるようにしましょう。
 試合に勝つ!とゲンを担いで、カツ丼は好ましくないのです。
 同じ丼ものなら、親子丼のほうが良いのです。

 単純にご飯の量を増やすのも良し、丼ものや炊き込みご飯やカレーなど、ご飯がたくさん食べられるもので工夫しても良いです。
 ごはんだけでは飽きてしまうという方には、パスタ料理を主食の一品として増やしても良いでしょう。
 さらに、肉じゃがやかぼちゃの煮つけなど、炭水化物の多い料理をおかずの一品とするのも良いでしょう。(次回Vol.11でご紹介する料理も良いですよ。)


(具体例)

<普段の夕飯編> <試合前の夕飯編>
玄米入りご飯(300g)
しらす干入り納豆・梅干し
玄米入りご飯(300g)
しらす干入り納豆・梅干し
澄し汁(木綿豆腐・みつば・竹バラ) すいとん汁
カボチャ・椎茸・人参・葱・すいとん
鶏のから揚げ(もも皮なし80g) 鶏の照り焼き(もも皮なし80g)
ブリ大根(ブリ50g) サラダ・ノンオイルドレッシング
(キュウリ・コーン・レタス・キャベツ・人参)
サラダ・フレンチドレッシング
(キュウリ・コーン・レタス・キャベツ・人参)
みたらし団子(1本)
ヨーグルト・はちみつ ヨーグルト・はちみつ
オレンジ 1個 オレンジ 1個





 ご飯などの主食の量を普段より多くするか、上記のようにかぼちゃや芋などの炭水化物のおかずを増やしたり、デザートに和菓子を加えるなどの工夫をすると比較的、炭水化物を無理なく増やすことができます。また、主菜を2/3程度に抑え、肉や魚は脂肪分の少ない部位を選び、揚げ物は避けると良いでしょう調味料なども脂肪の少ないものにするなど工夫すると良いです。

遅くとも試合開始3時間前までに食事を終わらせておく。

 ここで言う食事とは、しっかりとボリュームのある食事を指します。やはり、炭水化物を多く食べるようにしましょう。
 横浜FCで試合前に提供している食事は、おにぎり・力うどん・パスタ料理・スープ類一品・肉料理一品・サラダ・フルーツ・ヨーグルトです。これは、普段と比べても炭水化物がとっても多いメニュー構成になっています。
 9時スタートの試合であれば、6時に朝食を食べておかなければいけません。
 ただし普段朝食を食べていない場合“試合の日だからといって6時に食べても十分に消化することができない!”ということを忘れてはいけません。普段から朝食をしっかりと食べて、朝からしっかり消化できる胃腸を持っていることが大切なのです。
 13時スタートであれば、10時。この時間に朝食を食べるのではありません。普段と同じ時間に朝食を食べて、さらに試合3時間前に食べることが大切です。そうしないと、試合中にスタミナ切れを起こしてしまいます。

 何故、3時間なのでしょう?
 試合中には、胃の中での消化が終わっている状態が望ましいです。一番消化に時間がかかる食品は、脂肪や油を多く含むもの。これらの食品は消化に3時間以上かかってしまいます。消化が終わらないうちに走ってしまうと、お腹が痛くなってしまい、最高のパフォーマンスを発揮できなくなってしまいます。
 余談ですが、ダイエットの本によく“寝る3時間前までに夕飯を食べる。”とありますが、この3時間の根拠も同じです。身体を絞りたいと考えている時は、夕食に油・脂が多いものは控えることがポイントです。そうすることで、エネルギーの摂り過ぎを防ぐことができます。さらに、寝る時には胃での消化が終わっているため、ぐっすり寝ることがます。そして、朝はお腹が空いて目が覚め、しっかりと朝食を食べることができることにもつながります。

 1日に複数試合がある場合はどうしたら良いのでしょうか?
 試合と試合の間が詰まっていて、3時間を確保できないこともあるでしょう。そのような場合は、エネルギーを補給することが大切なため、ご飯・パン・麺類に代表される炭水化物を中心に食べれば良いです。
 エネルギー補給のために、エネルギー補給をうたったゼリーを口にすることは間違いではないのですが、決してそれだけが正解でないことを忘れないで欲しいですね。基本的にゼリーが登場するのは試合前30分と考えたら良いのではないでしょうか?
 それまでの時間帯であれば、バナナ・おにぎり・焼餅・サンドイッチ・パン・和菓子など脂肪が少なく、炭水化物が多いものを良くかんで食べれば良いでしょう。

 そして、その時の量がポイント。普段の食事の様子や胃腸の消化力は個人差がありますので、初めに書いた3つのポイントを参考に、普段のトレーニング時に自分に合った量を探してみましょう。

さて、いかがでしょうか?
まずは、次の試合に向けて皆さんは何から始めますか?
 ・朝食をしっかり食べますか?
 ・トレーニング前の補食で、自分に最適な食事量を探ってみますか?
 ・普段のご飯量を増やしますか?
勝てるアスリートは、常に何がベストかを考えていますよ。

河谷 彰子(かわたに あきこ)

株式会社レオックジャパン スポーツ事業担当 管理栄養士

〔経歴〕

1995年日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻卒業

1997年筑波大学大学院体育研究科コーチ学専攻卒業

1997〜2006年3月株式会社タラソシステムジャパン入社
(海水中・陸上での運動指導や栄養カウンセリング、食サービスの提案を実施)

2006年4月〜株式会社レオック関東入社 同年9月にレオックジャパンに転籍
横浜FC栄養アドバイザー・横浜FCユース栄養アドバイザー
その他、YMCA社会体育専門学校にてアスレチックトレーナー育成講座『スポーツ栄養学』講師・慶応大学非常勤講師・さくら整形外科クリニックにて栄養相談などを行なう。

以下のコラムを担当しております。