アスリートの食事学 Vol.12

2008/12/15




河谷 彰子



オフシーズンや身体を絞りたい時の極意!



 年末年始は、トレーニング量が普段よりも少なくなると共に、親戚や友人と会う機会も増えるとき。そうすると、食べたり飲んだりする機会も増えて、いつのまにやら体脂肪が増えてしまうなんてことがありますよね。
 年が明けて、トレーニングを再開したときには筋肉量がグッと減って、体脂肪はグッと増えてなんてことになると、通常のトレーニングペースに戻すまでに時間がかかってしまいます。そこで、何に気をつけたら良いのか?ちょっとした工夫が年始のスタートをスムーズにしますよ。

摂り過ぎ注意は、油と砂糖

 下の表は、1日の摂取エネルギー量別に見た油と砂糖の量です。
  (ちなみに、運動していない大人の目安は各大さじ1です。)



目安となる
1日のエネルギー量
3000kcal 3500kcal 4000kcal 4500kcal 5000kcal
油脂類
大さじ2 大さじ3 大さじ4 大さじ5 大さじ5
砂糖類
大さじ2 大さじ3 大さじ4 大さじ5 大さじ5



 油脂類に分類されるものには、バター・マーガリン・サラダ油・オリーブオイル・マヨネーズなどです。

 Vol.4で野菜をたくさん食べて欲しいということをお伝え致しましたが、毎食サラダにマヨネーズや油の入ったドレッシングをたっぷりかけたら、上記の量はあっという間に終わってしまうかもしれません。
 運動をしていない大人の場合、毎日あげ物が主菜として登場している場合、油の摂り過ぎになっている可能性が大です。

 砂糖類に分類されるものには、砂糖・はちみつ・ジャム・みりんなどです。疲れた時に、チョコレートが本当に必要でしょうか?水分補給と言って運動後にジュースを飲んでいて良いのでしょうか?
 “ 100%ジュースだから身体に良いでしょ?”と思っている方もいらっしゃるでしょう。
 でも、そうでしょうか?実は、エネルギー量や糖分量の観点からは同じです。
 これらのジュースには、ペットボトル1本分(500ml)に50g相当の砂糖が含まれています。100%ジュースには砂糖を加えていませんが、オレンジ1個からどの位の果汁が出てくるか想像してみてください。500mlの果汁を搾り出すのに、何個のオレンジを使用しているでしょう?そのオレンジの数を食べるのと、ジュースでグビッと飲んでしまうのでは、どちらのほうが食欲を満たすでしょう?
 もうお分かりですね。そのジュースが、水分補給のために飲んでいるのであれば、水やお茶で良いです。クエン酸やビタミンCを補給したいのであれば、今の季節ならミカンを持ち歩くのも一つです。持ち合わせが無いのであれば、ジュースをコップ一杯(200ml程度)飲んだり、小さなパックを購入するようにしたら良いですね。
 ジュースを飲みすぎて、食事が食べられなくなったら、きついトレーニングを身体に反映させることができず、勝てるアスリートにはなれませんよ。現在ジュースを飲み過ぎていると感じた方は、ジュースを水やお茶に変えて、ご飯の量を多くするだけで、食生活が随分変わりますよ。


オレンジジュース・コーラ 300cc ≒ 130kcal ⇒ 砂糖32.5g
ご飯130kcal ≒ おにぎり小1個



 ジュースは、腹持ちが悪いので、すぐにお腹が空いてしまいます。そこでまた砂糖や油が多いお菓子を食べてしまったら、栄養のバランスがさらに崩れてしまいます。

 さらに、体脂肪が最もつきやすい食べ物の組み合わせは、砂糖と油(脂)を多く含んでいる食品を一緒に食べることです。


ジュース200ml+スナック菓子80g
砂糖大さじ3弱油大さじ2強
シュークリーム100g
砂糖小さじ1油大さじ1強
ソフトクリーム120g
砂糖大さじ2弱油小さじ1弱
ドーナッツ50g
砂糖小さじ1強油大さじ
チョコレート10g
砂糖小さじ1.5油小さじ1強


 運動をしていない大人で脱メタボを考えている方も、オフに入ったアスリートで友人と会う機会が多いという方も、以下の組み合わせは気をつけたいですね。


甘い缶コーヒー185g + かきあげ大1つ
砂糖大さじ1.5油大さじ1
チョコレート10g + ピーナッツ30g
砂糖大さじ1.5油大さじ1.5
甘いお酒(梅酒)100g + フライドポテト80g
砂糖大さじ2強油大さじ1弱



 とくに、身体を動かさない夜に食べると、さらに体脂肪を増やしやすくしてしまいますよ。





“よく噛む”ことが、食欲を満たすポイント


 体重をコントロールしないといけない種目・時期や身体を絞りたい時の食事制限は、なかなか厳しく辛いものです。
 少しでもこの辛さを軽減する方法の1つに“よく噛む”ということがあります。
 満腹感が脳に伝わるまで約20分かかります。
 良くかまずに食べてしまうと、食欲が満たされないままに食事が終わってしまったり、お腹がいっぱいだと感じたときには食べすぎているということになってしまいます。
 
意識的に噛むことも大切ですが、歯ごたえのある食事内容にすることが良く噛む食事に変化させるポイントです。


例えば・・・
 ・料理に野菜などの固い食品を加える。
 ・一口サイズより大きめに切る。
 ・野菜は繊維にそって切る。

 などがあります。具体的には・・・
 ・主食:ご飯に玄米・雑穀・小豆・大豆など歯ごたえのあるものを加える。
 ・主菜:肉や魚をなるべく大きく皿に盛り、自分で切りながら食べることで食べるまでの時間をかせぐ。
 ・副菜:乾物を使ったり、ごぼう・レンコン・きのこなど食物繊維の多い野菜を取り入れる。
     サラダは切り刻まず、なるべく大きく切って噛む回数が増えるようにする。

 補足ですが、身体を絞りたい時は、シュガーレスの飴より、ガムが良いですね。噛むことで、多少の食欲を満たすことに貢献しますよ。





河谷 彰子(かわたに あきこ)

株式会社レオックジャパン スポーツ事業担当 管理栄養士

〔経歴〕

1995年日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻卒業

1997年筑波大学大学院体育研究科コーチ学専攻卒業

1997〜2006年3月株式会社タラソシステムジャパン入社
(海水中・陸上での運動指導や栄養カウンセリング、食サービスの提案を実施)

2006年4月〜株式会社レオック関東入社 同年9月にレオックジャパンに転籍
横浜FC栄養アドバイザー・横浜FCユース栄養アドバイザー
その他、YMCA社会体育専門学校にてアスレチックトレーナー育成講座『スポーツ栄養学』講師・慶応大学非常勤講師・さくら整形外科クリニックにて栄養相談などを行なう。

以下のコラムを担当しております。