アスリートの食事学 Vol.18

2009/02/02




河谷 彰子



たんぱく質が決めて!筋力アップの食事とは?


 瞬発力・筋力・筋量は、勝敗を決める1つの要素です。
 では、これらをアップさせる食事とは、どういうものでしょう?
 皆さんは、これらの能力を向上させるために、まず何をしますか?
 スタートダッシュ・ウエイトトレーニングなど、鍛えたい箇所の筋肉を積極的に使ったトレーニングですよね。次の日は、筋肉痛が起こっていることもあるでしょう。簡単に説明すると、この筋肉痛はトレーニングによって筋肉が傷ついている証拠です。上手に修復することができなければ、同じ負荷のトレーニングに負けない身体、つまり今よりも瞬発力・筋力・筋量をアップすることができません。
 これらの機能をアップするために大切なポイントは“いかに上手に傷ついた筋肉を修復するか”なのです。
 ポイントは
 ・各食事には、主菜を最低2品そろえる。
 ・成長ホルモンの分泌の多い時に合わせて、たんぱく質を摂る。

 の大きく2つです。



たんぱく質


肉類 魚類 卵類 大豆製品 乳製品



 たんぱく質を多く含む食品とは、主に主菜となるもの(肉・魚・卵・大豆製品)と乳製品です。
 Vol.1を参考に、朝食から5種類がそろっていないようであれば、まずはそこからそろえる必要があります。主菜が1品はあるという方は、2品そろえましょう。ここまでそろって、ようやくスタートラインです。今より主菜の量を増やすことが、まず大切です。
 下の表は、1日の摂取エネルギー量別に見た1日の主菜および乳製品量の目安です。

目安となる

1日の

摂取エネルギー
3000kcal 3500kcal 4000kcal 4500kcal 5000kcal


200g 250g 300g 350g 400g


2切 2切 3切 3切 4切


2個 3個 3個 4個 5個


乳製品
コップ2杯

(400cc)
コップ2.5杯

(500cc)
コップ3杯

(600cc)
コップ3.5杯

(700cc)
コップ4杯

(800cc)


 上記を参考に、この量を食べていないようであれば、まずはこの量を満たすことが大切です。満たしているようであれば、500kcal上の量に増やしてみると良いでしょう。
 Vol.2で、ご飯には意外にたんぱく質が多いというお話をしたように、ご飯量も合わせて確認することが大切です。主食と主菜の量、つまりたんぱく質と炭水化物が十分でないと、思うように筋力はアップしないのです。
 さて、具体的にはどのような食事をすると良いのでしょう?
 朝食を例に見てみましょう。


<和食の朝食(ご飯200gをベースにして)>

より

より

より

梅干し入おにぎり2個
(ご飯+梅干し)
エネルギー:343kcal
たんぱく質:5.2g
脂質:0.6g
卵かけご飯
(ご飯+卵1個)
エネルギー:415kcal
たんぱく質:11.5g
脂質:5.8g
卵納豆かけご飯
(ご飯+卵+納豆50g)
エネルギー:515kcal
たんぱく質:19.8g
脂質:10.8g
卵納豆かけご飯+ヨーグルト
(左記の卵納豆かけご飯
 +プレーンヨーグルト200g
 +ハチミツ10g)
エネルギー:668kcal
たんぱく質:27.0g
脂質:16.8g



<洋食の朝食(6枚切り食パン2枚(120g)をベースにして)>

より

より

より

6枚切食パン2枚
(パン+バター10g)
エネルギー:391kcal
たんぱく質:11.2g
脂質:13.4g
食パン+目玉焼き
(パン+バター+卵1個)
エネルギー:466kcal
たんぱく質:17.4g
脂質:18.5g
食パン+目玉焼き+ハム
(パン+バター+卵
 +ハム3枚45g)
エネルギー:555kcal
たんぱく質:24.8g
脂質:24.8g
食パン+目玉焼き
 +ハム+普通牛乳
(左記に+牛乳200g)
エネルギー:689kcal
たんぱく質:31.4g
脂質:32.4g





 単純に1日に必要なエネルギー量の1/3ずつを各食事で摂ろうと考えた場合、一食あたり1000kcal以上を食べないといけないという種目の方が多いでしょう。
 現在の主食と主菜は上記のうちどれですか?朝は忙しいので、手のかかる料理はなかなか難しいと言う方は、卵・納豆・ハム・乳製品などの手軽なものを朝食の定番食材として決めておくのも良いのではないでしょうか?朝食から5種類をそろえることは勿論ですが、まずは調理に手のかからない主菜を毎食2品以上そろえるようにしましょう。
 和食と洋食はどちらが良いのですか?とよく質問されます。
 基本的には、どちらでも良いですが、洋食で気をつけたいことは、脂質です。パンにバター・目玉焼きを作る時に油・・・としているうちに、エネルギー量は勿論のことですが、脂質が増えてしまいます。余計な体脂肪を増やしたくないと言う方は、テフロン加工のフライパンを使うことで油を使わずに目玉焼きを作ったり、パンの上に目玉焼きやチーズを乗せることで、バターを使わずに食べることができるなどの、ちょっとした工夫もあります。

 ちなみに腹持ちが良いのは、シリアルよりパン、パンよりご飯です。
 表を見て、そんなに卵を食べるの?と驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
 アスリートは卵の黄身を食べない!という話しを聞いたことがある方もいらっしゃるでしょうが、本当に避ける必要があるでしょうか?
 卵の大きさによりますが、卵の中身は約50g。白身と黄身の割合は7:3です。
これらに含まれる栄養を見てみると・・・。

エネルギー
kcal
たんぱく質
g
脂質
g
ビタミンA
μg
ビタミンB1
mg
ビタミンB2
mg
全卵 50g 76 6.2 5.2 75 0.03 0.22
卵黄 15g 58 2.5 5.0 72 0.03 0.08
卵白 35g 16 3.7 0 0.00 0.14
オリーブオイル 15g 138 0.0 15.0 3 0.00 0.00



 卵白にはたんぱく質やビタミンB1(疲労回復や神経の伝達に欠かせないビタミン)が多いですが、卵黄にはビタミンA(目に良く、風邪予防のビタミン)やビタミンB2(粘膜を正常に保ち、風邪予防に役立つ。不足すると口内炎ができやすい)を多く含みます。
 たしかに卵黄には卵白に比べて脂質が多いですが、その量はオリーブオイルと比較してもお分かりのように、随分と少ないです。つまり、卵黄を食べないようにするよりも揚げものを控えたり、調理の際に使用する油の量に気をつけたり、サラダに使用するドレッシングの種類をノンオイルのものにすることが優先順位が高いということになるのです。
 そのため、卵は白身も黄身も全て食べて良いのです。




成長ホルモンの分泌が多いとき


 骨作りや筋肉作りに成長ホルモンは欠かせませんが(Vol.6参照)、その分泌のタイミング(トレーニング後と睡眠中)に合わせて、たんぱく質を摂取することは大切になります。
 トレーニング後になるべく早くに食事を食べることが大切だという意味は筋力アップにも言えることなのです。すぐに食事をすることは理想ではありますが、そのような環境でなければ、家から持ってきたり、コンビニで購入したりすれば良いでしょう。おにぎり・サンドイッチ・牛乳・チーズ・・・。
 プロテインパウダーの優先順位は果たして高いでしょうか?成長ホルモンは3時間ほど続きますので、トレーニング後なるべく早くに食べて、仮眠など身体を休めておくことが大切です。
 就寝前であれば、ホットミルクも良いでしょう。睡眠に入って30分程度で、ノンレム睡眠(深い睡眠)に入りますが、その時、成長ホルモン分泌量は一日の中で最大となります。ここからの3時間ほどが、一日のうちで最も筋肉が作られている時間といえます。 十分な睡眠がとれていない方は、睡眠環境を整えることも大切な要素かもしれませんよね。




 ハードなトレーニングをしているのに、筋肉の修復に必要なたんぱく質が少なければ、筋力アップするどころかダウンしてしまいます。トレーニング効果を最大限に生かすため、勝てるアスリートを目指すためには現在の食事で何を工夫するか、もしくは改善する必要があるか、見つかりましたか?





河谷 彰子(かわたに あきこ)

株式会社レオックジャパン スポーツ事業担当 管理栄養士

〔経歴〕

1995年日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻卒業

1997年筑波大学大学院体育研究科コーチ学専攻卒業

1997〜2006年3月株式会社タラソシステムジャパン入社
(海水中・陸上での運動指導や栄養カウンセリング、食サービスの提案を実施)

2006年4月〜株式会社レオック関東入社 同年9月にレオックジャパンに転籍
横浜FC栄養アドバイザー・横浜FCユース栄養アドバイザー
その他、YMCA社会体育専門学校にてアスレチックトレーナー育成講座『スポーツ栄養学』講師・慶応大学非常勤講師・さくら整形外科クリニックにて栄養相談などを行なう。

以下のコラムを担当しております。