アスリートの食事学 Vol.25

2009/03/23




河谷 彰子



女子アスリート必見!生理が無いと大変なことになりますよ!!



 女性にとって生理は、体調のバロメータの一つでもあります。
 女性のアスリートの中でも、特に体脂肪率が低いことが高いパフォーマンスを発揮できると考えられる種目の中には無月経だったり、生理不順などの月経異常だというアスリートはいらっしゃいませんか?
 さらには、体重や体脂肪を落とそうとして、無理なダイエットをした結果、生理が止まっているというアスリートはいらっしゃいませんか?
 
生理が来なくて楽だ。”なんて簡単に思っているアスリートの方!!
 これは、とんでもない間違いです。
 勝てるアスリートを目指すために、さらに女性として、見逃してはいけない重大な問題です。



<無月経は、骨をもろくする。>



 閉経後の女性の健康問題として、骨粗鬆症があることをご存知の方も多いでしょう。閉経後に、骨塩量の保持に不可欠なエストロゲンの分泌が減少するため骨の密度が低くなり、スカスカになってしまう現象です。
 若い無月経のアスリートは、閉経を迎えている方とホルモンの分泌状態が同じであるため、年齢に関わらず中高年の方々と同じようなことが体内で起こっていると考えられます。つまり、骨粗鬆症へ向かっているということです。
 ホルモンの影響でカルシウムが骨からどんどん抜けていくため、たとえカルシウムを多く摂っても、骨の密度を上げることはできないという研究結果があります。つまり、無月経のアスリートは、疲労骨折が起こる可能性が高まるということにつながるのです。
 無月経を経験したことのある選手は、月経が回復しても骨密度の十分な回復は得られないという報告もあるくらいです。
 女性は20歳前後が骨密度のピークとなります。骨形成に特に大事な中学や高校の時期に無月経を経験するということは、とても深刻な問題です。
 この時期に、いかに骨密度を高くしておくかが、閉経を迎えた後に骨粗鬆症を避けられるかということにもつながるのです。




<排卵がリズミカルにされない。>



 長期間、無月経だと身体が排卵のリズムをとることができず、子どもが欲しいと思ったときに、排卵がされていないため子供を授かることができず不妊症にもつながります。
 生理不順だという場合でも、実は排卵をされていない形だけの生理という場合もあります。そのような場合は、基礎体温をつけて婦人科に相談に行きましょう。





<心当たりがある方は、食事とトレーニングを見直しましょう。>



 勝てるアスリートを目指すためにも、ハードなトレーニングとカロリー制限によって体脂肪を低くしておくことは大切ですが、無月経では上記のような弊害があります。そこで、高すぎない体脂肪率で最高のパフォーマンスを発揮する必要があるのです。一般的には17%を下回ると月経異常が起こる確率が上がると言われていますが、個人差がありますので、17%は一つの目安として、自分にとっての適正な体脂肪率を維持するようにしましょう。それには、食事量を増やす、トレーニング量や内容を見直す、もしくは両面から見直すようにしましょう。
 男性のコーチだと、踏み込みにくい問題と感じている方もいらっしゃるでしょう。
 学生であれば保健の先生に相談をしたり、コーチであれば、女性の先生から話してもらうと良いでしょう。この課題をフォローすることは、最高のパフォーマンスを発揮するためにも、女性としての将来を考える場合も大切なこととなります。

 トップアスリートは、この辺りにも気を遣って、食事をコントロールしていますよ。





河谷 彰子(かわたに あきこ)

株式会社レオックジャパン スポーツ事業担当 管理栄養士

〔経歴〕

1995年日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻卒業

1997年筑波大学大学院体育研究科コーチ学専攻卒業

1997〜2006年3月株式会社タラソシステムジャパン入社
(海水中・陸上での運動指導や栄養カウンセリング、食サービスの提案を実施)

2006年4月〜株式会社レオック関東入社 同年9月にレオックジャパンに転籍
横浜FC栄養アドバイザー・横浜FCユース栄養アドバイザー
その他、YMCA社会体育専門学校にてアスレチックトレーナー育成講座『スポーツ栄養学』講師・慶応大学非常勤講師・さくら整形外科クリニックにて栄養相談などを行なう。

以下のコラムを担当しております。