アスリートの食事学 Vol.46



2009/09/07




河谷 彰子



上手にそろえたい!調味料あれこれ


 お家の冷蔵庫や食品棚をチェックしてみましょう。皆さんは、どんな調味料をお持ちですか?

 塩・こしょう・醤油・ケチャップ・マヨネーズ・ドレッシング・味噌・めんつゆ・オイスターソース・焼肉のタレ・ソース・ナンプラー・スパイス類…
 使い切れなくて眠っている調味料はありませんか?
 
色々な調味料を持っている方と、料理はしないからほとんど持っていないという方といらっしゃるでしょう。料理好きで、毎日のように料理しているアスリートなら色々な種類をそろえても良いのですが、最低限必要で便利な調味料をおさえておけば、無駄も省けますね。
 勝てるアスリートを目指すため、特に運動量が多い種目の方は食事量を確保したいところ。外食が増えれば、それだけお金がかかってしまいます。簡単な料理をパパッと作ることができれば、とても役立ちますよ。美味しく作るためには、調味料を使いますよね。あまり料理を作らない方でも、今回お伝えするポイントを抑えておくと良いですよ。

1.塩・砂糖と、少量パックのこしょう・醤油・酒をそろえよう!

 ある選手から『油は、どの種類を買ったら良いですか?』という質問を受けたことがあります。私は『油の種類よりも大切なのは、少量のものを買うことです。』と答えました。

 油には、バターに代表される動物性の油とサラダ油やオリーブオイルに代表される植物性の油があります。一般的に、身体に良いのは植物性と言われています。しかし、古くなると油が酸化して発がん性物質が出来てしまうということも見逃せません。さらに、古かったり酸化した油は美味しくありません。
 一人暮らしで使用する量もあまり多くないのであれば、少量パックのものを選ぶことが一番大切なポイントとなります。油は、1種類あれば充分です。
 せっかく作った料理を少しでも美味しくいただくためには、調味料も同様だと考えます。塩・砂糖など、長期間おいても風味があまり変わらないものを除いては、料理をする習慣のない人は少々割高に感じても、少量ボトルや使いきりタイプのものを選ぶことを、まずはお勧めします。

 たま〜に料理するだけのアスリートなら、塩・こしょう・砂糖・醤油・酒など、基本の調味料5つをそろえておくだけで、ある程度の炒め物や煮物はOKです。
 さらに、和風・洋風・中華風などの顆粒状のだしがあれば、味に幅が広がります。

 みりんはいらないの?煮物には、必需品でしょ?と思われたかも知れません。
 そうです、みりんは酒+砂糖で代用できます。みりんの甘さは砂糖の1/3。レシピを参考に料理をする場合には、書かれているみりんと同量の酒に1/3量の砂糖をあわせて使うとみりんに近い味を出すことができます。


 少量しか使わない粉末状のスパイスや顆粒状のだしで気をつけたいのは、湿気。
 料理の際に湯気がモウモウとたっている上でパッパッと振ると、湿気がボトルの中にこもってしまい、カビの原因になりかねません。別の皿に取り分けてから使用するのがお勧めです。
 長い間使用していない場合は、カビが生えていないか?変色していないか?などを確認してから使用しましょう。


2.料理の順番、調味料の“さ・し・す・せ・そ”


 “さ・し・す・せ・そ”をご存知ですか?これは、砂糖・塩・酢・しょうゆ・味噌のことです。
 料理で複数の調味料を入れる際に、“さ・し・す・せ・そ”の順番で入れると上手に味付けできるとされています。

 “さ・し・す・せ・そ”は、調味料の分子が大きい順で、風味が飛びにくい順です。
 煮物には、基本的に“さ・せ”(砂糖・醤油)を使用しますが、醤油を先に入れてしまうと、後から入れた砂糖が上手にしみこんでいきません。
 これは、塩分は分子が小さくてすばやく素材に入り込みむため、分子量の大きい砂糖より先に加えてしまうと、砂糖が入り込むすき間が少なくなってしまい、甘みがつきづらくなってしまうからです。
 煮物を作る際には覚えておきたいポイントですね。


3.「○○のタレ」「○○の素」も便利!


 市販品に良くある「○○のタレ」「○○の素」ですが、○○に当てはまるお決まりの料理だけでなく、自由に使い方をアレンジしてみましょう。

 たとえば、焼肉のタレを皆さんは、どのように使っていますか?名前の通り、焼肉のタレで使っていることと思います。また、肉につけて焼いたり、野菜炒めの味付けにという方もいらっしゃるでしょう。このような調味料は、旨味が凝縮しているので、炊き込みご飯の味付けに使うこともできますし、少量のお酢やマヨネーズとあわせてドレッシングとして使用しても美味しいですよ。

 簡単で本格的な味を出したいときに便利な調味料は、中華ならオイスターソース、イタリアンならアンチョビペーストです。

 オイスターソースは、炒め物や中華風煮込みに少量加えるだけ。塩・こしょうで炒めた野菜も、オイスターソースをちょっと足すだけで、しっかりと本格派な中華のおかずになります。


 アンチョビペーストは、マヨネーズを合わせてゆでたジャガイモと和えたり、アサリのワイン蒸しなどに加えるのがお勧めです。もちろんパスタ料理に使うとグーンと本格イタリアンに近づきます。


4.便利なミックス調味料!


 ここまで読んで、料理は自分でしないしな〜と思っている、そこのアスリートの方!

 近くにコンビニがあったり、飲食店があるから、料理の技術は必要ないと感じている方もいらっしゃるでしょう。今まであまりやってないことというのは、それなりの動機がないと、なかなか行動に移せないものですよね。
 でも!!家にいて、ちょっとお腹が空いた時に簡単にできる技を知っていると便利ですよ。そのときにあると便利なのが、あらかじめ塩にスパイスやハーブがミックスされた調味料です。

 肉を焼くだけ・ジャガイモをレンジでチンしただけなど、とってもシンプルな料理にかけるだけで、塩味に複雑な美味しさが加わって、初心者でも大満足な料理の出来上がりです。

 料理の面白さは、食材の変化を自らしかけ、しかも食べることができる楽しみまでついていることだと私は感じます。こうでなくてはいけない!というルールは基本的に無いのです。色々チャレンジしてみて“あ〜ちょっと失敗。”“ん!これは最高!”なんて楽しんで欲しいなと思います。基本の調味料とプラスアルファの調味料を使って、チームメイトと一緒に料理を作ってみても楽しいのではないでしょうか?




河谷 彰子(かわたに あきこ)

株式会社レオックジャパン スポーツ事業担当 管理栄養士

〔経歴〕

1995年日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻卒業

1997年筑波大学大学院体育研究科コーチ学専攻卒業

1997〜2006年3月株式会社タラソシステムジャパン入社
(海水中・陸上での運動指導や栄養カウンセリング、食サービスの提案を実施)

2006年4月〜株式会社レオック関東入社 同年9月にレオックジャパンに転籍
横浜FC栄養アドバイザー・横浜FCユース栄養アドバイザー
その他、YMCA社会体育専門学校にてアスレチックトレーナー育成講座『スポーツ栄養学』講師・慶応大学非常勤講師・さくら整形外科クリニックにて栄養相談などを行なう。

以下のコラムを担当しております。