アスリートの食事学 Vol.48
2009/09/24
河谷 彰子
● ぐっすり眠って、すっきり起きよう!
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秋の夜長を、いかがお過ごしでしょうか?
夜更かしをしていませんか?何だか眠れないなんて方はいらっしゃいませんか?
睡眠は健康な身体づくりのためにも大切ですし、アスリートであればトレーニングで傷ついた身体を修復するため、さらには疲労回復のためにも大切な時間として考えたいところです。
睡眠不足になると、判断ミスをすることも多くなってしまうでしょう。
勝てるアスリートを目指し、質の高い睡眠のために、改めて見直してみませんか?
1.朝がつらいにどう対処する?
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平日は、学校・トレーニング・仕事など朝から予定があるから、頑張って起きるという方は多いでしょう。しかし、休日はどうでしょうか?
自己管理能力の高いアスリートは休日でも朝食をしっかり食べていますよ。つまり、いつもより起きる時間が多少遅くても、“朝”の時間帯に起きています。
何時に寝て、何時に起きるかというようなスケジュールは、試合や練習の日程によって変化してきますが、自分の基本パターンを決めておくことは大切なことです。それには眠りたいときに眠れて、すっきり目覚められる!というような快眠でありたいものです。
睡眠には季節性があると言われています。
真夏の時期に、年間で最も睡眠時間が短くなり、その後徐々に増え、11〜12月にかけて睡眠時間が少しずつ長くなる傾向にあるようです。“昔の人は、日の出と共に起きて、日の入りと共に寝ていた。”なんてことを言われたことはありませんか?
だからと言って冬の時期、ゆっくり起きても良いという事は無いですよね。
太陽の差し込まない状況で過ごすと、人の1日は約25時間であると聞いたことがあります。この1時間のズレを調整するのが光だそうです。つまり“太陽が出ている時間に合わせて人間は活動時間を調整し、眠る時間も増減させることができる”のです。
具体的にどのように自分で調整することができるのかを知っていれば、今よりも朝起きるのが楽になるかもしれませんよね。例えば、
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・ 朝はカーテンを開けることで太陽の光を部屋に取り込む。
・ 曇りや雨の日で太陽が出ていない朝は、部屋の電気をつける。
目覚ましが鳴ってから、眠くてもこれだけやってみたら、今までよりも朝すっきりと目覚めることができるかもしれませんよ。
また、眠りのリズムを理解しておくと良いかもしれません。
睡眠は、その深さによって、レム睡眠、ノンレム睡眠に分けることができます。
レム睡眠・・・身体は休息状態で、脳は覚醒に近い状態。浅い眠り。夢を見るときはこの状態。
ノンレム睡眠・・・比較的深い眠りの状態。成長ホルモンが多く分泌されている。
眠りに入ると、まずはレム睡眠となり、しばらくするとノンレム睡眠に入ります。この2つは約90分サイクルで繰り返しています。そのため、90分で割れる睡眠時間で起きると比較的すっきりと目覚めることが出来ます。
3時間・4.5時間・6時間・7.5時間・・・皆さんの睡眠時間はどの位ですか?
起床時間から逆算して、就寝時間・食事時間を決めていくと、時間の調整がスムーズに行くかもしれません。
2.夜眠れないにどう対処する?
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布団に入ってから、すぐに眠れる時とそうでない時があるでしょう。
これはアスリートであろうとなかろうと、よくあることです。
そこで見直したいのは、寝るときの環境です。
・ 部屋の電気は真っ暗になっていますか?
・ 外からの光が入ってこないように、カーテンがしっかりしまっていますか?
・ テレビやゲームなど、目に光が入っている環境ではないですか?
朝と同様に、夜のキーワードも光ということです。
睡眠を誘発させる脳内ホルモンとして有名なのは、メラトニンです。
心拍数・体温・血圧を低下させ、眠りを誘う効果があるとされています。
光と関連があり、目に入る光の量が少なくなると分泌されるようになるため、寝室を暗くすると眠りに入りやすくなります。これは、メラトニンの働きをうまく利用して例です。
ただトレーニングや試合が夜にある場合、寝つきが悪くてもそれほど気にしなくても良いということを知っていると良いでしょう。
運動は、交感神経(興奮の神経)が優位になり、目が覚めます。それに対して、眠くなるというのは副交感神経(リラックスの神経)が優位になっているときです。トレーニングや試合が夜にあったときというのは、一般的な睡眠時間に眠くならないというのは当然なことなのです。ですので、眠りに入りづらいのは当たり前だと思って、焦らずゆっくり構えていれば良いのです。
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外からの刺激により、積極的に副交感神経を優位させる方法もあります。
1つは温度です。
・ 夜は、ぬるめ(40℃以下)のお風呂にゆっくり入る
身体がほてって眠れない場合は、冷水のシャワーを浴びることで、皮膚温度を下げたり、冷たい飲み物を飲むことで、中から体温を下げるのも良いでしょう。
ちなみに、朝は、熱め(40℃以上)のシャワーをさっと浴びることで、交感神経を優位にさせることで、パチッと身体を目覚めさせることができます。
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その他には、以下の方法があります。
・ リラックス効果の高いアロマ(ラベンダーなど)を置く。
・ ストレッチをすることで、筋肉の緊張を和らげ、呼吸を整える。
眠れないという方は、自分にあった副交感神経の高め方を探してみませんか?
3.快眠を誘う食事
寝る前の食事がメラトニン分泌を促すような食事内容であれば、快眠の助けになるでしょう。しかしメラトニンそのものを、食事で直接とることはできません。
そこで、メラトニン分泌の助けとなるトリプトファン(必須アミノ酸の一種)・マグネシウムを摂取することが、快眠を誘う食事の1つと言えるという見方もあります。
トリプトファンを多く含む食品には、牛乳・乳製品・魚介類・肉類(特に鶏肉)・卵・大豆・大豆製品(納豆・豆腐)・バナナ・ハチミツ・玄米・ゴマなどがあります。
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トリプトファンはアミノ酸の1つなので、たんぱく質を含む食品に多く含まれると思って良いでしょう。
また、炭水化物を摂取すると、2〜4時間後にトリプトファンを誘発することが分かっているので、夕食から就寝までの時間が、この位空いていると良いでしょう。
これらを総合すると、寝る前の食事は、主食・主菜・副菜を揃えたアスリートの基本の食事を、就寝2〜4時間前に食べれば良いと言えますね。
食事全体が油っぽいものだと、消化事体に時間がかかり、寝ているときも胃が働かなくてはいけないため心身共にゆっくりと快眠をとることができないことになります。就寝時には、内臓もゆっくり休むことができるように、揚げ物たっぷりの食事や、食べすぎにも気をつけると良いでしょう。つまり、夕食が遅くなる場合は、低脂肪の料理で量を控え目になど、気を遣いたいところです。
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夕食時間が早く、寝る前にお腹がすいてしまって眠れない…という夜は、試合前の計測があるなどの特別な場合を除けば、ホットミルクやバナナを食べると良いでしょう。
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また、快眠を妨げる成分の1つにカフェインがあります。神経を興奮させ、脳内アドレナリンを分泌させることで眠気を妨げます。コーヒー・紅茶はもちろん、緑茶にも含まれているので、最近快眠でないという方は、夕方以降の飲み物をノンカフェインのドリンク・麦茶・ほうじ茶・ハーブティーなどにしてみてはいかがでしょうか。個人差が大きいのですが、一般的にカフェインの効果は3〜4時間持続します。
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さらに過剰のアルコール摂取も睡眠の質を低下させます。適度な量であれば、問題はありませんが、過剰になるとアルコールは睡眠を浅くさせてしまいます。
また、カフェインやアルコールには利尿作用もあるため、夜中にトイレに行きたくなるという心配もあります。ぐっすりと朝まで眠るためにも、これらは控えたい食品といえるでしょう。
4.寝不足は太りやすい
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睡眠中は成長ホルモンの分泌も盛んに行なわれているため、快眠をとることは成長は勿論のこと、筋肉の修復にも大切です。睡眠不足になると食欲増進のホルモンが増加し、さらに食欲を抑えるホルモンが減少するため、食欲が抑えられない状態になりやすいと言われています。
皆さんも夜更かしをした日の夜中に、お腹が空いて何かをたっぷり食べてしまったという経験をお持ちではないですか?
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また、睡眠不足や熟睡できない状態が続くと、太りやすい身体になってしまいやすいとも言われています。これは、交感神経と副交感神経の交換スイッチが鈍くなり、1日の代謝量が減るためだそうです。
食事を抑えているのに、太りやすくてなかなか痩せられない・・・という方は、睡眠不足という原因がないかどうか、改めて見直してみてはいかがでしょうか?
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ぐっすり眠れて、お腹がすいて目が覚める。そして朝食が美味しい!こんな快眠生活が送れると良いですね。
勝てるアスリートにとって、自分が安心して眠りにつける方法を見つけておくことは、国内での遠征・合宿はもちろん、時差のある海外での大会に参加する際にも、コンディションを良好に維持することに役立つのではないでしょうか?
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