アスリートの食事学 Vol.49
2009/10/07
河谷 彰子
● 集中力アップの食事
アスリートにとっても、集中力はここぞ!という時に特に必要です。
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学生方を対象にセミナーをすることが多いのですが、そのときに感じることの一つに“集中力と朝食は密接な関係がある!”ということです。
セミナー会場に入った瞬間に、学生の様子がなんとなくザワザワしている・姿勢が悪い・・・などが目に付くと、朝食を食べているか、食べていないかが分かるような気がします。
このような視覚的な情報もありますが、実際に話を聞いてみても、「集中して聞いていないな」という印象の学生は朝食を欠食しているのです。
集中力がない、集中できない状態には、様々な要素が絡んでいるのだとは思いますが、食事面から改善できるポイントもあるはずです。今回は、これを考えてみましょう。
1.朝食をしっかり食べて集中力アップ!
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集中力アップのために必要なことの1つは、脳のエネルギー源を摂ることです。そして、脳を活性化するような食事が大切になってきます。
基本的な食事は朝・昼・晩の3食ですが、中でも朝食は最も食事と食事の間隔が長くなっているため、脳のエネルギー不足を解消するために食べておきたい食事です。
脳のエネルギー源とは、主に主食に多く含まれている炭水化物や糖質です。
脳は貯蔵できるエネルギー源の量が少ない上に、炭水化物や糖質のみをエネルギー源として利用しているため、朝食を食べないと脳がしっかりと働くことができなくなってしまいます。
脳は大きさの割りに、エネルギー消費が大きい!
脳の重量 ⇒ 体重の約2%(男性平均 1.4kg・女性平均 1.2kg) 脳の消費エネルギー ⇒ 1日の消費エネルギーの約20%≒480kcal/日 |
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つまり、朝食を食べないと午前中の集中力は確実に低下してしまいます。
そして、そんな状態でトレーニングをすれば、怪我をする確立も上がってしまうでしょうし、学生の方であれば、授業に集中することができないでしょう。
一方で、朝食を食べれば集中力がアップし、午前中の練習が内容の濃いものになり、学生の方であれば、授業に集中することができて、成績が上がるかもしれません!!
朝食には主食をしっかりと食べるしかありませんね。(Vol.26参照)
2.朝食の主食には、ご飯を食べよう!
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朝食は昼食までに脳へのエネルギー源を安定して供給するために、食後に血糖値がゆっくり上昇して、ゆっくり下降するもの、つまり腹持ちの良いものが適しています。これは、シリアルよりパン・パンよりご飯が良いと言い換えることができるでしょう。
血糖値上昇のスピードは、食物繊維が含まれる量などによっても変わってくるので、精製度の低いものを選ぶという選択肢もあります。パンであれば“ふすま入り”・ご飯であれば“玄米”が混ざっているとさらに腹持ちが良いということになります。
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勿論、パンやシリアルを朝食に食べてはいけないのではありません。集中力を考えるとご飯なら more better!ということです。
朝食の“主食をしっかり食べる”とは、ご飯を2膳食べるのも良し、もしくはごはん一膳に加えて、シリアルやパンを食べると考えてみてはいかがでしょうか?
実際に横浜FCの選手は、主食・主菜・副菜をひと通り食べた後に、おかわりをする感覚でパンを食べることが多いです。
私はセミナーの中で “どんなパンをよく食べるか?”と質問することがあります。回答には、菓子パンが多く、人気がうかがえます。
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朝食をしっかり食べるということは、主食の他に主菜や副菜も食べるということ。
菓子パンよりも、シンプルなパンに主菜や副菜を合わせて食べたり、サンドイッチになったものの方が、バランスが良い食事になると容易に想像できますよね。
菓子パンは、あくまでデザートという位置づけにしておくほうが賢明です。
一方、腹持ちの悪い食品とは砂糖が多い食品です。
腹持ちの悪いものばかりを食べ過ぎて、バランスの良い食事をしていないと、血糖値が急に上がったり下がったりしてしまい、イライラしやすくなるとも言われていますので、菓子パンなどの甘いものを食べるタイミングには気をつけましょう。
しかし砂糖を多く含む食品は、すぐに脳のエネルギー源になる食品というメリットもあります。つまり集中力アップに対して、即効的な食品と言えます。試合前の食事のデザートとして取り入れるのは、良いでしょう。
その代表が和菓子に多く使われる餡子やフルーツです。
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余談ですが、目覚めの悪い子供に起きたらすぐに朝食前に甘いものを1口食べさせる、いわゆる“おめざ”は、脳が目覚めてシャキッと起きることができます。しかし、あくまで“おめざ”であって、朝食をしっかり食べることが前提となりますよ。
3.青魚を食べて、脳を活性化!
脳を活性化する栄養成分として、青背の魚に多く含まれる不飽和脂肪酸であるEPA(イコサペンタエンサン)やDHA(ドコサヘキサエンサン)が知られています。
一時期「DHAを摂ると頭が良くなる」と言われていましたが、「不足すると脳の活動が低下するが、補給をすると回復する」というのが本当のところです。
日本人の食事摂取基準(2005)によると、EPAやDHAの総称であるn-3 系脂肪酸は、成人男性で2.6g/日以上、女性で2.2g/日以上を目標量としています。アスリートの場合は、必要量が増加するのか?どのくらい摂れば良いのか?などはまだ明らかになっていないので、まずは、この値を参考にすべきかと思います。
青魚とn-3系脂肪酸量
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季節によって旬の青魚は異なりますので、煮物・焼魚・刺身・揚げ物など色々な料理で登場させてみましょう。
肉好きのアスリートも多いと思いますが、脳を活性化させて集中力アップすると思えば、魚料理も食べたくなりませんか?
4.よく噛んで食べて、集中力アップ!
脳の血流量アップできれば脳が活性化して、集中力がアップすると考えられます。それには、よく噛んで食べることがポイントとなります。
弥生時代には、1回の食事に約50分かけて、約4,000回噛んでいる。 戦前には、1回の食事に約22分かけて、約1,400回噛んでいる。 現代人は、1回の食事に約11分かけて、約600回噛んでいる。 |
という調査結果があります。
現代人は昔よりも柔らかくて食べやすい食材を多く使っていることにより、食事時間や噛む回数が少なくなっていることが容易に想像できるでしょう。
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さらに最近ではゼリー飲料や栄養ドリンクなど、噛まず食べることができる商品も多く出回っています。例えこれらの商品から必要な栄養素が摂取できたとしても、脳の血流量アップや集中力アップには十分でないと言えるのではないでしょうか?
よく噛んで食べるために、白米に玄米や雑穀を加えたり、煮物にごぼう・れんこん・きのこなどを加えるなど、食物繊維を多く含む食品を食事に入れたり、食べる人の1口サイズより大きめに切ったりするのも良いでしょう。
噛むという点では、ガムも集中力アップにつながると言えるでしょう。
そういえば、プロ野球の選手は試合中にガムを噛んでいる様子がテレビに映っていますね。
先日スポーツ心理学の専門家から、“この試合に勝つんだ、相手を抑えるんだ、と考えるのではなく「パフォーマンスをするときに、そのパフォーマンス自体をうまくすることに集中する!」そうすることで、落ち着いてプレーすることが出来るようになる”と伺いました。
例えば、試合に勝つために、
1. まずはシュートの成功率を上げよう。
2. そのために、ボールをパスされたら、すぐシュートしよう。
3. それができるように練習をしよう。
一見“試合に勝つ”と“パスされたら、すぐにシュートをする練習”ということはつながりのない行動に見えますが、順を追って何からトレーニングしようかという考え方が大切だということです。
緊張が伴う状況の中で、このように考えられるようになるためには「考え方のトレーニング」も必要だということです。
いつも「食事はトレーニングの一部」とお話していますが、食事は、身体作りや疲労回復など、身体的な部分だけでなく、集中力やメンタル面のトレーニングにも必要だということですね。
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