トップアスリートに聞く食事学 Vol.4



2010/02/23




河谷 彰子

荒木田 裕子(あらきだ ゆうこ)

1954年2月14日生
秋田県仙北市出身
角館南高校卒業後、日立製作所に入社(1972年)。1973年に全日本入りし、メキシコ世界選手権(1974年)・モントリオールオリンピック(1976年)・ワールドカップ(1977年)で優勝に貢献。
現在は、(財)日本バレーボール協会執行役員・(財)日本オリンピック委員会理事・アスリート専門委員会委員長・アジアオリンピック評議会理事・選手委員会委員長などを務める。
モントリオールオリンピック女子バレーボール金メダリスト達の能力と経験を地域スポーツに役立て、日本のスポーツ文化を考え実践する会“NPO法人 バレーボール・モントリオール会”を結成し、様々な地域貢献を実施している。

NPO法人 バレーボール・モントリオール会ホームページ: http://montreal.sports.coocan.jp/

 アスリートを取り巻く様々な環境は日々変化していますが、今も昔も基本は一緒。アスリートとしての前に人としてどうあるべきか、様々な視点からお話ししていただきました

1.3食をバランス良く食べる。怪我をする前に知って欲しい!

 シニア・ジュニア・ユース・高校の指導者が同じ指導理念の下で横断的かつ縦断的に指導をしていこうというプロジェクト“エースジャパンプロジェクト”があり、去年春にミーティングをしました。世界で太刀打ちするために、何をしたら良いのか?技術的な話・精神的な話・・・皆であれこれ話し合った結果、結論は何だったと思います?
 結局“3食しっかり食べる!”に行き着いたんですよね。

 アスリートへの食事に関わる取り組みを色々と試みていますけど、もっと食育をしなきゃいけないと感じます。
 3食バランス良くしっかり食べる。
 何を食べたら良いのかを自分で考える。
 食事も練習の一部。
 という自覚を持って欲しい。
 超一流アスリートを目指すならしっかり自己管理をしなくてはいけないですよ。

 残念な事に、食事の大切さを自覚するのは、怪我をした後が多い。
 回復が早いアスリートは、1回怪我をしたことのある選手や、ちゃんと食べている選手。
 回復が遅いアスリートは、不摂生だったり、食事時間がバラバラだったり、好きなものしか食べていない選手。
 本当は、怪我をする前に気づいて欲しいんですけどね。
 何をどのように変えたら、どう良かったなどの経験談を先輩アスリートは、後輩アスリートに伝えて欲しいと思います。

 私が選手だった1970年代は、今ほど食事のことを詳しくアドバイスされる時代ではなかったですが、きちんとチームが管理していましたよ。
 ・間食はしない。
 ・3食をしっかり食べる。

 ・ご飯は麦入り。パンなら黒パン。
 (黒パンは、監督自らが買いに行ってくれていた。)
 ・糖分摂取は、芋・トウモロコシなど。いわゆるお菓子やケーキではない。
 テレビを通じて、日常生活をよく報道をされていたおかげで、差し入れにケーキなどを持ってきてくれる方がいらっしゃらなかったんですよね。果物やパンを差し入れに頂いて・・・それはちょっと寂しかったな〜。
 ・砂糖は黒砂糖を使用。

 ・飲み物は、夏でも温めて飲む。
 牛乳などの飲み物を、夏場でも温めて飲んでいました。
 早朝6時から練習で、汗びっしょりになって帰ってくると、約1kg体重が落ちてしまいますが、ガブガブと飲み物を飲んだりしませんでした。その後の朝食が食べられなくなっちゃいますもんね。ちなみに、練習後の飲み物は麦茶を沸かして、常温にしたものでしたよ。
 ・炭酸飲料は一切飲まない。
 などがありました。

 お菓子を買い食いしている選手は一人もいなかったです。練習時間が長くて、お店が開いている時間に寮に帰れなかったということもありましたが、それより選手皆が金メダルを獲得するためにあらゆる面でできることはやるという意識と強い意志がありました

 間食はしても良いけど、身体に良いものを食べてほしい!ポテトチップスだのスナック菓子は塩分がとっても多いから止めて欲しい。
 色々なアスリートを見て思うんだけど、その辺の自覚をしっかり持って欲しい!と言いたいです。
 個人種目は割りと比較的しっかりしているように感じます。それは、競技成績が全て自分に責任が降りかかってくるからかもしれませんね。
 チーム競技は、チームメート全員が勝利に向かって同じ温度のモチベーションを持っていれば良いんだけど、そうでない場合もありますよね。その辺の意識改革が必要かな〜って、何年も思っているんですよね。

 強くなるファーストステップは、“ご飯を3食しっかり食べる!”ことですよ。
 これが指導者が集まってミーティングを重ねて出てきた結論です。とっても単純で当たり前なんですけどね。

 全日本選手のある1日の食事(2例)
 左から、それぞれ朝・昼・夕食

 全日本選手のある日の昼食(3例)
 食器にこだわって、食事を楽しむことも大切にしています。

河谷のコメント:
 スポーツの現場で栄養士がアスリートへの最初のアドバイスとして伝えること“3食バランス良く食べる”。当たり前と言えばそうなんですが、それがなかなかできないアスリートが多い…。悲しい現状です。
 “食生活が充実しているアスリートは怪我をしにくいし、怪我をしても治りが早い。”と横浜FCの選手からもよく耳にします。
 当たり前のことをせずに、サプリメントや特定の栄養・食事方法がアスリートにとって良いということはないということです。
 アスリートをサポートしている栄養士として、アスリート自身が怪我してから食生活を改善しようとするのではなく、少しでも早い年代で勝てるアスリートの食生活に転換できるように、あの手この手でアドバイスしていかないといけないと再認識しました。

2.自覚を持って、もっと食べて欲しい!


 とにかく今の若い選手は昔に比べて食べる量が少ないように感じます!
 食事は残しても、食後にコンビニでお菓子を買って食べてしまう選手がいる位。そういうアスリートは自覚が足りないのかな〜。
 ある高校では1日最低7杯のご飯がノルマだそうです。朝から2膳、どこかで3膳。その位は食べてくれると良いのに…。今の子達は私よりも食べる量が本当に少ないのよね。

 そしてビュッフェ形式での食事で、バランス良く食事を選ぶ選手がまだまだ少ないように感じます。一番先にデザートから取りに行ってしまう選手もいる位…。
 小さい頃から大家族の中で育った選手や地方出身の選手は比較的良いけど、都会育ちや核家族で育った選手は、偏食がちだったりするように感じます。大家族だと周りから“あれも食べなさい。これも食べなさい”と言われたり、会話をしながら楽しく食べているからじゃないかな。

 バランス良く食事をして欲しいと何回アドバイスしても、偏食を直せないアスリートも残念ながらいます。自分がアスリートであることを自覚して欲しいな。
 指導者である私達ができることとしては“ちゃんとバランス良く食べな。”とか“デザートから取っちゃったらダメでしょ!”などと伝えること。遠慮しないで言っていかないとね。
 同時に大切なことは、怪我を克服してスタメンで頑張っている先輩選手が後輩達に“ちゃんと食べなよ。”とか言ってくれること。これが一番後輩選手には効果的かなって思いますよね。

 さらに、朝食をしっかり食べることができない若いアスリートが最近特に多いんですよね。起きてから出かけるまでに時間の余裕がないからなのと、習慣からでしょう。食べない習慣から、元々の胃の大きさが小さくなっちゃっているんじゃないかな。食べなくても、練習でもっちゃうのかな〜?そうだとしたら、もっと練習してよ。そしてお腹を空かせていっぱい食べてよ。って思うな。
 朝食をしっかり食べられるように時間に余裕をもって起きて、軽くストレッチなど運動すれば、心地よい空腹感を味わうことができるでしょ。

河谷のコメント:
 勝つためへの熱い執念を持って、食事もトレーニングの一部だということを自覚してアスリートには食事をして欲しいですよね。
 ビュッフェでの食事のとり方次第で、勝利の明暗や選手寿命を決めると言っても過言ではないでしょう。アスリートの方々は、先輩が後輩に教えてあげるという気持ちでいるくらいが良いんじゃないでしょうか。(勝てるアスリートの食事学 Vol.20参照

3.朝食は当番制で作っていた。

 選手が当番制で朝食を作っていたんです。毎朝6時から練習だったので、当番の日は朝4:30には起きて体育館の食堂に向かいました。
 毎朝、ご飯・味噌汁・サラダ・卵料理・牛乳という感じで、30人分を頑張って作っていましたよ。たとえチームに栄養士がいたとしても、一人前の女性として食事が作れないとね
 朝大変だったけど、楽しんで色々作っていましたよ。練習がどんなに夜遅く終わっても、次の日の朝食メニューを立てるために考えていました。
 選手によって自分の十八番があるんです。
 岡山出身の選手はうどんだったり、東北出身の私は納豆汁をよく作りました。納豆を包丁で引き割りにして、味噌汁に加えるの。
 料理は人の性格が見えるのよね。サラダの野菜をザッザッザッザッと大ざっぱに切る人もいるし、大根を一寸たりとも違わずに几帳面に千本切りにしたりする人もいたりね。

 今の全日本選手は朝食作りはやっていないです。だから、今の選手に言うと“大変だったんですね。”って言われちゃいますよ。でも今思えば、あれをやっていたから、色々できるようになったと感じていますよ。

河谷のコメント:
 ハードな練習と、朝食作り!過密スケジュールですね。
 外食産業や中食産業がこれだけ普及していると料理方法を知っている必要は無いと思っているアスリートもいるのではないでしょうか?でも料理は、生きるために知っておきたい技です。外食や中食が利用できない不便な場所に行った時 “売っていなかった”“用意してもらえなかった”なんて言い訳は通用しないです。男女問わず、最低限の技は身につけて欲しいところです。
 アスリートの前に、人として生き抜く力を磨いて欲しいなと思います。

4.食事を楽しく食べて欲しい。

シニア女子が海外遠征に
出発するときの朝食風景
器やお料理がお洒落!
お赤飯も綺麗に型抜きして
美味しいそう。海外遠征頑
張って!の気持ちが伝わっ
てきますね。

 選手時代は、今よりもチームメンバーで色々話しながら賑やかに食事をしていたように感じるのよね。山田監督は意識してか、朝食時、前の晩のテレビ番組について選手と楽しく会話していましたよ。『昨日の田村正和、格好良かったよね〜』という感じで…監督はきっと、選手との会話に追いつけるように、夜遅い練習後でもテレビを見ていたんじゃないかな。

 チームで食事をするときは、スタッフ同士・選手同士がかたまって食事をするのではなくて、選手・スタッフ・監督が会話できるように、混ざって座って、一緒に食事をすることが大切なんじゃないかな。『ほら!残すな!!』なんて言いながら食事することができないのかな〜。昔は、監督の周りには必ず選手がいるという食生活だったのに、今は違うような気がするんですよね。バレーボールの場合だけかもしれませんけどね。選手がスタッフに気を遣わざるをえない状況なのかな〜って。

河谷のコメント:
 “アスリートにも、もっと食育を”とおっしゃっていましたが、家庭であろうが、チームであろうが食事を囲んでコミュニケーションをとることの重要性は変わらないと思います。
 人生の先輩もしくはアスリートとしての先輩からのアドバイスをしてもらうことや先輩がアドバイスをすることは、何気ない食卓の会話からも生まれるものでしょう。
 朝食を選手が手作りしていた当時は、きっと“どんな調味料を使ったら美味しい味が出せるのか?”“作り方は?”というような会話もあったのではないでしょうか?これは便利になりすぎてしまったからなのか、現代社会で欠けているのでは?と言われている一面なのでしょう。
 アスリートをサポートしすぎる環境は、ある意味良くない面もあるのかなと感じてしまいました。


5.やっぱりお米が好き。

 私は、サプリメントに依存してしまうのは、あまり良くないと思います。普通にちゃんと食べて、必要な栄養は噛んで飲んでが大切だと思う。チューッと飲むだけの栄養補給は、ちょっとね・・・。

 普段の食事でパンを食べたりすることはあっても、試合前の軽食は、皆やっぱりお米が食べたいって言いますよ。日本人の原点であり、力を出すならやっぱりおにぎりかなって思うんですよね。
 余裕がある時は、全日本の大会で私がおにぎり作ることもありますよ。試合前に選手に“どの位の大きさが良い?”って聞いて大きさを決めたり、何をどの位食べたらベストコンディションかなどを話し合いながら、軽食の内容や量を決めています。

河谷のコメント:
 私にとってのおにぎりは、最高の手作り料理です。
 試合前の手作りおにぎりは、“頑張ってね!”という作り手の気持ちがとっても伝わると感じます。
 食事は栄養素を摂取すること以上に、食欲を満たすことが大切です。それにはやはり噛むという行動が大切となってきます。
 さらに手作りであれば、素敵なメッセージカードのような役割もあると感じます。
 荒木田さんの愛情おにぎりを食べた選手は、とっても心強い見方をお腹に入れて試合コートに向かっているのではないかと思います。
 ジュニア期の子供達には、試合前だからと言って特別なことをするのではなく、普段の練習におにぎりを活用して欲しいところです。普段の練習であれば、自分でおにぎりを用意することも大切。“作ってくれなーい。”何て誰かのせいにしちゃだめですよ。

6.勝つために、出来ることは何でもやる!

  勝つために、出来ることは何でもしたから、現役時代の後悔は全くないです。
 山田監督にはメキシコ五輪の銀メダルの悔しさがあり、私達以上に金メダルに執着していました。私達の勝ちたい思いは監督の思いと比べたら足元にも及ばない位。だから、私達は監督に付いていけば大丈夫という気持ちがあった。だから言われた事はオリンピックでメダルをとるまでは絶対やる!!という気持ちでした。

 個性の強〜い選手の集まりで、選手同士の好き嫌いはあっても、“金をとりたい”という同じ目標があり、そういう意味では結束が強かったですよ。
 食事は勿論ですが、それ以外のことでも徹底していました。
 ある選手が、サンダル履きで試合前に階段を踏み外して捻挫しちゃったんですよね。それ以来、サンダル履き禁止、必ずソックスをはいてシューズで歩く!
 また、当時の試合会場はエアコンが効いていなかったので、日常の練習も生活もエアコン禁止でした。どうしてもエアコンが効いている部屋に入らなきゃいけないときは、絶対に肩を出さないというのがルールでした。
 そして、マネージャーがカーブを曲がり損ねてひっくり返って、しばらく歩けなかったことをきっかけに、自転車乗らないというのもルールでした。自転車は自分で転ばなくてもぶつかられることもあるじゃないですか。
 とにかく、オリンピックまでは何でもやってました。

7.練習量はとっても多かった。

 オリンピックまでの丸2年は、一日も休まず練習をしていました。しかも1日の練習時間がとっても長い。今の全日本の選手と比べたら想像できないような練習量でしたよ。

 朝5:20起床して、6時からゴルフ場で早朝トレーニングをしていました。裸足で走る・ウインドスプリント・坂道でもも上げ・木に向かってジャンプ・ハンマー投げ・やり投げなど色々なトレーニングをしました。
 午後の全体練習は19時までで、その後に居残り練習をやって帰りが24時や1時になることもありましたよ。
 オリンピックの時も朝6時から練習していましたよ。選手村の食堂にあるりんご・バナナ・ヨーグルト・パンなどをダンボールに入れて練習会場に向かいました。食事もご飯・味噌汁…等の普段の食事を助っ人で来ていただいた日立の選手に作ってもらっていました。


8.海外での食事

ドイツのトレーニングセンタ
ーでの食事風景。
真ん中のサラダボールは、
差し入れで頂いた冷麦。
麺類は、練習後でも比較的
食べやすいんですよね。

 海外に行ったら、基本的にその国の食事を食べて勝負していました。
 ただ、国によって、お腹を壊しちゃいけないからとか生ものはいけない等と気を遣います。そういう経験を積んでいくと、選手はたくましくなっていくんですよね。そういう環境だからこそ、選手は工夫しながら、食べていますよ。たとえバランスが悪くても、しっかり食べないと試合や練習で身体がもたないから。海外遠征でもは、特に食事は一番の楽しみになりますよね。
 昨年ベトナムでの話なんですが、日本食の食材を売っているスーパーがあったので、そこで、白いご飯のおかずになるものを色々買い込んで選手は色々工夫して食べていました。

 買うときは、どこの国で作っている商品か・賞味期限は切れていないかなどを十分チェックしながら、選手は買い物をしています。
 ある日、ある選手がトーストにマーガリンを塗って、その上に海苔の佃煮を塗ってチーズを乗せて食べていたんです。白いご飯しか食べることができない日には、お茶漬けの素・卵スープの素・インスタント味噌汁を入れたりと、粗食ではありましたが、選手は工夫して楽しんで食べていましたよ。あまりの粗食ぶりに、隣で見ていた敵チームである韓国の選手が“これで食べな!”って韓国海苔やキムチをくれたこともありましたよ。

 こうした経験が選手をたくましくさせるし、何とかしのげるようになるんですよね。
 ドイツやスイスだと、噛めば噛むほど味が出てくる黒パンとか美味しいパンが色々とあるんですよ。選手は喜んで食べていましたよ。ただ、試合の前はやっぱりお米が食べたいって言うんですよね。
 今は、進んだ国であれば日本食レストラン・コンビニなどがあるから、何でも調達できますが、私の選手時代はそうじゃなかった。
 肉も魚も嫌い、ご飯とお新香で生きているみたいな好き嫌いの多いチームメイトは遠征先で食事が食べられなくて困っていましたよ。その頃、ご飯の缶詰があって持って行ったんです。でも夜遅くてホテルのキッチンも閉まっているから温めることができない。どうしようかと二人で考えた末に、バスタブにお湯を入れながら温めたんですよ。“もう良いかな〜”って開けてみたけど、まだ冷たくって・・・。なんて、食べ物にまつわる思い出話や笑い話は尽きないですよ。


9.スポーツをしている子供達へ そしてサポートする方々へのメッセージ

 NPO法人モントリオール会で、各地でバレーボール教室をやっているんですけれど、そこで、小学生の親を対象に“スポーツをする子供に、どんなもの食べさて、しつけたら良いのか”をセミナーすることもあるんですよ。親は、ただやってあげれば良い、何でもやれば良いんじゃない

 子供達には保護者の方々が練習所まで送り迎えしてくれることに対して感謝する気持ちが大切だと伝えたり、チームの監督さんへも感謝しようと伝えます。「毎日毎日、お弁当を作ってもらってバレーボールをやれる皆は、ありがたいことなんだよ。今日はお家に帰って、お弁当箱は自分で洗いなさい。」とか「自分でユニフォームをきちんと洗うとか自分でできることは自分でやりなさい。今日は自分でやるって言ってごらん!」という話をするんですよ。

 私の時代の親は、子供の部活に行くまでの余裕がなかったので、ほとんど来なかった。それが80〜90年代になって、少子化になって部活の選手の親の集まりがあって、皆で応援しにいらっしゃるんですよ。そのときには、それぞれの親の分担があって誰が何を持っていくというのが決まっているんですよね。そういうのを耳にすると、何かちゃうぞ〜って思うんですよね。もっと子供達をたくましく育てていかなきゃいけないんじゃないかなって感じるんですよね。

 さらに、受身の部活動は止めさい!押し付けられてやるもんじゃない。監督に“右だよ!”と言われて、ずっと右を向いているのじゃなくて、自分で言われたことを砕いて考えることが大切なんじゃないかな。チーム競技だとついて行くのは簡単。でも自分の人生なんだから、考えながらやって欲しい。今の世の中スポーツをやっていたからと言って、就職があるわけでもないし、大学に入学できるわけでもない。そういう環境で、自分がどのように生きていき、スポーツをどう捉えるかということを考えながらやりなよって思いますよ。自分の人生の一部なんだ、そのためにどうするってことを考えて欲しいなって思います。
 監督などに言われたことが違うんじゃないかと思った場合は、どういう理由なのかを聞くということも大切なんじゃないかなと思うんです。指導者によっては、“俺の言うことが全てだ!”という押し付けるタイプもいるし、そうじゃないタイプもいる。そういう意味では、指導者も変わらなきゃいけないんじゃないでしょうか。指導者も一つのことをガン!というのではなく、最初の段階では何でこれをやらなきゃいけないのかなど、やることの意味を砕いて説明する必要もあるんじゃないかな。
 だから、頑張っているんだけど、考え方がまだまだ子供の選手に“もっと自分で考えなよ。分からなかったら、聞きなよ。”“なんでこうなるの?私はこう思うんだけど。”とか言いますよ。個人競技だとその辺は、はっきり選手も言えるんでしょうけど、チーム競技はそうじゃない傾向があるんですよね。


 食育というと、子供が対象と思われる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?でも、そうではないということがよくお分かりになったと思います。対象は、スポーツをする子どもたちからトップアスリート、そして保護者の方々やチームを支えるスタッフまで幅広いということですね。全く同感です。幅広い食育の重要さを伝えていくことに少しでも貢献できるよう私も頑張っていきたいと思いました。
 荒木田さん、貴重なお話しをたくさんしていただき、ありがとうございました。



河谷 彰子(かわたに あきこ)

株式会社レオックジャパン スポーツ事業担当 管理栄養士

〔経歴〕

1995年日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻卒業

1997年筑波大学大学院体育研究科コーチ学専攻卒業

1997〜2006年3月株式会社タラソシステムジャパン入社
(海水中・陸上での運動指導や栄養カウンセリング、食サービスの提案を実施)

2006年4月〜株式会社レオック関東入社 同年9月にレオックジャパンに転籍
横浜FC栄養アドバイザー・横浜FCユース栄養アドバイザー
その他、YMCA社会体育専門学校にてアスレチックトレーナー育成講座『スポーツ栄養学』講師・慶応大学非常勤講師・さくら整形外科クリニックにて栄養相談などを行なう。

以下のコラムを担当しております。