トップアスリートに聞く食事学 Vol.6
2010/03/23
河谷 彰子
石渡 良太(いしわた りょうた) 1976年12月8日生 ペスカドーラ町田ホームページ:http://www.pescadola-machida.com/ |
身長が大きくなるには?強くなるには?
勝ちにこだわる気持ちが、体調管理や食事の意識を高める。
色々なもので満たされている幸せ大国日本だからこそ欠けてしまったアスリート魂について熱くお話していただきました。
1.中学・高校時代は、牛乳を1日3リットル飲んでいた!
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身長は、中学校に入学した頃は157cmでした。その後に、10cmずつ伸びて高校に上がる頃には、183cmでした(現在、185cm)。
父は175cm・母は155cm・兄貴171cm・妹163cmで、そんな大きな家系じゃないんです。牛乳をたくさん飲んでいたのと、食事をいっぱい食べていたから大きくなったのか、大きくなったから、牛乳を飲みたくなったり食事をいっぱい食べたくなったのか、未だに理由はよく分かりません。
牛乳は中学高校と6年間一日3リットル飲んでいました。中毒みたいでしたよ。牛乳が好きだったということもあるんですが、牛乳が無いとダメでした。水分補給の変わりに牛乳を飲んでいた感じでした。
朝500ml・部活後、家に帰ってすぐ、氷の入ったコップと牛乳パックを持ってお風呂に入って1リットル・夕食の時に1リットル・寝る前に500ml飲んでいました。
一日3パックの牛乳がなくなるので、親が大変でしたよ。ちょっと油断するとすぐ無くなっちゃうんですよ。そうすると私はイライラするし、親は飲みすぎだ!と言うし・・・。
食事は、中学時代は買い食いすることが禁止されていたので朝食・昼食・夕食の3食にプラス夜食を食べていました。
高校時代は、朝食・昼食・部活後にコンビニで買って・家での夕食・夜食の5食を食べていました。
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部活後のコンビニでは、勿論必ず牛乳は買っていました。その他は、その当時賞味期限間近の商品が安くワゴンに置いてあったので、それを買って食べていました。だいたいおにぎり2・3個だったかな。
夜食は夕食の残りとか、冷蔵庫をあさって魚肉ソーセージとかハム食べていました。
お菓子は、中学高校時代ほとんど食べていませんでした。親の教育で幼い頃からジュースとお菓子を食べていなかったし、家にもなかったということもありますが、お腹が空いている度合いが半端じゃないので、お菓子なんかにお金をつぎ込むのではなくて、少しでもお腹にたまるものを買いたかったんじゃないかな〜。
河谷のコメント: 1日牛乳3リットルとは、驚きですね(勝てるアスリートの食事学Vol.6)。 身長が190cm近くある友人がいますが、やはり牛乳好きです。身長を止めたい!と思った友人は、牛乳を飲むのを一時期止めたという笑い話まであるほどです。 牛乳を飲んだからと言って、身長が伸びるとは限りませんが、普段の飲み物をジュースから牛乳に変えるだけで、随分と摂取する栄養素の量が変わってくるのではないでしょうか。 牛乳におにぎり…練習後の補食として、ゴールデンコンビですね。石渡選手はまさにスポーツ栄養学的に理想的な食事をしていたことになります。(勝てるアスリートの食事学Vol.8参照・勝てるアスリートの食事学Vol.18参照) ジュニア世代のお子様をお持ちの父兄の方々。“お菓子はダメよ!”と言うけど、見えるところにお菓子が置いてありませんか?お菓子は、ひとまず見えないところにしまいましょう。 |
2.食事で気をつけることは、食べる時間と食べる内容
私は太りやすいんです(現在の体重 83kg これまでの最大体重90kg)。
だから、食べる時間と食べる内容には気を付けています。体重が重いと、動きづらいのでベスト体重(83kg)を基本としています。
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シーズン中は2kg位の幅はありますが、試合日の体重に差は無いです。土または日曜の週に1度試合がありますが、試合後の食事は時間と食べるものはあまり気にせず食べるので、少し体重は増え気味になります。その後、平日に少しずつ体重を戻して、試合時の体重83kgになります。
普段食事に気を遣っている事は特に、夕食です。
・ 20時以降は、食べない。
・ 夕食の内容は、基本的にご飯・魚料理・温野菜・汁物。
・ どうしてもお腹が空いてしまった時は、寒天を食べる。
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仕事が遅くても、食事のタイミングは、あまりずらしません。仕事があっても、6〜7時に夕食を食べて仕事に戻ります。
時間を気にするようになったのは、2年前位です。夜遅くなってからの食事は太りやすいということをテレビで見たからです。
早い時間に夕食を食べているので、12時に寝るときには結構お腹が空いているんですよね。
お腹が空いてしょうがないときは、溶かした粉末寒天に牛乳と少しの黒砂糖を入れたものを食べています。大きなタッパーに作るのですが、60g位の黒砂糖を入れると甘さを感じるんですが、30gしか入れないので味のしない杏仁豆腐みたいなものです。
おかげで、朝はものすごくお腹が空いてます。空腹で朝目覚めることもある位です。
夜遅くなってから食べてしまったとか、何だか胃がスッキリしないと感じて、朝食を食べたくなくても、自分のリズムを崩したくないので食べないことは無いです。これは、24・5歳位から崩していないです。朝食を食べないと、パワー出ないですもん。そして、朝食の基本はパンじゃなくて、ご飯を食べています。ちなみに、今日の朝食は“納豆卵かけ葱味噌ご飯に具沢山味噌汁”でした。
色々試して分かったことに、食事に関して無理は良くないですね。
できるだけ、脂肪は少なくたんぱく質を多く摂るようにしていますが、鶏のささ身をポン酢で食べていたこともあったのですが、あんまり続かなかったです。鍋料理であれば、脂肪の少ない肉でもパサパサ感が気にならないし、野菜もいっぱい食べられるから、良いかな。
河谷のコメント: 徹底して夕食の食事時間を気にしているという姿勢は、多くのアスリートに見習って欲しいところです。 空腹が体内時計をリセットし、朝食をしっかり食べて栄養を補給することが筋肉や肝臓に1日がスタートしたことを知らせるという研究報告もあります。さらに脳は、光が目に入ることで1日がリセットされるそうです。 夜は暗くしてぐっすり寝て、朝は明るい部屋でしっかりご飯を基本とした朝食を食べることが大切ということですね。 朝食を食べられない理由は何でしょう? 夕食の時間が遅いから? 夕食の内容が油が多くて十分消化ができていないから? 寝る時間が遅いから?朝起きる時間が遅すぎるから? いずれにせよ、朝食をしっかり食べるために、皆さんはどのように解決しますか? 食べられない!と決めつけているアスリートはいませんか?食事は美味しく楽しく食べて欲しいので、無理は良くありませんが、朝食を食べていない方には、食べる努力をして欲しいなと思います。 ちなみに、石渡選手には“ささみもっちりあんかけ(勝てるアスリートの食事学15)”をご紹介致しました。 |
3.悔しい思いが、自分を強くする!
小学生2年生の時に、地元のグリーンキッカーズというサッカーチームに入っていました。そのクラブチーム、全然強くなかったんです。大会に出てもすぐ負けるので、父兄にデルトマケ(出ると負け)キッカーズなんて、言われていたほど。
当初同級生は約40人でしたが、その時のコーチが厳しかったせいか2年後には10人位に減っていました。
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実は、私は運動神経が良い方ではなかったんです。一応、その10人には残っていましたが、一番下手だった。弱いチームで一番下手・・・。だから、空いているポジションをコーチにやらされていました。結局、下手なまま、そのクラブチーム時代は終わりました。
中学生になると、本格的にゴールキーパーをやるようになったんです。
小学校の時は、チームも自分も弱かったから、負けてもそんなに悔しくなかったんですが、中学高校とレベルが上がるにしたがって、自分にある程度の自信がついてきたり、試合で負けたり、先輩とのポジション争いでレギュラーを奪えなかったりと悔しい思いを重ねていくにしたがって、具体的な次の目標を思い描きながら続けていました。
それでも、高校生位まではたいした経験をしていません。さらに悔しい思いをたくさんするようになったのは、社会人の時に友人に誘われてフットサルに転向してからでした。
代表でポジションを奪えなかったり、全日本の決勝で負けたり、リーグ戦で優勝できなかったり、自分のミスで負けたりと10年位繰り返していたからこそ、若手とは違う気持ちというか、違うモチベーションで練習も試合もできるし、それが安定感につながっていると思います。若い選手は、悔しい経験の数をまだ積んでいなからなのか、ただ好きでやっているというだけで、その競技に対しての意気込みが低いように感じます。
私は、まだまだスポーツの世界では2流・3流の選手と思っています。それでも2・3流の選手になるには、諦めの悪さというか、勝ちにこだわる気持ちが無いといけないと思うんです。
4.勝ちにこだわる気持ちが大切。時にはマリーシアに!
勝ちにこだわる人かそうでないかは、練習後の遊びの要素が含まれている練習でも現れます。遊びでも絶対負けないという気持ちが大切。これは、日本人には欠けているというか、持っている人が少ないように感じます。
ブラジル人と一緒にプレーして感じるのは、この勝ちにこだわる思いの強さですよね。それは、生活環境の違いなのかもしれません。
日本人はいくら貧しいと言っても、生きていく上で、ある程度満たされてるところがあるのではないでしょうか。これが戦後の日本だったら、違ったと思うんですよね。生活のベースが違うんですよね。
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そして、ブラジル人は勝ちにこだわるからこそ、いい意味でずる賢いんですよ。これを“マリーシア(ポルトガル語)”って言うんです。元々マリーシアなんじゃなくて、勝つために・生きていくための手段としてマリーシアを使う。そうしないと、勝ち残っていけない。それが生活の一部として身についているから、ブラジル人は強いんじゃないかな。そうではないヌクヌクと生きてきた国民とは差が出ますよね。
勝ちにこだわって、勝ちに行く!
ここぞ!という勝負の時は、どんな不利な状況でも勝ちにこだわることが大切です。
大切なところでミスをしてしまうという人は、勝ちに行く気持ちが低いと思います。
そこで頑張らないでどうするんだ!という場面での気持ちの強さをアスリート皆に持って欲しいです。
勝ちにこだわっている選手とそうでない選手の差は、身体のケアに対しても差が出ますよね。だって勝ちたいんだから、食べるものはものすごく気を遣うべきでしょ。
5.可能性を開花させるための体調管理。食事もその一つ!
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夢を信じる力を強く持っている幼い子供達もたくさんいます。その力を持っていれば、自ずと食に興味を持つし、気を遣い始めるんじゃないかな。自分の可能性や才能がいつ開花するか分からない。自分を信じる力をしっかり持てば可能性は開花する。いや、最低限それを持っていなければ開花しないんじゃないかな。可能性は誰もが持っている。だって、小学生の私は、一番下手だったんだから。昔の私を知っている地元の友人は、今の姿にビックリしてますよ。
悔しい思いをして、手の届きそうな実現可能な目標を作って、それに向かう気持ち!それが大切!この目標がなければ、小手先の技術の練習だけで先が見えづらいんじゃないかな。
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今の時代は、日本国内で頑張るという時代じゃない。世界と、どう戦うかが基本。その競技の世界人口がたくさんいて、その人達を相手に、どう戦うのかを考えていかないといけない。勝つために、不摂生をしている場合じゃないでしょ。自分より、もっと頑張っている人は、世界にたくさんいるってことを考えていたら、のんびり構えている場合じゃないですよね。色々な方からのアドバイスに言い訳しているうちは、強くなれないんじゃないかな。
仕事も、スポーツも一緒。計画して、実行して、その結果がどうだったかを検証して、さらに計画をする。これが大切ですよ。
河谷のコメント: 厳しいトレーニングをせっかく頑張ったのに、十分な食事を食べていなければ、強い身体づくりにつながりませんよね。 最先端のトレーニングや食事の情報を飛びつく前に、やること・やれることはないかを見直す必要はありませんか?自分に言い訳をして、自分の可能性をつぶしていませんか? 石渡選手の“今は世界と、どう戦うかだ!”というコメントに、非常に重みをと感じました。 |
6.チャンスは誰にでも、やってくる!
日本代表に4年ほど在籍していましたが、遠征先の国によっては体調管理が大変でした。食べ物等が合わない国もあるんです。
ある国で、大会前にお腹を壊してフラフラになって試合に出場したことがあります。後にも先にも、こんな思いをしたことはありません。試合直前の練習では、立っているのがやっとな位でお腹に力が入らなかったんですが、試合中は不思議としっかり守ることができたんですよね。
その大会は最強ブラジルチームとの試合でした。ブラジルには、日本は未だ勝った事が無くて、大差で負けてしまうのでは?と誰もが思っていました。チームメイトは私の体調不良のことを知っていましたが、監督は言えませんでした。なぜなら、出場のチャンスが巡って来そうだったからです。
その時の試合は、負けてしまいましたが奇跡的に2-1だったんです。チームメイトも私も必死に守りましたよ。
ブラジル人だけで1万6千人の観客が応援しにきていたんです。
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健闘した日本チームにブラジル人の観客から、石渡コールが起こったんです!このコールは、今までの選手生活の中で一番嬉しかったことです。ブラジル人は、日本人がどんなに良いプレーをしても、俺達に勝てるわけない!って思っている。チャンスがやってきたとしか思えない試合でした。
監督は病院で点滴を打っている私を見て“結果を出したから良いけど、そうでなかったら、二度と代表チームに呼ばなかったぞ”って言っていました。
チャンスって、平等とは言わないまでも、誰にでもやってくると思うんです。そのチャンスを自分が生かすか殺すかだけだと思うんです。
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選手の中には“監督が使ってくれない”“使ってくれても、2・3分だけだ”と嘆く選手もいるし、ふてくされてしまう選手もいる。監督の中では、その選手はそういう評価なんです。でも、1分でも2・3分でも、この選手は良い!もしくは使おう!!と思ってもらえたら、限られた出場時間内でベストなパフォーマンスを発揮することが大切なんじゃないかな。けが人が出たとか、監督の気が変わって、ちょっとこの選手を使おうかな…とチャンスが巡ってくる。選手自身が、将来を見て・信じて、チャンスを生かして、最高のパフォーマンスを出せるかだと思うんです。
自分はあの選手より上手いのに、どうして!などと思っている選手もいるけど、監督は選手全員の満足を得ることなんてできない。使ってもらえなくても、それはそれで、やるべきことをベストなパフォーマンスで頑張ることが大切。そう思っていないと、代表なんてやっていられないし、気持ちが持たないですよ。
アジア選手権では、1ヶ月位代表選手だけで練習をしているんです。そこで気持ちが腐ってしまうと、2番手だった人は3番点に、3番手は4番手になってしまう。チームのために頑張る!と割り切って頑張ることと、声がかかったらいつでも出場できるようにコンディションを整えておくことが大切。
チームは2番手・3番手・4番もいないと成り立たないんですよね。
よく監督が“本当に重要な選手は、今試合に出ていない選手だ!今出れていない選手次第で試合に出れている選手のパフォーマンスが変わってくる。そして、チームとしての選手層も変わってくる”って言うんです。
結局、試合に出ている選手も、そうでない選手も高いパフォーマンスが発揮できるチームは、優勝するんですよね。(今年度、ペスカドーレ町田はF.LEAGUE2位。)
石渡選手はホット抹茶ミルクを美味しそうに飲みながら、色々なお話しをしていただきました。
より上を目指す選手とは、どうあるべきなのか?それは、年代を問わずに出来ることや目指すことを明確に持ち、進むことではないかと思いました。具体的な小さな目標の積み重ねが、大きな目標の達成につながるんですよね。
石渡選手をご紹介してくださった、中川選手(トップアスリートに聞く食事学Vol.2)、ありがとうございました。
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