第8回 バスケットボールリーグの運営


【ドイツのスポーツ組織】
 
大まかに3段階の構成となっている。一番上にドイツオリンピック連盟があり、その下に五輪種目である34の種目別スポーツ連盟・五輪以外の27の種目別スポーツ連盟・16州のスポーツ連盟・20の特別な任務を持つスポーツ連盟・機関がある。一番底辺には、およそ9,100のスポーツクラブがあり、2750万人が会員となっている。まさにクラブの国といえる。


 ドイツバスケット連盟(以下国家連盟と称す)は34の五輪種目スポーツ連盟のひとつ。2部リーグ以下は州連盟等が行っている。ナショナルチームは国家連盟が、第1部のプロリーグはバスケットボールブンデスリーガオフィス(以下リーグ連盟)がそれぞれ統括している。
 

リーグ連盟は会社組織であり、国家連盟から独立した組織で、リーグ運営は国家連盟との契約によって行われ、多額なお金が動く。また、国家連盟と別組織にしているのは、重要な決断を迅速に行っていかねばならないからである。法的にも大きなリスクを背負わなければならず、リスクを背負う組織がお金も出し、決断もするのは常識である。しかしながら、選手育成及びレフェリーの育成は、国家連盟とリーグ連盟が共同で行っている。

【BEKOバスケットボールブンデスリーガ】
 キャッチフレーズは、バスケットボールの技術であるドリブルと言う意味と興奮するという意味のドリブルをかけあわせて、「ドリブリンしているか?」
 

所属チームは全部で18チーム。ドイツ全体にチームが分散しており、大きな都市も小さな町にもある。ベルリンのように、マスコミに取り上げられやすく、人口の多いところにあることも重要であるが、人口は少ないが伝統的にバスケットが盛んである小さな町にあることも同様に重要であると考えられている。ベルリン東部にチームがないのは、東ドイツ当時にバスケットボールが行われていなかったことが原因である。


 具体的な内容については次の通りである。
 まず、リーグ運営には「戦略」が必要。ライセンスの発行においては、競技力の問題だけでなく、経済的な活動も審査の重要な項目になる。リーグ連盟では、クラブのバランスシートや予算立て、選手契約や資金管理を月に1回程度チェックし、参加の可能性を審査する。クラブにとって審査されることは気持ちがいいこととは言えないが、いずれかひとつのチームでも、よくない経営が行われていると、リーグ全体のイメージダウンとなってしまうリスクがあるため、必要なことであると認知されている。また、大会会場へ人を派遣し、広告板などの設置が指示通りかもチェックしている。
 リーグ連盟での、レフェリー育成は連盟が各レフェリーの指導を行い、試合中にその内容をチェックし、試合後にフィードバックを行うシステム。レフェリーは一般社会人でいろいろな職業の方もいるが、それはあまり関係なくブンデスリーガのレフェリーとして適しているかどうか、その質をチェックしている。プロリーグの運営を考えた場合、レフェリーの質は非常に重要な問題であるが、必要なことであるため、リーグ連盟としても重く捉えている。
 
リーグ連盟が主催するイベントは三つ。カップ戦・オールスター(ファンフェスタ含む)・トップフォーの三つである。
 
コミュニケーションとしてのメディア対応は、スポークスマンの育成も重要であり、力を入れている。また、サッカーやハンドボール、アイスホッケーのリーグ連盟と提携し、行政への働きかけなどを共同で行っている。ひとつの団体で動くよりも、より効果的である。

【国家連盟とリーグ連盟の関係】
 
国家連盟とリーグ連盟は良好な関係で、国家連盟は、投資者としてリーグ連盟の1部である。両方の連盟に関わる問題については、委員会が設置されて、ナショナルチームの選手に対する保険についてなどが協議される。広報活動・宣伝活動も連携しており、2015欧州選手権を招致に全面協力し、必要であれば資金も提供も行う。

【ドイツにおける、バスケットボールのイメージ】
 
ドイツでバスケットボールに関心を持っているのは、若者、高学歴の人、収入の多い人である。また、観客の30%が女性であり、他のスポーツと比較して多いことが特徴である。インターネットや新しいメディアへの興味が強いことから、インターネットやスマートフォンを通じて、お金をかけずにたくさんの人にバスケットボールを見てもらえるようにしている。

【チームの組織】
 
クラブは有限会社又は株式会社であり、それは経済活動ができる体制にするためである。年間予算はおよそ300百万ユーロで、それぞれ8人ほどの職員を置いている。使用する体育館はフランクフルトで見たものが平均的である。


フランクフルトのボール競技体育館

 スポンサーはその地域の企業であることが多い。世界的に有名なドイツテレコムやドイツバンクなどもある。チーム運営経費は経済界のほうから出していただいている認識である。
 
選手は、もちろんドイツの選手が多いが、アメリカの選手もいる。それ以外の国からも来ているが、代表チームの育成の為リーグとしてはチームの40%はドイツ人というルールがある。行政からの支援として、行政の持ち物である体育館を無償又は安価で提供してもらっている。市の支援には二つのケースがある。まず、ゲッチンゲンのバスケットは町の看板になっていて、市からクラブへ資金の提供を受ける直接的なケースがひとつ。もう一つは、エネルギー会社や保険会社など、行政に深く関係のある会社に対するスポンサーの斡旋活動に協力してもらっているケース。
 
BEKO BBL では、ここ数年入場料収入が増加しており、2009/2010シーズンでは、130万人以上(1試合約4,000人)の観客動員数だった。2009-2012まで、毎シーズン最低50試合を土曜日の夜、地上波生放送するなど、公共、民間放送局とは、密接な協力関係にある。2009/2010シーズンにおいて、12億の広告問い合わせがあり、12億の人たちとコンタクトできた(前年比68%の増加)。また、バスケットボールに興味のある人の約90%がインターネットを情報源に利用しており、毎月約110万アクセス記録している。

【リーグの今後】
 
メインスポンサーかつ、タイトルスポンサーのBEKO社(シロモノ家電メーカー)とは5年の長期契約をしている。サッカーで有名なバイエルンミュンヘンが来年トップリーグに昇格する。強いブランド力を持ったバイエルンミュンヘンの加入はリーグにとっては非常に重要なことであり、チームの実力もユーロカップでは準優勝、チャンピオンシップでもいい成績を残している。
 
バスケットボールは何か特別なものというイメージをより強くさせたい。「あなたの心臓は、ドリブリングしている?」というキャッチフレーズで進める。
 
今後は、バスケットボールがアトラクティブで魅力のあるものというイメージにしたい。ファンにとっては、選手のパフォーマンスや、イベント・サービスだけでなく、経済的にしっかりしていることも重要であるので、経済的には、更に利益を出す為より質の高い物を提供する必要がある事を理解し、今後も堅実な経済活動を継続する。
また、バスケットボールに関心のない方と関心のある方の間を狭めるためにも、国家連盟と協力してユーロ選手権招致を成功させたいと考えている。そして、自分達に必要なものを獲得するためにロビー活動を強化する。


梅北団長とヤン・ボマー氏

資料編

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