もっと国際競争力を
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凄かった。百聞は一見に如かずとは、まさにこのことだと強く感じた。
9月1日から6日まで豊田市で行われたハンドボールの北京五輪男子アジア予選大会のことだ。開幕戦の韓国-クウェートで、韓国選手が相手の体に軽く触れただけで国際審判員の資格がないヨルダン人審判はファウルを連発。クウェート選手は何をしてもお咎めなしだった。
日本-クウェートでも、イラン人審判が試合の流れを止め日本の反撃機を奪う場面が何度もあった。ハンドボール界でよく聞く「中東の笛」が、これほどまでにひどいものだとは思わなかった。
問題は、こういうことが何年間も野放しにされていることだ。日本ハンドボール協会(JHA)によると、「中東の笛」が目立つようになったのは15年ほど前からだという。その間、様々な形で国際ハンドボール連盟(IHF)などに訴え続けてきたが、事態は悪化するばかりだった。
アジアハンドボール連盟(AHF)の主催で行われた今大会も、本来ならば中立、公正に行われるべき運営が、全く為されていなかった。
大会を運営する技術委員の構成を見ればAHFの意図が明確に分かる。イラン人の議長をはじめ、9人の委員のうち6人が中東勢。クウェートが2人もいながら韓国や中国は1人も入っていない。日本人は、アンチドーピングが専門の医学関係者が1人いただけだ。
この技術委員が審判員の構成や配置を決めるのだから、その気になれば中東勢に有利なように事を運ぶのも難しくはない。「韓国の実力を10とすれば日本は8・5から9の間で、クウェートは6か7でしかない」というJHAの市原則之副会長の評価からすれば、クウェートが文句なしで1位通過することなどありえないはずだ。それでも、日本は文句ひとつつけることができなかった。
近年、スポーツ界における日本の発言力低下が顕著だ。柔道では山下泰裕氏が国際柔道連盟の理事選挙に大敗。ランキング制導入に付随するツアー大会の創設やルールの変更など日本に不利な動きが出てくることが予想されている。
かつて、スキーのノルディック複合や水泳などでは、日本が強ければ欧州勢が中心となってルールを変えたり用具に規制を加えたりする動きがあった。昨年のワールドベースボールクラシック(WBC)では米国に有利な運営方法が物議を醸した。
国際舞台での発言力低下で貧乏くじを引かされるのは選手だ。北京五輪出場を逃したハンドボール男子日本代表のひとりは「4年間、必死に頑張ってきたことが、あの審判の(判定の)ために無意味になった気がする。おおもとの部分が変わらなければ全ての選手の努力が無意味になる」と寂しそうに話していた。
ただでさえ、日本の球技が五輪に出場することが難しくなってる。このまま日本が国際舞台での脇役に甘んじれば、球技をやろうという子供達がどんどん減ってしまうかもしれない。
幸い、最近は元日本代表クラスの選手が現役引退から間を置かずに各競技団体の要職に就くことが多くなってきた。JHAでは40歳の田中茂氏が常務理事待遇の理事となり、日本バレーボール協会では38歳の元米国代表、ヨーコ・ゼッターランド氏が理事になった。日本サッカー協会でも36歳の手塚貴子氏が3年前から特任理事に就いている。
国際舞台で発言できる人材を育成することの重要さに各競技団体が気付き始めたとするならば、日本の球技にとって明るい兆しなのかもしれない。
プロ野球やJリーグを例に出すまでもなく、日本人は団体球技が大好きな民族だ。社会全体の閉塞感を一掃する活躍を期待するためにも、国際的な視野を持つ人材の育成は欠かせない。