広島の異競技連携「トップス広島」

下手 義樹
しもて よしき
1967年広島市生まれ。93年に中国新聞社(本社・広島市)入社。運動部―柳井支局(山口県)―運動部を経て、2006年から東京支社編集部に赴任し、スポーツ全般を担当。運動部記者としてはJリーグ(サンフレッチェ広島)、プロ野球(広島東洋カープ)、陸上などを担当。2004年アテネ五輪、2003年パリ世界陸上、94年(広島)と98年(バンコク)にアジア大会を取材。



 出身者の私が言うのもおこがましいが、地方都市の広島は「スポーツ王国」と言っても過言ではない。

 かつては「標準語が広島弁だった」と言われたほど広島の選手が多く入ったメキシコ五輪銅メダルのサッカー日本代表、広島商高や広陵高などの高校野球、五輪メダリストも多く輩出した。現在でもプロ野球の広島東洋カープに、Jリーグのサンフレッチェ広島がある。陸上の中国電力やバレーボールのJTサンダーズ、男女のハンドボールなど、トップレベルのチームが多く存在する。広島では毎週さまざまなトップチームの試合を観戦することができる。スポーツファンにとってはこの上なく恵まれた地域である。

 日本トップリーグ連携機構が発足する前、広島では全国に先駆けて異競技交流が始まった。2000年、サンフレッチェ広島など、広島に拠点を置く4競技5チームが連携し、地域貢献に取り組む特定非営利活動法人(NPO法人)「トップス広島」(広島トップスポーツネットワーク)が発足した。「すべての広島の人々が、すべての広島のスポーツを応援する」(オール広島 オールスポーツ)とのスローガンを掲げ、各種イベントへの参加やスポーツ教室開催などを通して地道な活動を続けている。現在7競技8チームと加盟クラブも広がりを見せている。

 発足から7年。間近でトップアスリートの技に接することができ、直接指導を受けられる機会が増えた。地域密着の観点で見れば、貢献度は大だ。ただ、活動はスポーツ教室などが限界で、個々の運営だけで手一杯な感は否めない。日程など、各チームの現状を考えるといたしかたないかもしれないが、地方に芽生えた有意義な取り組み。さらの密度の濃いものにしないと、もったいない気がする。

 次なる段階は内側の充実か。例えば、選手、GM、審判などの合同研修会を実施してもいいだろう。競技の枠を越えた選手の合同自主トレなどの機会を設けてもいい。スケジュール的に厳しいことは承知の上だが、よりファンを引きつける魅力あるチームづくりを目指し、これまで以上に各チームが「ともに成長していこう」と意思統一していくべきではないか。今後は全体を見渡すことができ、日本トップリーグ連携機構など中央とのパイプ役にもなれる、リーダー的存在も必要となってくるだろうが、ぜひとも「オール広島」として一段階上を目指していってほしい。

 中央では味わえない魅力が地方にはある。「わしらのチーム」と位置づけ、地元在住の人だけでなく、古里を離れた人も試合結果や近況をチェックする。豊富な戦力や資金、人気も兼ね備えた強豪を地方のチームがなぎ倒していく。そんなシーンを楽しみにしている。地方チームの活性化は、日本全体の競技力アップにも直結するものではなかろうか。

 地方にまかれた種は、着実に芽を出している。サッカーのサポーターがバレーボールやハンドボールの試合でも旗を振り、大声援を送る。選手もファンも「オール広島」として一体となる。そんなシーンが現実になってもらいたいものだ。今後のトップス広島の取り組みに、注目していきたい。

【トップス広島加盟チーム(2007年10月現在)】

サンフレッチェ広島(サッカー)

JTサンダーズ(バレーボール)

湧永製薬レオリック(ハンドボール)

広島メイプルレッズ(ハンドボール)

中国電力(陸上)

広島ガス(バドミントン)

NTT西日本広島(ソフトテニス)

コカ・コーラウエストレッドスパークス(ホッケー)