GM対談 in OKAYAMA <第1回>
日本トップリーグ連携機構に加盟している国内のボール競技12リーグの中には、企業チームから高校・大学のチームまで225のチームがあります。その中でも、自ら資金を集めて運営しているクラブチームには今後への期待が集まっているものの、収益構造の維持や人材の確保に苦労しているチームも少なくありません。そこで、岡山の地で着実に前進している2つのチーム、岡山湯郷Belleと岡山シーガルズの両GM、黒田和則GM、岡野實GMにチーム運営の現状、岡山のいま、夢や理想などを自由に語り合って頂きました。進行はびわこ成蹊スポーツ大学の吉倉秀和助教です。ぜひ、チーム運営の参考にしていただければ幸いです。
なお、連日の猛暑の中、ご多忙にも関わらずご承諾下さった両GMには心よりお礼申し上げます。(全3回)
<第1回>
左より、岡山湯郷Bell GM 黒田和則氏、岡山シーガルズ GM 岡野實氏、びわこ成蹊スポーツ大学助教 吉倉秀和氏 |
サッカーとバレー 運営方法の違い
吉倉 なでしこリーグは8月の間はカップ戦ですね。
黒田 そうですね。最終戦がINAC神戸戦。
岡野 こないだ(7月6日)のINAC神戸との試合、すばらしい試合だったようですね。
黒田 点は入るし接戦だし。8000人入っていましたけど、接戦だったからお客さん、帰らないんだよ(笑)いつもは応援しているチームが負けそうになるとぼろぼろ帰るんだけど。
岡野 もうkankoスタジアムでの試合は開催されないんですね。
黒田 今季はないですね。9月のホームは美作じゃなくて津山なんですよ。鳥取もあるし。
岡野 そういう場合もホームになるんですか?
黒田 県外でもホームになりますよ。10月の鳥取(とりぎんバードスタジアム)は譲渡試合という形です。興行権を鳥取のサッカー協会に売るんですよ。譲渡金はチームに入ります。リーグ戦は年間通して18から21試合ぐらいあるんですが、半分がホームゲームで、運営はすべてチームがやります。リーグが受け持つのは会場使用料と看板、MC、審判員の費用ぐらい。だからいかに安く上げるかですね。ボールパーソンとか担架要員とかは環太平洋大学の学生を頼みました。150人。スタッフ以外の学生は応援です。
岡野 岡山県のサッカー協会は関わらないんですか?
黒田 協力はあるけど、運営に直接関わることはないですね。
岡野 バレーの場合はまったく違いますね。バレーは都道府県協会が運営に協力することになっているんです。ホームと言っても1試合目は一般開催、2試合目はホームゲームで、リーグが県協会に譲渡する形です。ですから赤字も黒字も両者の折半です。
湯郷Belleには80代のボランティアさんも!
岡山湯郷Bell GM 黒田和則氏 |
岡野 試合の運営に関わる人を集めるのは大変ですよね。
黒田 うちは3月の開催に合わせてボランティアを公募しています。年間登録してもらうんですが60人ぐらいかな。そのうちの30人ぐらいしか出てきませんけど、中学生からおばあちゃんまでいますよ。(報酬は)弁当代だけで日当はありません。
岡野 バレーは日当払いますよ。学生でも一日1000円です。
吉倉 ボランティアスタッフはどのように集めていますか?
黒田 ホームページやメディア、山陽新聞で。2月頃に募集して毎シーズン更新していきます。チームができてからずっとやって頂いている80歳過ぎの人もいるんですよ。
吉倉 その方はどのようなことをなさっているんですか?
黒田 座ってできるファンクラブ会員の受け付けとかね。その方が体育協会の会長をしていた時にうちのチームが立ち上がった。その時に福元(美穂選手)が来て、こちらに住むに当たって保証人になってくれたらしいんです。それからずっとですよ。ファジアーノ岡山と両方掛け持ちしている人もいますよ。夜はファジアーノ、昼はうち。それから、行政がからんでいるので、INAC神戸戦などは市の職員が動員されます。そういう心配はないでしょう、シーガルズは。
スター誕生で嬉しい悲鳴?
岡山シーガルズ GM 岡野實氏 |
岡野 うちは試合の時、駐車場はプロの警備会社を頼んでいるんですよ。桃太郎アリーナの時は警備計画書を警察署に出さなければならないんです。去年8月15日に、山口舞(選手)がロンドンでメダルを取って帰って来た時、うちはリリースしていないのに、(岡山駅)改札にテレビが8台、エスカレーターを降りたところに1000人位が集まったんですよ。うれしい悲鳴だったんですが、市民から警察にクレームが入ってしまった。交通整理を誰もしていなかったんですよ。それから必ずイベントの時には届けが必要になってしまったんです。
黒田 うちの場合は美作警察署の地域課から制服と私服の両方が出てくれていますよ。公共交通機関がないんで、信号の間隔を変えてもらったりもしています。かつてあるチームの追っかけがトラブルを起こしたことがあって、それからずっと入ってくれています。選手に何かあってからでは遅いですしね。
岡野 そうですか。うちは自分たちを守るためにやっているわけで、黒田さんとことは違うなあ(笑)計画書は結構細かいんですよ。お客さんの動線とか、地震があったらどうするとか、(過去に)明石の花火大会の事故があってから厳しくなったんですね。管理者がどれだけ危険予知をするかが重要になりました。でもそれ以来、警察の方がよくファン感謝祭とかのチェックをしているんですよ。「今度ありますね」と電話が来る。なので案内状を出して楽しんで帰ってもらっています。
黒田 岡山市は70万人だけど、美作は3万人。だいぶ違いますね。でも人口の一割をスタジアムに集めるわけだから大変ですよ。
岡野 それは大変な努力だと思いますよ。
黒田 でも去年はオリンピックで観客が増えたけど、今は減っています。ホームで3000〜4000人は行っているけど、(7月15日の)ベガルタ仙台戦なんか1500人ですから。雷雨がひどくて、30分前に止んだけどよく来てくれたな、と思いますよ。
岡野 コアなファンがいるんですね。
黒田 完全有料でしょ。去年の倍だし。だからいい選手をひっぱって来いとサポーターは言うけれど、そうはいかないです。そう思うなら(支援)自販機を置いてよ、と(笑)。みんな笑うけど、それがほんとでしょ。
支援自販機 着々と増設中
びわこ成蹊スポーツ大学助教 吉倉秀和氏 |
吉倉 岡山湯郷Belleの支援自販機は岡山以外に香川にも設置されてますよね。
黒田 そうですね。いま120台かな。そういえば、地元の体育館でシーガルズが練習しているので協力したい、自販機のことを教えてほしいという電話が赤磐市から来ましたよ。
岡野 あそこの関係施設に置くことになっているんですが、体育館は駐車場だけで、中にはまだ置けないでいるんですよ。
黒田 美作ラグビー・サッカー場には6台あるかな。
岡野 うちは駐車場、消防署、給食センター、図書館など全部で5台になりましたね。
黒田 自販機の掃除もうちがやるんですよ。
岡野 偉いですねえ。
黒田 一年に一回ぐらいですけどね。地域貢献型の自販機という位置付けですから(笑)この間、四国の自販機の掃除に行く時、「丸亀にうどん食べに行こう」と福元と宮間(あや選手)と松岡(実希選手)を連れ出したんですよ。オリンピックとワールドカップのメダルも持って行ってたんで、先方は「ほんまに連れて来たんか」と大喜び。女性社員は全員出て来たんじゃないかな。
吉倉 準備万端じゃないですか!
黒田 その会社は、ベガルタ仙台戦に四国からバスをチャーターして応援に来てくれた。ありがたいです。飲みニケーションのおかげもありますかね。だから岡野さんも栗原(恵選手)がもしあんころ餅食べたければ連れて行ってあげる、ということですよ。
岡野 その話、帰って伝えよう(笑)。
黒田 自販機が馬鹿にならないのは、年間1000万円(チームの収入として)売り上げてくれますからね。
吉倉 シーガルズさんは他県には設置されていますか?
岡野 大阪に2台、今度3台になります。全部で75台ぐらいです。
黒田 赤磐市であと20台はすぐ行きますよ。
岡野 今年ずいぶん増えたんですよ。担当の方のご尽力で。
黒田 今、シーガルズを使わない手はないですよね。
岡野 いま来年からの指定管理者が市に提案をする時期なんですが、市が地域との連携という形でシーガルズをどう使うか提案しなさい、と指示しているそうです。
<第2回につづく>
黒田和則氏 プロフィール
昭和20(1945)年12月6日生まれ。美作町助役を経て、平成13(2001)年5月岡山湯郷Belle 部長、12月G Mで現在に至る。平成13(2001)年 5月より日本女子サッカーリーグ評議員代理、平成23(2011)年4月から一般社団法人日本女子サッカーリーグ理事(現職)。
岡野實氏 プロフィール
昭和23(1948)年石川県加賀市生まれ。NECフィールディング関西第二支社長を退任後、平成18(2006)年4月岡山シーガルズ企画部長就任。平成21(2009)年6月岡山シーガルズの運営会社、株式会社ウォーク取締役。平成24(2012)年7月〜GM(ゼネラルマネージャー)に就任。一般社団法人日本バレーボールリーグ機構理事。
吉倉秀和氏 プロフィール
1983年大阪府出身、びわこ成蹊スポーツ大学助教。平成21(2009)年早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修了。平成19(2007)年より日本トップリーグ連携機構サポートスタッフとして従事。スポーツマネジメントを専門とし、現在は、当機構トップレベルスポーツクラブマネジメント強化プロジェクトプロジェクトメンバーも務める。