福島の子供を日本一元気にする! (前編)
日本トップリーグ連携機構が各地の「ボールゲームフェスタ」で行っている子供のための運動能力向上プログラム「ボールであそぼう!」を、当機構とともに開発したのが山梨大学大学院教育学研究科の中村和彦教授です。
中村教授は東日本大震災直後の2011年夏から福島県郡山市で子どもたちの心と身体をケアするプロジェクトに携わっていらっしゃいます。3月に行われた「郡山市震災後子どものケアプロジェクト」主催の「大うんどうかい」をお訪ねし、中村教授にお話を伺いました。
Q : どんなきっかけで福島で活動を始められたのですか?
「 一緒に活動している菊池信太郎先生(郡山市の医療法人菊池病院 副院長)から大地震が起きた2011年6月の中旬に突然メールをもらったんです。全く知らない方から「初対面で失礼致します」というメールで、中身は「福島の子供たちはこのままではとんでもないことになってしまう」という危機感を伝えるものでした。菊池病院は信太郎先生のお父様・お母様も小児科医師という郡山では有名な病院です。 菊池先生は震災直後の3月の下旬にはもう動き出そうとしていたんですが、その頃郡山では浪江などの被災地周辺から避難してきた方々を受け入れたり、色々なライフラインが止まっていたりして、市はなかなか対応できなかったんです。そこでまず菊池先生は恩師である慶應義塾大学病院の小児精神医学の渡辺久子先生に声をかけて、震災後の子供の心のケアのプロジェクトを立ち上げました。一番最初に心配だったのが子供たちの心の問題、PTSDだったんです。その後4月、5月と活動していく中で菊池先生が気づいたのが、身体の問題でした。子供たちは外で遊んでいない。室内でゲームばかりやっている。これではどんどん身体能力が下がってしまう、と。そこで、たまたま僕が子供の運動発達のことをやっていてNHKの「身体であそぼう」の監修もしていることを菊池先生が知って、連絡して来られたというわけです。」
Q : 心のケアから始まったプロジェクトに身体のケアが後から加わったわけですね。
「 そうです。で、心だけではなく身体も大事ということで、心と身体という言葉をなくして2012年8月11日に「郡山市震災後子どものケアプロジェクト」を立ち上げました。
ケアプロジェクトでは子どもの育みのための5つの柱(*)を決めて、私はその中で特に「運動・発達支援」を担当しています。(*①PEP Kids Koriyama運営 ②運動・発達支援 ③地域の子育て支援 ④子どもの心のケア ⑤放射線対策)「PEP Kids Koriyama」は屋内で体を使って思い切り遊びができるように作られた施設で、2011年の12月23日にできました。郡山市に本社を持つスーパーマーケット「ヨークベニマル」の大高善興社長が私費を投じて下さいました。」
Q : 中村教授が実際に郡山でのプロジェクトに参加されたのはいつですか?
「 震災後、最初に郡山に来たのは2011年8月、郡山市「ニコニコこども館」で行われた夏のキッズフェスタです。プロジェクトが主催して、子供たちが室内でも色々な遊びができるというイベントでした。その時に、菊池先生のお父様である菊池辰夫先生や市の方たちと出会って、色々と話を聞いて感じたのは、「数回の取組では全く話にならない」ということでした。継続的にやることが必要だし、幼稚園や保育園、小学校の先生も、問題意識はあるものの何をすればいいのかわからない。身体を使っておもしろく遊ぶにはどんな遊び方があるのか、子供たちの生活にどのように根付かせていけばいいのかがわからないわけです。なのでその年の10月から、月に一回、私と眞砂野裕先生(東京都昭島市立拝島第一小学校副校長)、武田千恵子先生(足立区立足立小学校教諭)といった小学校教諭の皆さんと共に活動している「動きの研究会」の方たちと、山梨大学の院生と一緒に郡山に来る事にして、先生たちを対象に運動実技研修会や講習会を始めました。今年4月で30回目になりますが、私が菊池さんと約束しているのは、どんなに少なくても100回は来るということです。10年はこの活動を続けようと思っています。」