「あそビバ!」プログラム開発の背景
2.子どもの生活習慣病
〔生活習慣病の増加〕
生活習慣病は、肥満と合わせて問題になっています。最近では、肥満の子どもが、糖尿病や高血圧症、高脂血症、腎疾患といった生活習慣病になっているという報告があります。生活習慣病は、もともとは成人病という名前のとおり、大人がかかる病気でした。
今から17〜18年前、子どもの体力低下が始まった頃から、糖尿病や高血圧症の子どもが出てきました。実際、日本の小学校低学年の中には、糖尿病でインシュリンを打っている子どもが数百名います。子どもが成人病になってしまったので、当時の厚生省は「一時小児成人病」と名前をつけました。「子ども大人病気」とは名前はおかしな感じがします。その名前からは、病気の特徴がつかめないので、病気の原因を考えて、「生活習慣病」になりました。
日本は、他の国と比べると、子どもの頃から高血圧症、高脂血症になる人は少ないと言われています。将来的には、小学生が中学生、高校生、あるいは大人になったときに、同じような病気になる可能性があります。
〔子どもたちの体温異常〕
最近では、アレルギーや体温異常の子どもも増えています。体温異常にはいくつかの例があります。
熱中症になる子どもの中には、汗が出ない子どもがいます。汗をかくためには、一歳半から三歳半くらいまでの間に、暑い経験と寒い経験を繰り返して、汗をかく能力が身につきます。しかし、今の子どもの生活状況を見ると、暑くなるとすぐにクーラーがつきますし、寒くなると床暖房が入って、ファンヒーターが入ります。その結果、自分で体温を調節する機能が必要なくなり、もともと持っていた汗腺という機能を発揮できず、発汗がうまくできない子どもが出てきています。
低体温というものもあります。普通、人間の体温は、特に病気をしなければ、36.5度前後と言われていますが、一日の大半を36度、上がっても36.2度くらいという低体温の子どもがいます。現在、5歳児から8歳児くらいの子どもを調べてみると、5人に一人は低体温を示す結果が出ています。
もう一つは高体温です。常に37度台くらいで過ごしている子どもがいます。普通、体温は、熱っぽいと感じたときや病気をしたときとかにしか測らないのですが、朝と昼と夜に2週間あるいは1ヶ月くらい測る実験を行った結果、高体温になる子どもがいました。
変動異常の子どももいます。朝起きたとき、人間の体温は低く、顔を洗ったり、シャワーを浴びたり、歯を磨いたり、ご飯を食べたりといった、体を動かす中で、体温が上がっていきます。一日の中で一番体温が上がるのは、日中の11時から14時くらいです。そこから活動が低下するにつれて、徐々に体温も下がっていきます。この体温の変動幅は通常大人も子どもも同じで0.2度から0.4度と言われています。この幅が極端に広い場合を変動異常といいます。
変動異常の子どもは、一日のうちに1度くらいの幅をもって体温変動をしています。あるいは、0.1度未満でほとんど変動しない、全く体温が変動しない子どもがいます。
〔ウイルスに弱くなっている〕
近年、新型インフルエンザが流行りました。大学でも流行して、スポーツの大会が中止になったり、教育実習が中止になったりといった影響がありました。普通、幼少年期の子どもたちは、体が成長するにつれて免疫力は高いと考えられています。しかし、日本では、新型インフルエンザにかかる人口の6〜7割が子どもでした。他の国では、3〜4割に抑えられています。
本来ならば、ウイルスが体の中に入っても発病しないというのが子どもの特徴です。しかし、日本の子どもは、体が非常に弱くなってしまっています。国際大会に出場する選手の中でも、日本の子どもたちだけが病気にかかってしまう状況も実際にはあるようです。
子どもたちの生活の中ではケガが多かったり、病気をしていたり、いろんな防衛的な反応がすでに侵されてしまっています。体力低下を解決するためには、単に各体力テストの数値を上げることではなくて、子どもたちの生活全般から考える必要があります。