「あそビバ!」プログラム開発の背景
3.運動実施状況の二極化と二局化
〔幼少児の運動実施状況の二極化と二局化〕
1980年代半ばから日本における、6歳から19歳のすべての年齢で、子どもたちの体力や運動能力の平均値が下がりました。体力・運動能力に最も関与する要因というのは運動実施状況です。子どもたちの運動実施状況は、活動的な子どもと非活動的な子どもの二極化が進み、基本動作の習得や身体活動量の差(幅)が広がっていることが考えられます。
私たちは、他にも問題と感じていることがあります。それは、活動的で運動している子ども、スポーツをやっている子どもたちは本当に大丈夫なのか?という点です。その理由は、多くの幼稚園、保育園、小学校に通う子どもたちが、一種目のスポーツに偏っているように感じるからです。3歳、4歳の頃から、ある特定のスポーツだけしかやっていない場合、運動量は確保できますが、その特定のスポーツに含まれている動きしか身についていないことが考えられます。
いろんな遊びやスポーツを経験して、小学校高学年や中学生頃からスポーツを選択していくことが、子どもの発育発達段階には合っています。
皆さんが子どもの頃、学校から帰った後、友達と遊ぶときに、どんな遊びをしたでしょうか。年代によっても異なると思いますが、男の子だったら、三角ベースや野球、鬼ごっこ、メンコで遊んでいたと思います。女の子も、なわとびや鬼ごっこ、かくれんぼなどをして遊んでいたでしょう。子どもたちの昔の遊びの中には、遊びが変わることによって、いろんな動きが自然と身につけられるというシステムができていました。これは、誰かが考えたのではなくて、自然に子どもたちの遊んだ結果として、いろんな動きが身についていました。
そして、三角ベースといった、いわゆる子どもながらのスポーツを真似した、スポーツもどきの遊びをいっぱいやっていました。サッカーも、11人が集まって、練習やトレーニングをするのではなくて、草原で、何かをゴールに見立てて、サッカーの遊びをしていました。集まった人数や場所に合わせて、子どもたちで工夫して遊ぶことを繰り返していました。
理想論を言うと、この複数の運動遊びやスポーツをすることが、特に幼少年期の頃には大切です。実は、運動をしている子どもの中にも問題があって、運動量は確保できても、動きが身についていない、というもう一つの「二局化」についても大人は注意する必要があります。
〔運動量の減少〕
昭和40年代、50年代の小学生の歩数を調査したデータが残っています。このデータをみると、昭和40年代、50年代の小学生の一日の平均歩数は、都会も地方も同様に、20,000歩から23,000歩くらいありました。ところが、10年くらい前から、小学生の歩数の平均値を出してみると、平均10,000歩から13,000歩くらいになっています。これは、昭和40年代、50年代の子どもたちから比べると、今の子どもたちは、半分の運動量しかないことになります。
小学生が10,000歩くらい歩けば十分ではないかと思うかもしれませんが、子どもたちは大人と比べると、半分くらいの歩幅しかないので、運動量としては、大人の5,000歩程度と考えてください。昔の子どもは20,000歩ということは、大人の10,000歩に相当しますので、健康によいといわれる運動量がありました。
今の子どもたちは、非活動的な子どもが増え、歩数も減り、運動量も減って、活動量は減少し、動作も身についてこないということがわかってきました。子どもの体力低下、運動量の低下は、体力テストなどの数値だけではなくて、動き、あるいは運動量が関係しています。