スポーツの書棚~JTL Book Review

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  1. 2015-3-5

    コラム

    「野球の定石」 

     日本には「球春」という言葉がある。当たり前のように、今年も「センバツ」゜の季節が訪れる。僕は、今年も甲子園に行く。私事ながら、現場記者への思い断ちがたく、新聞社の管理職を離れた5年前から、欠かさず春、夏の甲子園に足を運んできた。「球春」には私の心を動かす何モノかが潜んでいる。  球児行脚を復活させた5年前、その甲子園で思いがけない人と再会した。フジテレビの元アナウンサー、松倉悦郎さんである。...

  2. 2015-2-5

    コラム

    「すべてのマラソンランナーに伝えたいこと」

     正月の「箱根駅伝」はダークホース的存在だった青山学院大が優勝候補に圧倒的な差をつけ、初優勝を大会新記録で飾りました。その模様はテレビ映像で全国どこでも見られたはずですが、この大会が生の映像で伝えられるようになったのはそれほど古いことではありません。NHKの著名なスポーツアナウンサーだった西田善夫さんは長年、ラジオ中継車に乗ってレース展開を伝えた人ですが、「いつかテレビで生中継できたら夢のようだな...

  3. 2015-1-5

    コラム

    「現代スポーツは嘉納治五郎から何を学ぶのか」

     幻の東京オリンピックと呼ばれた1940年の東京大会招致を成功させ、1912年のストックホルムオリンピックに日本の初参加を実現させた男。それは民間のスポーツ組織として初の統括団体である大日本体育協会(現在の日本体育協会)を発足させた嘉納治五郎その人である。当時の近代日本社会を支えようと「国民体育の振興」に尽力した嘉納の実績や成果を、徹底的に研究した内容の濃い著書である。  2020年の東京オリ...

  4. 2014-12-4

    コラム

    「桜色の魂  〜チャスラフスカはなぜ日本人を50年も愛したのか」

     ベテランのノンフィクション作家、渾身の力作である。長田渚左という人の底力を見せつけられた思いである。  1964年東京、68年メキシコ、2つのオリンピックで7個の金メダルを獲得した体操の花ベラ・チャスラフスカの波乱過ぎる人生に迫ったレポートは、体操、スポーツの域を遙かに超える「人間の存在のあり方」を語りかける。  長田さんと久しぶりに会ったのは、かすかに秋風が感じられるようになった9月1...

  5. 2014-11-6

    コラム

    「身体の近代化」  ースポーツ史からみた国家・メディア・身体ー

      著者はスポーツ史学会に所属する大学教授である。序文に「スポーツ史とは、スポーツ文化の『現在』を知ることであり、そのための重要な手がかりを提供する学問分野の一つである」とあり、この本では日本人の身体がどのようにして近代の社会システムに順応するように作り変えられてきたかをスポーツ史の視点から検討している。学術論文を書籍にしたものだけに内容は少し硬いが、興味を引きそうな部分を抜粋して紹介しよう。 ...

  6. 2014-10-6

    コラム

    「『奇跡』は準備されている~何が日本のフェンシングを変えたのか!」

     日本フェンシング界のエースにして北京、ロンドン両オリンピックで銀メダルを獲得した太田雄貴が絶賛するウクライナ人コーチの日本愛を綴った本である。  2003年秋、選手としての実績やコーチとしての経験もない名も知れぬ一人の男が来日した。オレグ・マツェイチュク。 来日当時は31歳で、現役を引退してから1年しか経っていなかった。明確なビジョン、独自のメソッドも持ち合わせていない。さらに言葉も分か...

  7. 2014-9-3

    コラム

    「国立競技場の100年:明治神宮外苑からみる日本のスポーツ」

     国立競技場のことが、いたく気になっている。慣れ親しんだ風景が一変してしまうのではないか、神宮の杜に奇抜で巨大な建造物が出現するのではないか、はたまた、悲喜こもごもをはらんだ歴史が過去へと急速に遠ざかってしまうのではないか…など、考えたらノスタルジアが頭をかすめてしまうのだ。  地方の国立大学にいたころ、当時の文部省が教員養成課程に学ぶ学生のために講習会を開き、僕はそれに参加した。実習のメーン...

  8. 2014-7-31

    コラム

    「フットボールの社会史」

     世界の人々はなぜサッカーに熱狂するのだろう。かつては、W杯大会予選の勝敗がもとで中米の隣国同士が戦火を交えたことがあったし、サポーター同士が衝突して多数の犠牲者を出す騒動はしばしば起こっている。明治初年、日本に伝わったサッカーはスポーツとして発展してきた。しかし、世界には「サッカーは民族の命だ」と言う人もいる。スポーツの熱さを超えて、民族・人種の身命を焦がすような何かがあるからW杯は熱狂するもの...

  9. 2014-7-3

    コラム

    「ゆだねて束ねる 〜 ザッケローニの仕事」

     「郷に入りては郷に従う。この素晴らしい国で私が守るべき信念は、たったそれだけだった」。この謙虚な言葉は、サッカーW杯ブラジル大会で日本代表を率いて無念の予選敗退を喫して退任したイタリア人のアルベルト・ザッケローニ前監督が吐いた本音である。彼が就任した2010年8月から4年間、ザックの人柄、哲学、考え方を徹底的に取材、その総括を初めて明かした著書である。日本をこよなく愛した男のすべてを知ることがで...